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いるはずもないふたりの姿を、放課後のグラウンドで走る人たちの中に探す。 霜がとけてぬ…
「人って、一日に十分でも一人になる時間が必要だと思うわけよ」 実家の玄関に仁王立ちする…
「代官山あやかし画廊の婚約者」9/15発売 × 「わたしと隣…
「文鳥ですが転生しました!」 この物語は、「文鳥ですが守ります!」「文鳥ですが守りたい」…
2022年6月富士見L文庫さま(KADOKAWA)より 「わたしと隣の和菓子さま」を発売していただきま…
大学の図書館の窓から見える空は、今日も雲ひとつない青さだ。 梅雨入りしたというのに、…
彼が来た。 十年前より、少し恰幅のよくなった体で。 「やぁ、久しぶり。元気そうだね」 「あなたも元気そうね」 「あの日の約束を覚えてくれていてありがとう」 「こちらこそ。あの約束があったから、わたしは今まで頑張ってこれたの」 彼がわたしを眩しそうな顔で見る。 「ぼくもだよ。きみに再会できたときに恥ずかしくないように頑張ったよ」 「あのとき、わたしたちは二十歳だった。世間では、二十歳といえば……って、よく言われていて。友人たちも、いいきっかけだからって次々にトライし
女らしくない女、だって。 察しの悪い女、だって。 がさつな女、だって。 デリカシーのない女…
誰でも、身の危険を感じる言葉の一つや二つを浴びた経験は、あるんじゃないかって思う。 …
高速道路に乗ってから、車は順調に流れている。ウィークディの昼間に、ひとりで車に乗ってい…
篠田(しのだ)家の四兄弟が、そろいもそろって優秀なのは、近所ではもはや常識だった。 …
学校からダッシュで本屋に寄って、そのまま走って家に帰る。 玄関に鞄を投げ置いたまま…
高校卒業を翌月に控えた二月のある日、忽然と幼なじみの住田(すみだ)一家が消えた。消えた…
土曜日の午後二時。緑道沿いのカフェは、ほぼ満席だった。わたしと恋人のハルこと佐田 晴人《さた はると》は、無言でカフェオレを飲んでいた。 すると、突然、隣の席のカップルが揉めだしたのだ。 「なに、それ! 東北の大学に進学するなんて、聞いてないし」 「言えなかった。受かるなんて思わなかったんだ。自信がなかったんだよ」 「受かる自信がない? デートできないほど勉強していたくせに、なによその弱気は」 「それに、遠くの大学を受けると言えば、きみが悲しむと思って」 「内緒にされ