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私訳『菜根譚』⑳~暗闇にこそ光明が見える

糞蟲至穢,變為蟬而飲露於秋風。
腐草無光,化為螢而耀采於夏月。
固知潔常自汚出,明每從晦生也。

糞虫ふんちゅう至穢しあいなるも、変じて蝉となりてつゆを秋風に飲む。
腐草ふそうは光無きも、化して蛍と為りてさいを夏月に耀かがやかす。
まことに知る、けつは常により出で、明はつねかいより生ずるを。

糞にたかる虫ほど汚いものはないが、
やがて蝉に変わり、秋風の中で白露を飲む。

腐った草はもともと光を持たないが、
やがて蛍に変わり、夏の月夜に輝きを放つ。

清らかなものはつねにけがれたものの中から生まれ、
明るいものはいつも暗いところから生じるように、
真っ暗な絶望の中に必ず明るい希望が見えてくる。


*『酉陽雑俎』巻十七に「蝉は、蛣蜣きつきょう(糞虫)の化する所なり」とある。
*『礼記』「月令」に「腐草、蛍と為る」とある。



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