ボディと骨格。 【ローストにおける味づくり】
ワインやコーヒーでは、ボディ感(肉付き)を説明に加えることが多い。
まだ飲んだことのない、そのコーヒーのボディというボリューム感を説明に加えることで、イメージを持ちやすいためにボディ感の説明をする。
そしてコーヒーのテイスティング・コメントでは、そのボディ感にフレーバーや酸の特性、そして質感の印象や甘さの印象などを添えることで、よりイメージがし易くなるために、それらのコメントを用意する。
コーヒーのボディとは?
コーヒーの場合のボディ感では、素材が持っているボディのポテンシャルとローストによって登場しているボディが合わさり、コーヒーのボディとなっている。
ボディは酸味でもあり、質感でもあり、フレーバーでもある。だからボディの理解は難しい。
ボディがうまく理解できない人のためにボディを説明をすると「肉付き」と説明される。
人の体を想像してもらえると判り易く、痩せている人もいれば、ふくよかな人もいる。その「肉付き」のボリューム感は、筋肉質の肉付きもあれば、脂肪による肉付きもあり、年齢によってもその「肉付き」の印象が異なってくる。
それがボディ感という「肉付き」からイメージできるボリューム感である。
コーヒーの骨格とは?
そして、これも人の体で考えると判り易いのですが、ボディ(肉付き)は骨格という骨組みのベースがあってこそ、ボディという肉付けがなされている。
なのでコーヒーにも骨格に相当するものがある。
それが、ローストによって登場する「骨格」である。
それをボクは、ローストの骨格と呼んでいる。
このローストの骨格とは、素材(コーヒー豆)の持ち合わせているものを登場させつつ、それを整えている。そのため素材とローストの骨格は完全に融合された状態となる。いわゆる味づくりの骨格でもある。なので、ローストのボディとは融合はしない。
このローストによって導き出されている「ローストの骨格」を感じるためには、ローストしてから時間が経つことで、ローストにより登場したボディ感が目減りしてくることで、しっかりとローストの骨格が感じられ易い状態になる。
もしくは、ローストされてから時間が短くても、抽出したコーヒーが完全に冷めてくることで、ローストにより登場したボディ感は目減りをするため、ローストの骨格が感じられ易い状態になってくる。
そして、ボクの仕事でもある焙煎士の仕事とは、ローストにおける味づくりとなる。だとするならば、焙煎士の仕事とは「ローストの骨格の上にローストの肉付け(ボディ)をするという味づくりとなる。」と言えるだろう。
なのでボクが焙煎士として取り組み続けていることとは、それら「ローストの骨格」と「ローストにおけるボディ」の両者をそれぞれ感じられるようになることであり、そしてそれらを感じられるからこそ、それらを整えることが出来るようになることにある。
なので、焙煎士としてのコーヒーのカッピングとは、味づくりのためにローストによって変化をしている全てを感覚でキャッチできることにある。
感覚においてローストにおける変化をキャッチできるからこそ、ネガティブな変化ではなく、ポジティブな変化を設定値として選択することが可能になる。
ゆえに、冷めも美味しいコーヒーとは、ローストの骨格という味づくりがキチンと施されているローストによるものであり、そしてそれは仕入れにより冷めても嫌な味が登場しない仕入れが出来ていることによるものになっている。