歓怒(かんど)

神戸からの風、どこまで吹いていくのだろう。 歓怒の文字は「歓喜」「怒り」「喜怒哀楽」を示し、「かんど」は漢字では「神戸」とも書ける。「感動」とも書ける。よろしくお願いします。

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神戸からの風、どこまで吹いていくのだろう。 歓怒の文字は「歓喜」「怒り」「喜怒哀楽」を示し、「かんど」は漢字では「神戸」とも書ける。「感動」とも書ける。よろしくお願いします。

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    現代にも通ずる江戸時代後期の文化について書いています。

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奇事中洲話②~地獄の世界を描く山東京伝の黄表紙

 近松門左衛門の「冥途の飛脚」を元にした梅川、忠兵衛の物語。そこに別の話も複雑に加わってくる。  黄表紙「奇事中洲話」(1789刊)山東京伝(1761~1816)作、北尾政美(1764~1824)画、全三巻の現代語訳、中巻の紹介。    地獄も出てきて、さあ、どうなるか。 中巻 六  三浦屋から身請けされた遊女高尾は、仙台侯伊達綱宗の意に沿わず斬り殺された。歌舞伎の女形荻野八重桐は、その女姿の美しさに惚れたカッパに水中に引きずり込まれて水死した。  どんな縁なのか、そ

    • ラクダをはじめて見た人たちの話

       子どものころから足が悪く、走ることのできなかったG男は、周りから笑わればかにされ、何度も悔しい思いをした。あいつらを見返してやる。そう思い、必死で勉強をし、優秀な成績で学校を出た。  復讐心のかたまりのG男は、自分から何かをする勇気はなかった。  そんなときに、政治家を目指すA作と出会った。A作は貧しい画家であり、金持ちを憎んでいた。あいつらを見返すために、政治家となって権力をにぎろうとした。選挙に何度も挑戦したけれど、かつてのパワハラを持ち出されたりした。というより、はじ

      • 奇事中洲話①~「冥途の飛脚」をなぞる山東京伝の黄表紙

         「雉も鳴かずば撃たれまい」ということわざは、「雉が鳴かなければ猟師に撃たれることもない」から、「よけいなことを言わなければ禍はやってこない」という意味に使われる。身分社会の江戸時代に、支配階級の悪口を言えば、禍がやってくる。そのことわざに、「中洲の話」という意味をかけた「奇妙な事柄」というタイトルになっている。隅田川の埋め立て地、中洲(現在の日本橋中洲)には、火事で焼け出された吉原の遊郭が、一時店を構えていた。  山東京伝(1761~1816)の黄表紙「奇事中洲話」は、寛

        • 牛とカエルの残酷な物語

           イソップの寓話に、こんな話がある。  牛が水辺で水を飲んでいて、カエルの子どもを踏み潰してしまった。  外から帰ってきた母親が、 「あれっ、子どもの数が足りない。おまえたちの兄弟はどうしたんだい?」とたずねると、 「死んでしまったよ。さっき、四つ足のでっかいやつがやって来て、そいつの足の下敷きになってしまったのさ」と子どもたちは答えた。  母親は、自分の体を膨らませて、 「そいつは、このくらい大きかったのかい?」とたずねた。  子どもたちが言った。 「やめなよ。それ以上大

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          カワセミは水辺に巣をつくるけど

           カワセミは、人のいない場所を好む。人間につかまることを警戒して、水辺の崖の上に巣をつくる。  ある日、出産間近のカワセミがやって来て、崖の上の岩で子どもを育てることにした。ここなら誰もやってこない。  卵がかえりヒナとなった。母親はエサを求めて出かけていった。ところが、その間に突風が吹き、水面を波立たせ、巣まで波が届き、巣を流してしまった。ヒナは行方知れずとなってしまった。  戻ってきたカワセミは、事情がわかり嘆いて言った。 「ああ、なんてことだ。地上は危険だからと、警戒

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          孔子縞于時藍染③~山東京伝の黄表紙

           道徳のゆきわたった江戸の町を想像し、寛政の改革に苦しむ庶民の悲惨な現実とは逆の世界を描いた大人の絵本、黄表紙の作品。  山東京伝作画の「孔子縞于時藍染」(寛政元年・1789刊)上中下三巻の現代語訳の三回目、最終回の紹介。    下巻 十二 「倹なるは固し、むしろ固しけれ」(倹約家は頑固だが、贅沢で礼をなくすより、むしろ頑固であれ=「論語」) と、当世の通人は、そまつな服を伊達だと言い、安手の木綿の着物にそまつな麻の羽織なぞを好む。 田舎の武士「あれもどこかの通人だそう

          孔子縞于時藍染③~山東京伝の黄表紙

          孔子縞于時藍染②~江戸の町の山東京伝の黄表紙

           道徳が行き渡った江戸の町。そんなことは、人間の世であるわけないだろうが、ありえないことをSF的にあれやこれやとカタログ的に描いた作品、山東京伝作画の黄表紙「孔子縞于時藍染」(寛政元年・1789刊)上中下三巻の現代語訳二回目の紹介。    中巻 六 「楚国には、もって宝とせず、ただ善をもって宝とす」(楚の国には特に宝というものはないが、あるとすれば善人がいるということだ) という言葉を守り、だんだん世の中での金銀をいみ嫌い、中にも知恵のある男、考えて、 「『焼き味噌を焼

          孔子縞于時藍染②~江戸の町の山東京伝の黄表紙

          孔子縞于時藍染①~道徳だらけの山東京伝の黄表紙

           格子模様の染め物が流行るという意味に、孔子の教え、儒学を引き継いだ朱子学が、幕府の学問としてあったが、その教えが、寛政の改革(1787~1793)とともにますます広がっていくという意味のタイトルで、当時の世の中を茶化して描く。寛政の改革では、学問や武芸が奨励され、倹約が奨励された。  派手な模様のファッションが禁止されたので、格子模様のいろいろなデザインが流行のファッションとなる。孔子の「論語」はよく読まれており、教えをアレンジした道徳、心学も流行していた。そんな時代に、道

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          アトラス彗星は見られなかったけれど、宇宙の神秘はたくさん見てきた人生だった

           2023年に中国の紫金山天文台で発見されたアトラス彗星は、2024年10月に肉眼で観察できるとニュースで言っていたが、空を見上げても見えない。明るく見えていた宵の明星、金星さえ、しばらく曇り空の連続で見ていない。アトラス彗星は金星の横で流れているはずなのに。別に大雨になったわけではないが、それだけ天気の悪い日がずっと続いていた。これも私の運命だろうか。    彗星といえば、しっかり見えたほうき星があった。  1997年のヘールホップ彗星は、長い尾を引きながら低い空に浮かび、

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          新たしく新しい秋の風景

           秋の七草の一つにハギがある。漢字でも「萩」、秋の草(くさかんむり)と書く。なのに最近は、「おお、ハギだ」と思って見ても、ヌスビトハギだらけになっている。  ヌスビトハギはくっつきむしのひとつで、できた豆は人にくっついて運ばれる。急に増えてきたなと思い、調べると、ヌスビトハギだと思っていたのは、日本に昔からあるものではなく、今、増えているのは、外来の、アレチノヌスビトハギ(北アメリカ原産、タイトル画像)だそうな。  ヌスビトは盗人で、こそっとくっつくくっつきむしのことだが、在

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          京伝憂世之酔醒③~江戸の町で夢を追っても……

           仙術を授けられた京伝の物語。夢がかなわぬ世の中だから、せめて草双紙(とうじの絵本)の世界で夢をかなえていく物語。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙(1790刊)。全三巻の三回目、最終回の現代語訳。   家に女性がほしいといえば、三人の美女があらわれた京伝は……。   下巻 十二  京伝は大人げなく、十代の振り袖に決めると、あとの二人は、たちまち消えてなくなる。さてさて、仙術は重宝なるものなり。  それより、その振り袖と昼夜交わり暮らし、今夜は

          京伝憂世之酔醒③~江戸の町で夢を追っても……

          京伝憂世之酔醒②~次々願いがかなう不思議な世界

           こんなことがしたい、あんなことができたらいいなと夢見る大人の夢をかなえる江戸の絵本作品。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙(1790刊)。全三巻の二巻目の現代語訳の紹介。   仙術を身につけた京伝は、女郎遊びをしたいと深川にやってくる。   中巻 六  ほどなく深川へ着き、新尾花屋へ行き、有名な遊女を呼び遊びければ、日頃の思いを晴らす。ちと座敷がさみしく思い、またまた、「なったりなったり」と手を打つと、たちまち太鼓持ち、流行の芸者がやってくる

          京伝憂世之酔醒②~次々願いがかなう不思議な世界

          京伝憂世之酔醒①~こんなことあんなことできたらいいな

           あんなことがしたい、こんなことがしたいと思うのは子どもだけでなく、大人も同じ。ありえないことを夢見るのは誰でもできるうさばらしかもしれない。  「京伝憂世之酔醒」は、山東京伝作、兎角亭亀毛画の黄表紙、寛政二年(1790)刊行、全三巻。  挿絵の兎角亭亀毛は、詳細がわからないが、うさぎにツノがあり(兎角)、カメに毛が生える(亀毛)「兎角亀毛」は、ありえないことのたとえに使われる。ちょうど「黒白水鏡」(寛政元年・1789刊)の挿絵で、北尾政演として過料をうけた後なので、京伝(1

          京伝憂世之酔醒①~こんなことあんなことできたらいいな

          秋野愛之交歓

           秋の涼しき風も感じられる昼、アゲハチョウが飛んでいた。あれ、変な飛び方だ。これはひょっとして。  枝に止ったのを追いかけると、予想どおり交尾していた。  チョウの交尾を見るのは久しぶりだ。  あれあれ、二匹の大きさが違う。これ、ほんとに同じ仲間のオスとメス?  まあ、いいか。同性同士でも愛が認められる時代だ。  なんにしても、秋の涼しい空気の中で、愛を交歓しているチョウがいた。  自然を見ると、いろんな発見がある。  以前、こんな記事も書いていた。

          莫切自根金生木③~噴煙ならぬ金の降る町

           浅間山が噴火し(1783)、異常気象により天明の大飢饉(1782~1788)が起きた江戸時代。不安な現実を忘れさせるかのように、金金金を主題とした物語。  黄表紙、「莫切自根金生木」(唐来参和作、1785刊)三巻の現代語訳の三回目、最終回。  金を減らそうとする萬々の奮闘やいかに。   下巻 十五  金を減らすには、普通のやり方ではできまいと、知恵をめぐらし、三保の松原の松を掘らせて、江戸まで運ばせると、よもや金もなくなりそうなものと、まず人を集め入札をする。 萬々「

          莫切自根金生木③~噴煙ならぬ金の降る町

          莫切自根金生木②~金だ金金、この世は金だ

           金だ金だと叫ぶのは、現代社会だけでなく、江戸時代からはじまったこと。  絵と文が一体となった黄表紙、唐来参和作「莫切自根金生木」(1785刊)三巻の現代語訳二回目。  金があるのがいやになり、金を減らそうとする萬々はどうするか。   中巻 七  今年は飢饉もなく、世の中もおだやかなので、たくさん米を買いだめして、米の値段が下がったら売り払い、損をしよう、と思い付き、手代たちに言いつけ、諸国の米を買いだめする。 手代「常陸や磐城の安い米を一両五升で買いました」 萬々「そ

          莫切自根金生木②~金だ金金、この世は金だ