『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)販促・1
今回販促をします作品はこれ、
『真夜中のすべての光』(講談社タイガ)
上下巻です。
前回の記事の通り、こちらは「講談社NOVEL DAYSリデビュー小説賞」の受賞作のひとつです。
自分の作品を含め、6作品が受賞しました。
ざくっとした内訳は、SF3作、ファンタジー1作、異世界転生1作、ミステリ1作。
応募全作品のジャンル割合は存じませんが、こう見るとSF強し、という気持ちになりますね。
さてこの作品、もとのタイトルは『辺獄のパンドラ』。
タイトル変更にあたり、編集者の方から「SF色が強くない方が……」と。
SF……(涙)。
とは言え実を言うとこの作品、中身はそんなにSF強くはありません。
そもそも元ネタは、夢でした。
目が覚めてすぐに、とても印象的だったのでメモった内容が以下(註以外は原文ママ)。
自分が見る夢にはいくつかのパターンがあって、「自分自身が主人公」「自分が別人になっているが主人公」「映画のようにただ物語の進行を見ているだけ」、時に入り混じったりもしますがこの3つ。この夢は3つめ、自分は夢内のどのキャラでもなく、ただ映画を見ているような夢でした。
小説に起こす際にだいぶ設定などは変わりましたが、自分にとって一番印象的だったのは、実は小説には使わなかったネタ、「『雨にあたると濡れる』感覚を知っている者だけが濡れる」でした。
濃く暗く曇った空にまるで冗談のように大きな、輪郭だけの雫がたくさん浮かんでいる。
バーチャルな空間のバーチャルな存在であるNPCには「雨で濡れる」という概念がない。
けれどヒトは、空の雫を「雨だ」と認識することで、勝手に全身が濡れてしまう。この空間では、意識が外面に直に反映されるから。
全身を雨に濡らして大きな噴水の淵にうなだれて座っている男を、ふわりとした髪と灰青色のワンピースを着た少女が、じっと見つめている。
この少女の後ろ姿が、とても印象深かった。
物語をただ眺めているだけの夢の中の自分には、全く知り得ない彼女の内面が。
髪も服も肌もじっとりと濡らした男を見つめるその内側に、何があるのか。
それを描きたい、と思ったのが、この小説を書こうと思ったきっかけのひとつです。
どうも何だか到底、販促とは言えない文章になってしまいました。
次回こそ。
冒頭より72ページまで、試し読みできます。
お時間のある際にぜひ。