読書記録『おいしい話 (Little Selections-あなたのための小さな物語-)』
物語における食べ物の描写が大好きな読書人間、神崎翼です。
孤独のグルメやワカコ酒のような食べ物主題の話も好きですし、ジブリのように主題でなくとも食べる描写が丁寧に描かれている物語も好きです。実際に食べるのも好きなのですが、お話の中での食体験そのものが大好きなのだろうなと思います。
というわけで、今回読んだ本がこちら。
『おいしい話 (Little Selections-あなたのための小さな物語-)』
(2001.4/赤木かん子編/ポプラ社)
おもしろくて読みやすく、そして深い中・短編に解説をつけ、若い人たちむけに編んだ短編集シリーズ。6では庄野英二の「焼岳の月見」、チャペックの「ソリマンのお姫さまの話」など、「食べ物」のお話とエッセイ5編を収録。
本の名前の通り、「おいしい話」を集めた短編集です。
収録されているのは下記の5編。
『焼岳の月見』庄野英二(物語)
『ソリマンのお姫さまの話』カレル・チャベック・中野好夫訳(物語)
『ぶり大根』清水義範(物語)
『夏の盃』波津彬子(漫画)
『食べる』池波正太郎(エッセイ)
どのお話も、一度読めば「おいしそうだなぁ」と思うこと請け合いの作品ばかり。その中でも私が殊更好きだったのは『ソリマンのお姫様の話』。
じいさんは、シャツのそででひたいの汗をふくと、家を出るとき、ポケットにいれてきた大きなパンのかたまりと、チーズとをとり出して、むしゃむしゃたべはじめました。
グルメ作品とは比べ物にならないざっくばらんとした描写ですが、きっとこの場面をずっと「おいしそうだったなぁ」と思い返すのだろうと予感させる一文です。この短編は岩波少年文庫『長い長いお医者さんの話』から採られた一編らしく、その作品そのものにも興味がわきました。収録作品の前に編者による作品・作者の紹介と、ほかのおすすめ作品なども載せられているので、次に読む本を探す手がかりにもなる短編集ですね。エッセイから物語、漫画まで取り揃えているので、どの人にもおすすめ。
そして個人的に特に読んでほしいのが、編者さんの解説(あとがき)。
子どものころ、私は食べることがとても好きでした……。
私だけでなく、たいていの子どもは大人よりも、食べることが好きなのだろうと思いますが、そのせいか、子どもの本の中にはおいしそうな食べ物がたくさん出てきて、そのたびに私は、いいなあ、たべてみたいな~と思っていたものです。(中略)
で、大きくなってそういう場面ばかり集めた「子どもの本とごちそうの話」(径書房)という本を書いたら、私もそうだった! というお手紙をたくさんいただきました。
やっぱりくいしんぼなのは私だけじゃなかったのね……。
わかる。編者さんとめちゃめちゃ握手したい。
解説のこの部分を読んで、私のように作品の食べ物描写が好きな人に届いてほしいとすごく思いました。私とすごく趣味の合う編者さんなので、『子どもの本とごちそうの話』含め、今後もちょくちょく赤木さんの本を読んでいきたいと思います。
それでは今日はこの辺で。
次の記事でお会いしましょう。
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