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#84 「モチモチの木」1、2時間目はこうやってみました。
先週からモチモチの木(光村図書 国語3年)の授業を始めています。
授業をしながら気づいたことを紹介していければと思っています。
まず今回学習する「モチモチの木」の全12時間の計画をたてました。
(※計画なので子どもの実態や、興味・関心によって課題が今後、少しずつ変更するかもしれません。)
1 登場人物の確認。豆太とはどんな子? 豆太の性格が分かる表現について整理する。
2 作品の設定についてわかることを整理する。豆太の年齢、家族構成、時代など。
3 起承転結による物語の場面分けをする。
4 あらすじを理解したうえで、気になったことを共有する。今後考えていきたいことを整理する。
5 豆太の勇気を感じられる表現を見つける。
6「勇気」とは何かについて考える。
7 題名の付け方を分類する。 なぜこのお話は「モチモチの木」なのかを考える。(「スイミー」などとの違い)
8 豆太は変わったのか、それとも元の性格に戻ったのかを考える。
9 「モチモチの木の灯」は本当に豆太には見えたのかを考える。
10 語り手について考える。なぜ「語り手」はなぜ豆太に対して厳しい語りなのかを考える。
11 作者について調べる。→作品にどのような影響を与えているか考える。
12 作品のテーマについて考える。(勇気、優しさ、家族愛、それ以外?)
【モチモチの木 学習計画(2025.1.18)】
【1時間目】
1 まず「豆太の性格」から考えることにしました。
・当初の計画通り豆太の性格から考えることにしました。
・なぜ一時間目に「豆太の性格」を考えたかというと「段落分け」「あらすじの要約」などから始めてもよかったのですが、この作品の「豆太」という人物が、今までの作品の主人公より、人間味があり、強い個性をもっていると思ったからです。
・まず、あらすじを確認するより、「豆太」に焦点をあてていく方が作品の世界により深く入れると思いました。
・ちなみに「三年とうげ」では物語のあらすじから確認し始めました。三年とうげの「おじいさん」、ちいちゃんのかげおくりの「ちいちゃん」、春風をたどっての「ルウ」と比べると「豆太」はかなり個性の強いキャラクターだと感じます。
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2 豆太の性格分類と板書の位置で意識したこと
・まず、子どもたちには「豆太ってどんな男の子なんだろう?」と尋ねました。
・本時の課題を「豆太の性格について考えよう」してもよかったのですが、そうすると、豆太は「優しい」「おくびょう」などの内面に関することしか出ないと思いました。
・「どんな男の子かな?」と尋ねることで「五歳の男の子」「お父さんがいない」「じさまと二人暮らし」「走る体力がある」など性格以外の人物の設定についても掘り下げられると思ったからです。
この質問に対して子どもから次のような意見が出てきました。
↓
〇おくびょう
〇怖がり
〇トイレに行けない
〇泣き虫
〇弱虫
〇えらそう
〇いばっている
〇生意気
〇やさしい
〇じさまが好き
〇足が痛くても走れる
○勇気がある…
・この時、板書で意識したのは
黒板の真ん中に「豆太ってどんな子だろう?」と本時の課題を書いて
右は「昼の豆太」のちょっと生意気で強がりな性格に関すること
左に「夜の豆太」の怖がりで臆病な性格に関すること
下には優しさ、じさまへの愛、勇気など「豆太の奥にある気持ち」「物語のテーマ」にも関係しそうなこと
を書くことにしました。
・いつも出てきた意見を「どこに書くか」はその場の雰囲気で考えますが、似ている考えを近くに書いておく方が、後で見直した時に、決まりや、発見が多いので、今回は左、右、下に意見のまとまりを書いておくようにしました。
・右に「強がり」左に「臆病」を書くことで性格の対比を意識しやすい思ったのと、下方に「勇気」「やさしさ」など豆太の深層心理を書くことで、「豆太を支えている本質的な性格」が視覚的にわかりやすいのではないかと考えました。
板書を書く時には、このような位置関係を意識して書いいたと思います。
・また「性格」に当てはまらない、「五歳である」「お父さんがいない」等の設定に関しては、一番右にまとめておくようにしました。
3 子どもの感じている豆太の性格を把握する。
・いろいろな豆太の性格があがったので、でてきたの性格に(ア)~(サ)と記号をつけて、その中から、どれが一番「豆太っぽい性格かな?」と子どもたちに聞いてみることにしました。
・「子どもの感じている豆太の印象」と「私が感じている豆太の印象」が違う場合もあるので、一度聞いてみて、その印象のずれなどが大きければ、敢えて、そこを授業の新しい展開にもってこようと考えていました。
・子どもたちに手を挙げてもらい性格について聞いたところ、子どもの豆太に対する印象で、最も多かった意見が
(ア)「おくびょう・こわがり」でした。次に多かったのが、
(カ)「じさまが好き」という性格が豆太らしいという意見がでました。
・・この(カ)の「じさまが好き」という豆太の性格は私の中で意外な答えでした。しかし、子どもの印象が強い意見を、掘り下げた方が、授業が深まることが多いので、なぜ「じさまが好き」という性格が「豆太っぽい」のかを聞いてみることにしました。
・すると「こわがり」「足が痛くても走れる」「優しい」「勇気がある」
→これらの性格は全部豆太の「じさまを好きな気持ちから出てきている」と説明する子が多く出てきました。
(例 唯一の家族であるじさまがいなくなるのが怖い。→だから弱虫になる、じさまを助けたい。→だから勇気を出せるなど)
・豆太の行動やせりふを「じさま」を意識して考えていくことで説明ができる部分も確かに多いと感じたので、「じさまへの心情」を意識しながら今後の授業を考えていこうと感じました。
4 「昼間の豆太」の性格の違和感
・ここまでのことから、臆病であること、勇気を出すことは「じさまのためである」という事は、先ほどの「じさまが好き」という事から説明ができそうです。
・しかし、昼の豆太の「生意気で横暴な性格」は「じさまが好きだから」では説明できないの部分があるのではないかと思いました。
・そこで「昼の豆太はなんでこんなに生意気なんだろう?これはじさまを好きなこと関係ないような気がするのだけれど?」と聞くことにしました。
・子どもから出た意見に「昼間、豆太がいばっているのはモチモチの木の実を落としたいからではないか?」という意見があがりました。
そこから豆太は「生意気」「いばっている」のではなく、「ただのくいしんぼ」なのではないかという意見がでてきました。
5 「豆太の頭の中」を描いてみる
・ここまでの子どもたちと話で、頭にぱっと思い浮かんだのが「脳内メーカー」でした。
・頭のイラストが描かれていて、そこに睡眠、食事、恋愛等、その人の頭の中に占めるものを視覚的に表した図です。
・豆太の脳内メーカーを子ども一人ひとりに描かせたら、どんな割合で何を書くのか?「じさまが好き」と「臆病」以外に頭の空いているスペースにどんなことを描くのか?これも子どもによって違いが生まれてくるのではないかと思いました。
・黒板の豆太の性格を見ながら、子どもたちは豆太の顔の絵を楽しく描いて活動していました。(豆太の顔のイラストを描いて、頭の部分を空白にしたワークシートをつくってもよかったなと思いましたが、突然ひらめいた活動だったので、この日はノートに書いてもらいました。)
・どの子もやはり、「じさまへの愛」が一番大きかったです。
・それ以外にどんな性格を書くかによって子どもの個性も出ていて面白いと思いました。
・「じさま」「臆病」以外にも「モチモチの木」を豆太の頭の中に大きな割合で書いた子もいました。確かに豆太にとって「モチモチの木」がなぜ重要なのかを考えることで物語への理解が深まりそうです。
・12時間学習をした最後に、また同じ図を子どもが描いたら、もっと複雑な豆太の脳内メーカーができるかもしれません。
6 この日の振り返り
・最後に本時のまとめとして「なぜ豆太がじさまをこんなにも好きなのか」が、本時のポイントだったと思ったので、これをノートにかいてもらい授業を終了にしました。
【豆太がじさまを好きな理由】
・唯一の家族だから
・ずっと一緒に生活してきたから
・言葉や行動が優しいから
という意見がでました。なかでも
「じさまは豆太の弱さも受け入れてくれているから」という意見がとても印象に残りました。
→「これは臆病でも優しさがあれば」というじさまのセリフとも関連させられそうなので、この意見も授業のどこかで生かしていきたいなと思いました。
(終)
【2時間目】
1 作品の設定の「時代」から確認しました。
・2時間目は当初の計画通り、登場人物、時代など「作品の設定」についてわかることを整理しようと思っていました。
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・まず、どこの国の話?誰が出てくる?など順番に設定を確認するのですが、今回はまず「この話はいつ頃の話だと思う」と時代のことから聞くことにしました。詳細はこの後説明しますが、結果として、この「時代設定」から聞いてよかったと思います。
この作品には「時代に関する叙述」が予想以上にたくさんありました。
2 子どもが感じた「昔」とは?
・子どもから出た意見を書いておきます
T:この作品の時代はどんな時代ですか?
C昔の話だと思う。
(→理由 語り手の離し方、せっちんという言い方、医者「さま」‥昔だからお医者様が少なかった、挿絵の服装などから)
T:今からどれくらい昔の話だと思う?
C:まず令和では絶対ないでしょ。
C:斉藤隆介さんの紹介が最後に書いているけど1918年から1985年って書いているから、今から百
年以上前の話じゃないかな。
C:豆太は5歳だから作者の斉藤さんの生まれた年の1918年+5年後で1923年頃の、斉藤さんが子どもの頃の様子が書かれているんじゃないかな。
T:「この作品が昔だとわかる言葉や表現を教科書から探してみましょう。」
C:
・おとう(昔の言い方)
・きもすけ(昔の言い方)
・木うす(昔の道具)
・青じし(=かもしか)を追いかけたりは今は絶対しない
・小屋(今の建物と違う)
・山(今の山だったらったら階段やロープウェーがあるはず)
・病院がない
→子どもたちの意見を聞いて、今の自分の生活と、作品の世界を文章を読んで比べてるなと思いました。
3 昔という時代設定が作品に与える印象について
・思った以上に「昔を感じさせる描写」が見つかったので、ここで少し、作品をメタに捉えてみることにしました。
・この時、頭の中で思いついた発問が「もしこの作品が現代だったらどんな話になるだろう」というものです。
これなら、子どもたちも答えやすいなと思いました。
C:もしこの「モチモチの木」の話が現代のお話だったら、じさまを助けるためにお医者様をわざわざ呼ばない。
C:スマホで救急車を呼べばいい。
C:山を越えてじさまを助ける豆太の勇気も見られない。
C:薬局で、じさまの腹痛の薬を買う話だったら全然迫力がない。
…など、時代設定が現代でないからこそ、作品に出てくる面白さついて、話が広がりました。
まだ子どもたちから意見が出そうだったので最後に
「この物語の設定が『昔の話』だからよかったことって何だろう?」と聞いて、ノートに各々の答えを書いて提出してもらいました。
4 昔という設定だからよかったこと
子どもたちから出た意見をいくつか紹介します。
・そもそも昔のお話じゃなかった、「モチモチの木」自体なかったんじゃないかな。木の実をつぶして食べたりしないし。
・昔のだから豆太とモチモチの木(自然)との関りをお話にすることができたと思う。
・じさまを助けたいという豆太の気持を、昔の時代の方が強く表すことができる。
・夜中に2キロも山を走った豆田の勇気がわかりやすくなる。
・命の大切さが伝わる。
・道徳のはなしみたいに思える。
→この中で「命の大切さが伝わる」というのは面白い視点だなと思いました。
この物語のテーマとして「勇気」や「家族愛」などが考えられそうです。医療や交通が発展していなかった時代、腹痛でも命を落とすことがあったのだと思います。当時の人々は、今よりももっと「命」を深刻に考えていたのかもしれません。
そう考えると確かに「モチモチの木」は道徳の教材っぽい要素もあると感じました。子どもの視点はなかなか鋭いなと思いました。
・この日は、設定のうち「時代の設定」のみに焦点を当てたので、次回3時間目は、相関図をで人物の設定、関係について整理してみようかなと、ぼんやりと考えながら授業を終えました。(終)
また授業をして、整理できたらnoteで紹介していきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
(追加)
この後の授業の様子もまとめてみたので、もしお時間あれば読んでいただけると幸いです。↓