「だし」とは? ~スープの豆知識~
出汁、ブイヨン、フォン、ブロード、スープストック、清湯…これらはすべて「だし」を指す言葉です。
だしとは、簡単に言えば食材のうまみを煮出したり漬け込んだりして、水に移したもの。動物の骨や肉、魚、きのこ、野菜、どんな食材の中にもうまみは含まれています。たとえばにんじんを水で煮て、そのゆで汁を味わってみると、そこにはにんじんのうまみや風味が移っています。つまり「にんじんだし」ですね。「キャベツだし」「トマトだし」「青菜だし」…どの野菜からも、何かしらの味が出てきます。
さまざまなだしの中で、料理人たちは、よりうまみの強い、味の良いものを特別な「だし」として料理に使ってきました。料亭で使う昆布かつおだしや、レストランのフォン・ド・ボーなどはその一例です。やがて、そういうものだけが「だし」と呼ばれるようになりました。
ちなみに「コンソメ」は、牛や鶏の骨や肉や野菜でとったブイヨン(だし)を使って、塩で調味したり浮身を加えてスープに仕上げた料理名です。
私たちが普段洋風のだしとして使っている“コンソメ”キューブは、味の素の「コンソメ」という商品名からくるものです。お湯に溶かせばそのままコンソメとしても飲めて、さらに料理のブイヨン(だし)としても使えるというもの。ちなみに「マギーブイヨン」も同じような商品ですが、こちらはブイヨンと呼ぶだけあって、若干味が薄めで、だしとして使いやすく仕上げているとのことです。(メーカーに電話して聞きました)
庶民の家庭ではちゃんと昆布かつおだしなんてとっていなかったはずですが、料理学校や家庭科で料理を習うようになり、テレビや雑誌で料理の情報が増えたことで、だしを使うことが料理の基本として認識されるようになりました。ていねいにとっただしやブイヨンが崇高なものだとみんなが思うようになり、また確かにおいしさもあって、濃いだしのうまみが求められるようになりました。
ただ、レストランと同じことを家庭でやると不経済だし手間もかかる。そこで、ブイヨンやだしを疑似的に作った、顆粒だしやコンソメキューブや、だしパックができました。便利なそれらが普及し、いまや家庭で「ブイヨンン(コンソメ)」「だし」といえば、それらを思い浮かべる人の方が多くなったわけです。
コンソメキューブは強いうまみを人工的に作りだしているため、その味に馴染んでしまうと、それなしの料理にやや物足りなさを感じます。「素材の持つ本来のうまみ」のような淡いうまみは、感じにくくなってしまうのです。でも淡いうまみに慣れると、こんどは逆に、代替えの強いうまみは強すぎる、と感じるようになります。昆布や鰹節でとっただしや鶏ガラでとっただしの本当のおいしさがわかるのは、それからです。
素材を使った「だし」のおいしさは、自然で、無理がなく、やさしい。そのほんわかした幸せを、お伝えし、一緒に味わいたいと思っています。
写真は、中華のだしである、清湯(チンタン)。丸鶏と、鶏ガラと、陳皮を使って静かに煮出しました。
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