京都みなみ会館閉館のお知らせ(したくない) 〜 新みなみ会館の思い出
ついにこの日が来てしまった……。
別記事はこちら。
思えば2018年3月、旧館が閉まった時には「移転する」とは言われていたものの、内情は全く不明。
場所も「なるべく近く」とは言われてたけど、それもどうなるか判らず。
昔、数年間だけですが徒歩数分で行ける距離に住んでいて、気が向くとひょいと行ける映画館だった旧館。その後数回引っ越ししたのですが、そのつど少しずつ距離は開きながらも一応自転車で行ける距離でした。
なので、どうかあまり遠方になりませんように、と祈っていた同年11月末、「2019年 夏 京都みなみ会館再始動」発表。
もう踊りあがった記憶があります。
新館の工事も始まって、「むっっちゃ近い!!」とテンション更に爆上がり。道路挟んで斜向かい、て。嬉しかった。
会員募集も始まって、勿論オープニング会員に。
それ関連の記事はこちら。
そして新生みなみ会館、初回鑑賞の話がこちら。
ひとり……。
ちょっぴり縁起が悪いな、と正直思った。
でもこの約半年後、まさか世界を揺るがすウイルス禍が勃発しようとは、さすがに一ミリたりとも想像ができなかったですよ……。
臨時休館を経て再開後も、どんなに人気の映画でも席を半分にして売らざるをえない日々。
もう本当に大変だったと思います(涙)。
勿論Tシャツも買いました。ミニシアターエイド基金にも参加しました。
ところで今回、閉館にあたり様々なネット投稿を見ていると、「京都みなみ会館を運営していたのは映画とは全く無関係の業種である巖本金属さんという一会社」だと知らなかった、という方が結構おられた。
で、知っていても「やめるなんてひどい会社だ」と憤られている方も。
イヤもう本当にね。それは本当に。
全く映画に無関係な一中小企業が、1988年から35年間にわたり映画館を運営してくれた、てものすごいことですよ。こんな運営の映画館、日本で他にないんじゃないかな。その間バブル崩壊もあった、リーマンショックもあった、コロナ禍もあった、それでも続けてきてくれた。
自分にはもう感謝以外の一言も無いです。
むしろ今回の閉館に対して、もし文句、と言うか、不満を言うなら京都の他社に向けるべきじゃないかと。
こちらの記事でも書いたように、巖本金属さんは「映画を観られる場所を提供することで地域貢献したい」という心意気で映画館運営を始められたところです。
この心意気に、他の京都の会社が一切助力をしない、てどうなのか。
京都にはたくさん大企業があります。京セラ、オムロン、任天堂、村田製作所、島津製作所、ローム、ワコール、etc.etc.
これだけの企業が集まっているのですから、それ等がそれぞれ、少しずつでもお金を出せばみなみ会館を助けられたと思う。
大企業が儲けにならないことなんてやらないよ、て言う方もいるでしょうが、地域貢献やメセナは長い目で見て、プラスになりこそすれマイナスにはならないと思うんですよ。
それにね。
初回に行った新みなみ会館、貸切王。
新生オープンの、ほんとにすぐでした。
その後も続けて毎月のように通いましたが、正直に言っていつ行っても観客は大変少なかった。
「あの時クローズを惜しんで駆けつけた大量の人達はどこに……」と思いました。
勿論、コロナ禍が始まってからは来たくても来られない人、たくさんいたと思います。
だがそれにしても旧館時代と比べ、お客さん本当に少なかった。プログラムが昔と違うから、て言う方もいましたが、特集上映しかやらないならともかく、新作もたくさんかかってたのに。
今回の閉館発表は7月でしたが、だからと言ってその後、特段観客数は増えなかった。
いよいよ閉館が目の前に迫ってきた9月に入って、じわっと増えて、直前2週間くらいでまた微妙に増えて、最終週はアホ程増えた。
遅いですよ……(涙)。
この3分の1、いや4分の1でいいからコンスタントに来てくれていたら。
そうしたらこんな日は来てなかったかもしれないのになぁ。
勿論かく言う自分自身も、もっともっともっと来れば良かった。猛省。
旧館の閉館は「老朽化」だったので、当然お客さんには無関係。
だから連日大量の人が押しかけるのを見ても、むしろ連帯感を覚えて微笑ましかった。
だが今回は、閉館直前に押しかけまくる人達が少々恨めしい。いま惜しむならもっと来て。
……とは言うものの、日常的に通えない遠方の人は仕方がないですよな。近くにミニシアターがある街に住む幸運な皆様、地元の映画館をもっともっと楽しんでね!
写真をばんばん貼ります。
さて自分が京都みなみ会館で最後に観ようと決めた映画はこれ。
『ロシュフォールの恋人たち』。
どれ程好きかはこちらの記事に。
続きを書こう書こうと思いつつ年単位で放置プレイしているのはただただ自分の怠惰の為。反省。
上の記事に記載の通り、2018年の旧館さよなら興行で観たのが初回。
それからもう一回、ルグラン特集の際に今度は新生みなみ会館で。
そしてまた今回。
9月29日、1日限りのルグラン特集でした。
1階入り口扉の装飾。かわいい。
最終日は当然30日なんですが、何て言うか、これを観た後に他の映画をこの場所で目に入れたくなかった。これを自分のすべての締めにしたかったのです。
最終日、きっと満席になっているであろう座席を見るのも辛かった。どれだけやるせない気持ちになるかと思うと。
こんなに大好きな映画を、こんなに悲しい想いで観る日が来るなんて。
物語がこれ以上進まないで、ここで、この幸せな世界のまま止まって、と何度も思った。
華やかにお祭りが始まり、双子が歌う夏の日のシャンソン。人生と花、笑いと涙を愛し歌う。
やがて夜もふけ、すっかりひと気が消えた広場に漂う充足感と祭りの後のさみしさよ。
夜が明け綺麗にゴミが片付けられて、舞台や機材の撤収が始まる。
空っぽになった広場でゆったりと踊る人々の美しさと切なさ。
あの幸福が約束されたラストで泣くことになろうとは。
そういえば29日だったか30日だったか、ロビーで写真を撮っていたらたまたまかかったBGMが『マルセルのお城』のオーギュスティーヌのテーマだったんで、それだけで涙腺が決壊しそうになった……。
これ聴くと泣くんだよ! もうメロディだけで心臓ぎゅうっとするんだよ!!
『ニュー・シネマ・パラダイス』はよく「映画好きが好きな映画」と言われますが、そちらが好きでこちらを未見の方にぜひ観てほしい。素晴らしい映画です。なお『お城』はいわば2話目なので先に『マルセルの夏』をどうぞ。
このメロディをバックにたたずむママンの姿を思い出すだけでもう……!(涙)
映画自体は観ませんでしたが、最終日にもう一度だけ勇姿を見ておこう、と映画館に向かいました。
ひとつだけ嬉しかったのが、ロビーに巖本金属の社員さんがいらしていて、ご挨拶ができたこと。
積年のお礼をこれでもかとぶちまけてきました(笑)。会社の方に直接お礼が言えて本当に良かった。
巖本金属さん、長いこと本当に本当にありがとうございました。
あなた方がいなかったらわたしの映画人生はもっと薄暗かった。
自分のこの先の人生にはもうみなみ会館が存在しないんだ、と思うと、悲しみと言うよりもっと手前に、途方に暮れた気持ちになります。
そんなことってあるのか、一体どうしたらいいんだ、とおろおろする。
これから何十年も、みなみ会館の無い世界で生きていかねばならないなんて。そんな莫迦な。
みなみ会館が無くなってしまったら、もうこの辺りに来ることもなくなるな。
自転車に乗って九条通を走って、映画の前か後にfiveran Jrでパンを買うことももうないんだな。
どうにもならない。辛い。
建物、どうするんでしょうね。壊すのかな。
見たくない。辛いな。
まだ消化しきれないので、さよならの挨拶や再開の希望を上手く言えない。
言ってしまうとなくなったことをすっかり受け入れてしまう気がして。
まだイヤなんだよ。
お疲れ様は言いたくない。
あそこは本当に、わたしの場所だったのに。
京都みなみ会館よ。
※2024年8月後記・待て、しかして希望せよ!