
ミルクを混ぜるだけじゃカフェオレは作れない 小話
カフェオレとして、コーヒーを一番おいしく飲めるミルクはどれだろう。最近は食の多様性が広がり、こんな狭い住宅街のイオンスーパーにも牛乳、豆乳はもちろんのこと、アーモンド、オーツ、ココナッツミルクなど、なんとまあこの高齢化が進んだ街で誰が買うんじゃいと思うくらい豊富な品ぞろえでスーパーの一角を陣取っている。私はオーツミルクを好んで買うが、ここで断言してもいい。カフェオレがカフェオレとして成り立つのは牛乳だけである。
もう一度強調する。牛の乳だけだ。
カフェでもソイラテやアーモンドラテなどなど、植物性ミルクを使用したメニューが存在するし、味も問題なく美味しい。
だが、カフェオレ、カフェラテの味かといえば、違う。ソイラテの気分だからソイラテを頼み、アーモンドの香ばしさを感じたいがための注文なのだ。
断っておくが、決して私は牛乳を毎日一リットル飲むような成長期の男子高校生ではない。しみったれたスーパーでオーツミルクを好んで買うミーハーな一人の女性である。
しかしながら、カフェオレを飲みたい時には温めた牛乳を注ぐのが一番だと思うのだ。ブラックコーヒーのはいったマグカップに紫の影を落とすくらい漂白された牛乳が注がれると、不思議なことに眩しいくらいの白はクリーム色になり、薄茶色の見慣れたあたたかい色に変わる。
一口飲めばとろける舌触りに牛乳の甘い香りが鼻に通る。一瞬にして疲れも吹き飛ぶというものだ。
植物性のミルクには、あまり当てはまらない現象だ(と思う)。
豆乳は、コーヒーとの相性は悪くない。少し黄みがかったレモン色の液体は混ぜずして放射線状に黒を茶に染め上げて、豆乳の香りを残した「カフェオレ」が完成する。ただ、仕事から帰ってきて夕食後に飲むような、安心感はない。朝に飲むほうがよろしい。
アーモンドミルクは、コーヒーと混ぜて飲むのには向かない。飲むときには舌がアーモンドミルクのみを弾き、コーヒーから分離してしまうし、ぬるくてざらざらとした感触だけが残る。分けて飲むか、炒ったナッツをつけあわせとして食べるのがよろしい。チョコレートでもいいな。
オーツはオートミールを飲んでいるようで、繊維が気になって呑みこむのが億劫になる。そのままか、ポタージュとして使うのがよろしい。この季節なら、かぼちゃのポタージュが体に染み渡る。
特にすべてのものを試したわけではないので、4種類の比較しかできないが、自分の持つこれら食材のイメージ、印象、理不尽な偏見もろもろ加味して達した結論が、牛乳が一番ということだ。カフェオレを飲むなら膝掛けをかけて暖炉の前か、こたつで暖まりながら大きなマグカップで飲むのがロマンでしょ。そこにはしぼりたての大きな瓶に入ったミルクでしょ。私が手が届くのは紙パックだけど。
それはそうとして、12月には言ったら蜂蜜入りのホットミルクでも作ろうかな。
シナモンちょっとかけるのがいいのよねえ。