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【はがきサイズの短編】 かわいいは正義! テーマ:諸侯

こんにちは!高木梢です。

今回も国語辞典から、「諸侯」です!
ちなみに、諸侯ってなんだっけ?と思った方はコトバンクのリンクを貼りましたのでそちらでご確認ください。(私もわからなかった…)

今回は一応日本のお話です。諸侯って、大名みたいなイメージでいいのかな…ゆる〜く楽しんでいただけたら嬉しいです!


  イトの目の前に大きな門と屋敷が立ちふさがる。  ここは諸侯の西門家のご自宅だ。貧しい農民の娘イトは、数日前無実の罪で捕まった兄さまを助けにただ一人諸侯の西門愛羅殿に申し立てをしに来たのだ。

 しかし最初の困難がイトを襲う。門番の大男二人にすっかりひるんでしまったのだ。
 槍を持った強面の大男は、不思議そうにイトを見ている。
 耐えられなくなったイトは、土に指で猫の絵を描いた。

 (兄さまが西門様の裏口にいたのは、泥棒だからではありませぬ。ここがご自宅と知らず、人知れず野良猫の世話をしていたからです。そして、それが罪ならわたしも同罪です。捕まえるなら、一緒に世話をしていたわたしを捕らえてください。)

  その思いを門番は知らず、大男はにまっと笑った。

 「かわいい猫ちゃんでしゅねえ。愛羅殿に見せたらお喜びになるに違いない。ほら、あの松の木の下にいるから、見せてごらんなさい」

 えっ、いいの?

 思いがけず愛羅殿と対面することになったイトは、齢五十ほどの背の高い男のもとへ緊張しながらそうっと歩いていった。

 西門家にいる者たちはみな、かわいいものやこどもが大好きだったが、身長や強面のせいでそうしたものたちを遠ざけていたことをイトや農民たちは未だ知らないままである。

 松の木の下で小鳥を見ていた愛羅殿に、あのうと声をかけると、薄ひげの般若の面を被ったような顔がぐるんとこちらを向いた。

  イトは、ひっと小さな声を上げたが、兄さまの笑顔を思い出してかぶりをふった。

 「あいらさま…きのう、こちらでとらえられたナツオの妹です…にいさまは、泥棒ではございませぬ…」

しかし、愛羅殿は瞬きひとつしなかった。勇気がなくなったイトは、真っ白になった頭を抱えて涙目で土に猫の絵を三匹描いた。

 すると、愛羅殿の口がまるく開いた。

 「かわいい」

 こうして、イトは兄さまと手を繋いで夕暮れの田んぼ沿いを歩いている。

 何度も礼を言う兄さまに、イトは

「愛羅様はそこまで怖い人じゃないのかもしれないわ」

と、猫の絵を描いたお礼にもらった飴をなめながらけらけらと笑った。

Fin

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。素敵な画像をお借りしました。




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