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小説 短編集

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家族の姿や微かな恋模様を描いています。サクッと読める物語を集めました。隙間時間のおともに。
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#恋愛小説

短編小説)雨待ち

 大学の図書館の窓から見える空は、今日も雲ひとつない青さだ。  梅雨入りしたというのに、…

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六月は、雨の匂いがする。                 ~Episode1 涙

女らしくない女、だって。 察しの悪い女、だって。 がさつな女、だって。 デリカシーのない女…

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短編小説)近所人とわたし

 誰でも、身の危険を感じる言葉の一つや二つを浴びた経験は、あるんじゃないかって思う。  …

5

短編小説)茜色の空と雨上がりの虹と

 篠田(しのだ)家の四兄弟が、そろいもそろって優秀なのは、近所ではもはや常識だった。  …

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三月物語~この先、300メートル

 高校卒業を翌月に控えた二月のある日、忽然と幼なじみの住田(すみだ)一家が消えた。消えた…

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三月物語~ハルとわたし

  土曜日の午後二時。緑道沿いのカフェは、ほぼ満席だった。わたしと恋人のハルこと佐田 晴…

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三月物語~向かっていく気持ち

 卒業式の最中に、麻衣子(まいこ)からメールが入った。   「くそっ」  腹痛と偽り式を抜け出したおれは、大車輪の勢いで、駅に向かって自転車を漕ぐ。 「ったく、なんなんだよ。あのメールは」 ――― ごめん。コースケ。 「ふざけんなよ」  心臓破りの坂をのぼる。足がつりそうになるくらい辛い。でも、ここで力を出さずして、どこで出すというんだ。  自分が吐く白い息で、視界が曇る。足の指も、手袋を嵌めていない指先も、感覚がないくらいに冷たい。  麻衣子は一つ年上の恋人で、おれの

三月物語~半分だけで

 小さい頃から怖いテレビを見るときは、手で顔を半分隠して、半分だけの顔で画面を見ていた。…

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三月物語~弥生、三月

「弥生(やよい)、三月」  弥生というわたしの名前が面白いのか、毎年この時期になると、野…

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怖がり姫の外泊事情

 中谷織枝(おりえ)は、外泊が嫌いだ。    きっかけとなった幼稚園のお泊り会にはじまり…

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