【はがきサイズの短編】雨上がりの客人 テーマ:雷
テルー夫人は村中から頼りにされる気のいい淑女で、人々は何かあれば、あの家を訪ねるといいよとラベンダーの花畑を抜けた先にある小さなログハウスを指さすのだった。
雨上がりの午後、風とともに玄関のベルが鳴った。
テルー夫人が天使の飾りのついたドアノブを押すと、そこにいたのは悲しげな雷だった。
「まあ!さっき落ちて来た雷ね?」
「はい。ぼく、雲に帰れなくなってしまいました。」
「あらまあ、とりあえずあがんなさいよ。」
夫人は青いギンガムチェックのワンピースを翻し、薄桃色のふかふかなソファをすすめた。
雷は座って、夫人が白いポットにお茶の準備をするのをぼんやり眺めた。
「ぼく、雷の中でいつもどんくさくて、やっと雲から降りたと思ったら、雷雲を見失っちゃったんです。」
「まあ、のんびり屋さんね。でも、他の雷と違って人の頭に落ちなかったし、音も小さいから、子どもたちも怖がらなかったわ。地上の人にとっては、あなたのような雷は歓迎よ。
そうだ、さっき焼きあがったクッキーはいかが?」
雷はうなずいた。テルー夫人の頼りになる励ましに元気づいたのだ。
雷は夫人の後ろ姿を見送り、砂糖をすくおうと銀のスプーンを触るとたちまち消えてしまった。
テルー夫人が戻ってくると、
「あら、グッドバイも言わずに帰っちまったわ!」
と驚いた。しかし、スプーンを持つとパチンと静電気がしたので、気弱な雷はこの中にいるとわかった。
夫人は雨露に濡れた花畑を駆け、森の奥深くにある大きなチェリーの木のてっぺんにスプーンをくくりつけた。
そして、家に戻り黒猫のキャシーと雨ふらしの歌を歌った。
一晩続いた嵐が去った朝、テルー夫人が玄関を開けると、雷からのお礼の手紙と、スプーンと、バスケットいっぱいのさくらんぼがあった。
その日の午後、村の娘たちと作ったさくらんぼ・パイのおいしかったこと、おいしかったこと!
Fin
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こんにちは!高原梢です。
今回のテーマは、「雷」です!
フォロワー様からお題をいただきました。いつもありがとうございます^_^
ちょっと英国児童文学に憧れてみました。気に入っていただけたら嬉しいです。
ネットの情報ですが、雷って「落ちる」より地上から空に向かって「昇る」方が科学的に正しいんだそうな。東洋大学のサイトだったかな……。
そんなことから、この空想が思い浮かびました。楽しかったな。
わたしも、テルー夫人みたいな家に住んでみたい!♡
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
素敵な画像をお借りしました。
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