江戸の川柳 転ぶからそれで流行ると芸子言ひ 柄井川柳の誹風柳多留五篇⑤
芸能が流行り、芸人のことが話題となったのは江戸時代も同じ。
江戸時代の人々が五七五で創り、柄井川柳が選んだ「誹風柳多留五篇」の古川柳紹介最終回。
読みやすい表記にしたものの次に、記載番号と原本の表記、七七の前句を記す。
自己流の意訳を載せているものもあり、七七のコメントもつけているものもある。
あいぼれの仲人実はまわし者
541 相ぼれの仲人実はまわしもの このみこそすれこのみこそすれ
「相ぼれ」は両思いのこと。二人が好き合って(「このみこそすれ」)結婚したいので、このことを知っている人に仲人になってもらって、両親に話を持っていく。仲人は二人のまわし者だ。という句。
結婚の仲人実は知り合いで
二人の仲を親へとつなぐ
家と家との結婚の時代だといえども、互いに好き合い恋愛していた二人は、結婚するための作戦を練り、どうにかいざこざなく結ばれようとしていた。「きまり」がある中でも自分の思いを通そうとする工夫。
「いくらいります」と質屋はズラリ抜き
598 いくらいりますとしち屋はずらりぬき はづかしいことはづかしいこと
町人である質屋が武士の魂である刀を抜く。士農工商の身分の一番上「士」と一番下「商」。武士にとっては「恥ずかしいこと(はづかしいこと)」だ。しかも「いくら必要ですか」ときたもんだ。
町人の質屋は刀をズラリ抜き
武士に金貸す身分社会よ
転ぶからそれで流行ると芸子言ひ
677 ころぶからそれではやるとげい子いひ そねみこそすれそねみこそすれ
「転ぶ」というのは売春すること。流行っている仲間を「嫉む(そねみこそすれ)」他の芸者。
流行るのは枕営業してるから
うれない芸人グチが止まらず
どっからか出して女房は帯を買い
712 どつからか出して女房は帯をかい 是は是はと是は是はと
どっからかへそくりを出して女房は帯を買った。「これはこれは(是は是はと)」ってなもんだ。
女房の買い物どこから金が出る
あれ買いこれ買い俺何もなし
社会環境は違っていても、生きているのは同じ人間。江戸の昔も今も似たようなことを思い似たようなことをやっている。。温故知新で江戸の川柳から学べることはたくさんある。
古川柳紹介はちょっと休憩。
今まで紹介した川柳は、以下の文章にまとめてあります。