革命前夜を読んで、自分の頭が革命前夜の状態になってしまった
シチリア島の州都、パレルモからの発信。 ボンジョルノ。
この本もかなこさんの感想文を読んで引っ張られました。
旧東ドイツの出てくる話は好きだし、早速kindleで購入しました。 でもその後でやはりかなこさんの感想文を読んで購入した「蜜蜂と遠雷」を読み、「逆ソクラテス」を読み、やっと読み始めて先日読み終わりました。
すぐに感想文を・・・と思ったのに、どこから手を付けて良いのか分からない状態になってしまいました。
主人公と彼を取り巻く世界、旧東ドイツの話、バロック音楽とバッハの話・・・。そしてそれに伴って旧東ヨーロッパ出身の私の友人達の語ってくれた話・・・などが頭の中をぐるぐると渦巻いている状態が続いています。 全部書こうと思ったらどれだけ長くなってしまうのか?
「蜜蜂と遠雷」もピアノの話でしたがそれとは時代も場所も違い、もっと深く重く日本人が想像しきれない共産圏での生活が絡んでくるので、さらっと読んでしまうにはもったいない一冊でした。
芸術を学ぶ人、特に音楽やバレエをなさる方はベルリンの壁があった時代にもロシアや(その頃はソ連でしたね)ポーランドなどへ留学された方は沢山いらっしゃると思います。 でもその中で「東ドイツ」を選んだ方って、そんなに多くはないのでは? 私はベルリンの壁があった時代に仕事で何度もモスクワへ行っていますが、そして一回だけ観光で数時間東ベルリンへも行った事があるのですが、雰囲気としてはベルリンの方がヘビーでした。 他の東ドイツはどうだったのか、全く知りませんが。
う〜ん、どこから手をつければ良いのだろう?
まずは同じ東ヨーロッパと言っても、東ドイツ、チェコスロバキア、ハンガリー、ポーランドなど、国によって自由度に違いがある事が分かりました。 勉強になります。 勿論どの国にも背後にはソ連が控えているわけですが、東ドイツはかなり厳しかった様ですね。 そして共産圏は「個人の財産は国の財産」ですから、スポーツや芸術に才能を持った人のことはとことん援助します。 だから基準がものすごく高いわけですよね。
フィレンツェに住んでいた最初の頃、語学学校で旧東ドイツ出身の子と少し仲良くなりました。 お互いまだ拙いイタリア語で、彼女は英語ができなかったので突っ込んだ話が出来なかったのですが(すっごく残念)、彼女が語ってくれた事があります。
妹さんがバイオリンをやっていて、非常に才能があって、12歳位の時ある日学校の音楽の時間に「当局」の人がやって来て、別のところへ連れて行かれてしまった。その後「当局」の人が家に来て、両親と長いこと話をしていた。 そしてそれから妹は家にも帰ってこなかった。 つまり、才能を発見されて英才教育の為に連れて行かれたわけです。
その数年後ベルリンの壁が崩壊し、テレビを見ていた西側の私達は「やったー!これで共産主義がなくなって、みんな自由になれる!」と、ある意味関係ないのに大喜びをしましたよね? だけれども共産圏に住んでいた人達全員が喜んでいたわけではないのです。 その後自宅に帰って来た妹は放心状態だったとのこと。
ここからが本題でありまして、共産主義が壊れたので妹は家に戻された。 しかし妹はそれを喜んでいなかった。 それまでは音楽学校で英才教育を受け、最高の先生が付き、いつどこのコンクールでこれを弾けと言われてその通りにして来た。 遠征費用もホテル代も、食費も衣装代も全部国が払ってくれていたわけです。 だから彼女はバイオリンのことだけを考えていれば良かった。 コンクールに出る為に西側も行ったけれど、彼女は「西」には興味がなく、ひたすらバイオリンを弾いていた。 そして壁の崩壊・・・。 当然妹さんの生活も大きく変わってしまったのです。
それからは自分でいつどこで、どんなコンクールがあるのかを調べなくてはいけない。 コンクールの応募書も自分で書かなくてはいけない。 有名な先生の推薦状もない。 移動費、衣装代、ホテル代など、全て家族が捻出しなくてはいけないが、そんなお金はない。 でね、その妹さんバイオリンをやめてしまったんですって。 「妹は何も出来なくなった」と。
その友達、妹さんの事になったら拙いイタリア語にドイツ語を混ぜながら凄い勢いで話し始め、私にはチンプンカンプン、理解できない。 それを質問しながらゆっくりと喋ってもらいって、何とか理解できたのがこれでした。
思春期の数年間ほぼ隔離状態の英才教育、家族とも会えない生活をしていたので、地元に戻っても友達もいない、出来ない。 バイオリンを続けるにもお金がかかり過ぎる。 最悪だったらしいです。 で、スーパーマーケットで働いていると言っていました。
その子とはもうコンタクトがないのですけど、その妹さんはどうしているかと、この本を読んでふと記憶が蘇ってしまいました。
ほら、全然読書感想文になっていない・・・。 頭の中が革命前夜の様にワサワサして落ち着きがありません。
物事は両局面から見なくてはいけないと言いますが、西側しか知らない私達は東側に住んでいた人の目線で壁の崩壊を見ることは出来ません。 だからあの「世紀の改革」の事だって、一概に良かったと言いきれないものがあるのだと思います。 西ドイツ出身のある友人は、「東西統一したせいで、西は東の借金を全部背負う羽目になった」と、いまだに旧東ドイツを嫌う発言をします。 だからメルケルさんのことも嫌いだと(笑)。
きゃー、長い、長過ぎる。 ここで一応終わりにしますが、やっぱり感想文はかけそうもないです・・・。