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「あなたに向けて、書いたんです」鎌倉うずまき案内所 #読書感想文1

今年の目標、毎日本を読む。仕事の昼休みに読む習慣がつき、いまのところ順調に達成中。面白かった本の感想を記録していきたい、ということで今年最初のヒットは青山美智子さんの「鎌倉うずまき案内所」。

青山先生の本は「木曜日にはココアを」「お探し物は図書室まで」に次いで3冊目。「お探し物は図書室まで」がめちゃくちゃ良くて、2024年読んだ本の中で1位だったので青山先生の本を制覇したい!ということで図書館にあって借りた一冊。

余談ですが、わたしが読書を趣味と言えるようになったのはここ1年以内の話。小学生の時は結構本を読んでいたけど、大人になってからめっきり活字を読めない成人になり果てていました。そんな時友人に借りた1冊の本がきっかけで読書にハマり、今は毎日読んでいます。
ただ、夫も本を読むので家には本が軽く100冊以上溢れている。持ち運びやすい文庫が好きでブックオフで買う機会が多いのですが、小さいとはいえ増えていく一方…。ということで基本は図書館で借りて、すごく良かったら自分でも購入して手元に置いておく、というスタイルをここ2か月くらいはとっています。本当に気に入って何度も読み返したい本だけ買う。ということで、「鎌倉うずまき案内所」は図書館で借りた1冊。なんですが、とても良かったので読み終わった後早速文庫本を購入しました。

本題の内容に関して。あらすじはこちら。

古ぼけた時計屋の地下にある「鎌倉うずまき案内所」。旋階段を下りた先には、双子のおじいさんとなぜかアンモナイトが待っていて……。

「はぐれましたか」

会社を辞めたい20代男子。ユーチューバーを目指す息子を改心させたい母親。結婚に悩む女性司書。クラスで孤立したくない中学生。いつしか40歳を過ぎてしまった売れない劇団の脚本家。ひっそりと暮らす古書店の店主。平成時代を6年ごとにさかのぼりながら、6人の悩める人びとが「気づくこと」でやさしく強くなっていく――。うずまきが巻き起こす、ほんの少しの奇跡の物語。読み終えたあと、必ず最初に戻りたくなります。

Amazonより

青山先生の本はこれまで日常のおはなししか知らなかったので、唐突に始まったファンタジー世界に、一瞬ついていけるかな?と不安に。けれど、読み終わる頃にはやはり青山先生の作品にはずれなし…!となった一冊。何気ない7つの短編小説だけど、ほっこりしつつぐさぐさっと刺さるセリフも多くて、フレーズのメモが止まらない。しかも各短編がつながっていて読み終わったらまた最初から振り返りたくなる。



※以下、ネタバレを含みます。



ああこのフレーズ、忘れたくないなと思って記録したもの。

親は、子どもたちのことを何も決められないんだ。ただ見守ることしか。私が、私たちが、決めることを許されたものがあるとしたらたったひとつ、名前ぐらいだ。

ユーチューバーを目指すという息子を反対する綾子の話「つむじの巻」は、自分が親だったら同じように反対してしまうだろうなあと思いながら読み進めた。親のエゴ、子どもに苦労をかけさせまいとこう育ってほしいという想いを抱いたとき、このフレーズを心に置いておきたいと思った。

忘れないでいよう。いつかまた、真吾を理解できなくて苛立つときがきても、きっと思い出そう。私の人生に、あんな喜びの時間が確かに授けられていたことを。

この文章も・・・。泣いちゃったよ。どれだけ子育てが大変でも、苛立つことがあっても、生まれた時の喜びを思い出して乗り越えていきたい。

そうだ、私はずっとこわかった。自信がなくて、素直に受け止められなかった。朔也が私をそんなに好きなわけないって、そんなのおかしいって。私が選ばれるはずないって。
私は私に許可していなかったのだ。生涯を共にしたいと願うほど誰かに愛されることを。だけどその小説は教えてくれた。羽を誇らしげに広げて瓶から飛び出すラストシーン。
本当の幸せは、人から選ばれることじゃなく、私が私を愛することの中にあるのだと。

結婚を前にして悩んでいる梢の話「巻き寿司の巻」。この話が1番好きかな。

「あなたに向けて、書いたんです」
涙があふれた。そうだったんだ、ほんとうにそうだったんだ。肯定してもらえたことが嬉しかった。いつくしむようなまなざしを私に向け、ロイド先生が言った。
「読んでくれてありがとう。あなたに、ちゃんと届いてよかった」
私の背で、羽が大きく広がる。
ああ、私はこれからも本の仕事をしていこう。きっと一生、していこう。

このロイド先生とのシーン、なんだか無性に泣けた。自分の為に書かれたように感じる本ってあるよね。それを作者に伝えて、こんな風に返してもらえたらどれだけ嬉しいだろう。
世の中にある本の中で、読んでいて自分の為に書かれた本だって心から思える宝物に出逢った時、それはきっと本当に自分の為に書かれた本なのだろう。そう思って本を読んでいこう、と決めた。

孤立を恐れ友人とうわべだけの付き合いをするいちかの話、「ト音記号の巻」もすごく好き。学生時代って本当に狭い世界で生きていて苦しかった。そんな気持ちを思い出しつつ、乃木くんと仲良くなれてほんとうの居場所を見つけられて良かったね、と思う。

「何かを残すためじゃなくて、この一瞬一瞬を生きるために、私たちは生まれてきたんだよ。生きるために生きるんだよ」

最後の話、「ソフトクリームの巻」。なんのために生きるのかなんて必要ない。生きるために生きる。それでいいんだ。

青山先生らしい、全部の話がほっこり心温まる作品になっていて、随所に核心を突くようなフレーズが散りばめられていて、これから先の人生にずっと寄り添ってもらいたいなと思う本でした。

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