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1杯の水と学習能力の関係について

 3月31日に退職してから、日々、心穏やかにゆっくりと過ごしています。あまり体も動かさないのでカロリー消費をそんなにしないし、空腹感もあまりなかったので、食事も水分も通常の半分程度ですむから「ラッキー」と思っていました。
 しかし、あるとき、noteの原稿の下書きを作成していると、
突然「うっ!!!」と右足の甲に痛みが走りました。「何だろう?虫に刺されたのかな?まさか痛風では?」などと思いつつ、恐るおそる靴下を脱いでみると足の甲がパンパンにむくれていました。骨も腱も見えない、血管もういていない状態、しかも両足が…。今まで経験したことのない状況にパニックを起こし、ウロウロしたあげく、水道の蛇口に口をもっていき、なぜか水をがぶ飲みしてしまいました(振り返って考えても、なぜそんな行動に出たのかさっぱりわかりません)。しばらくすると、痛みは治まったのでほっとしたのですが、足の甲はむくんだままでした。

 その後いろいろ調べてみると、原因は運動不足水分不足ということがわかり、適度な運動と水分補給を心がけると足の甲のむくみが改善してきたので安心しているところです。本当に当たり前のことを書きます。

「水分補給って大切ですね!」

水分の損失と学習能力について

 私のくだらない体験談はさておき、ここからが本題です。体における水分は健康だけでなく、学習能力にも影響することがわかっています。

コネティカット大学のアームストロング博士らが発表した論文によれば、水分の損失が、たとえ体重の1%以下であっても、記憶力の低下認知エラーが起こるといいます。

池谷裕二,2017,『パテカトルの万脳薬 できない脳ほど自信過剰』,朝日新聞出版,91

このエビデンスを知ったとき、授業において学習の補助になるのではと考えました。当時、私は小規模の中学校に務めており、水に害はないから安全面は大丈夫、生徒数が少ないので準備も簡単だと「思い立ったが吉日」の勢いで早速、試してみました。

授業前に水分補給したら(小規模校での実践2018年)

 毎朝、職員の打ち合わせが終わった後、

  1. コップ一杯の飲料水を準備する。

  2. 玄関で生徒の登校を待ち、水分補給させる。※早く登校している生徒へは教室で水分補給しています。

  3. 水分補給した状態で1時間目の授業に臨む。

といういう流れで実践してみました。もちろん、生徒たちには水分補給の効果は説明しています。
※お茶など利尿作用あるものは逆に体の水分を失わせてしまうので、単なる水を準備しました。

 結果、私自身の感覚なのですが、1時間目に授業をしたとき、私の説明に対する理解力、学習した知識の活用のスムーズさ、既習内容を想起できる割合など、水分補給をしていない状態にくらべて本当に若干ですが、良好だったように思います。2時間目以降の授業は私から水分補給を指示していなかったので、あまり効果は感じませんでした。もちろん、あくまで私の主観であり、バイアスがかかっている可能性もあるので確証があるとはいえません。しかし、論文発表されているエビデンスを信じるのならば、1時間目の授業には効果があったのでしょう。

 ただし、この水分補給の効果は記憶力の低下や認知エラーを防ぐためのものであって、記憶力や認知機能を向上させるものではありません。私は時折、このことを忘れてしまって生徒の学習能力が向上しているはずだと勘違いし、難易度の高すぎる問題を出して失敗したことがありました。
もともとその生徒自身に備わっている学習能力が100%の状態で授業を受けられるというのが水分補給の効果です。その生徒の持つ全力で毎回授業を受けられるのであれば、かなりお手軽なエビデンスといえるでしょう。

 ちなみに、この実践は最終的に水の準備が面倒くさくなったことと、冬に向けて気温が低下してきたことにともない、こそっと終了させてもらいました。


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