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令和版小倉百人一首試作4/5
令和の子でも読める百人一首の試作、4回目。子どもたちに伝えてほしい日本の伝統。
61 なつかしの奈良の都の八重桜今日も咲いては輝いている
いにしへの奈良の都の八重桜今日九重に匂ひぬるかな 伊勢大輔
「九重」は宮中のこと。
62 夜が明けた鳥の声まねウソの声あなたに会うこと今はできない
夜をこめて鳥の空音ははかるともよに逢坂の関は許さじ 清少納言
鶏の声まねをして関所の番人をだました故事による。
63 今はただあなたに会うのをあきらめたただ直接に別れを告げたい
今はただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならでいふよしもがな 左京大夫道雅
恋をあきらめるための言葉を直接言いたい。
64 朝になり宇治の川霧広がって川にある木がかすかに見える
朝ぼらけ宇治の川霧たえだえにあらはれ渡る瀬々の網代木 権中納言定頼
「網代木」は魚をとる網をつなぐ杭。
65 恨んでは涙の乾く間もなくて恋の浮名が悔しく思える
恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 相模
うわさ話はたくさんされるけど、あなたは来ない。
66 もろともに哀れに思える山桜花と私と二人で山で
もろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 前大僧正行尊
「もろともに」はお互いに。桜も私もひとりぼっち。
67 春の夜に夢のように手枕をさしだすあなた誰かが見てます
春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそ惜しけれ 周防内侍
「うわさになるのはいやよ」と拒否している。
68 心にもなくてこの世に生きていてつらい浮世を照らす満月
心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな 三条院
いつかまた今夜の月を思い出すかもわからない。
69 嵐吹く三室の山のもみじ葉は龍田の川を錦に染める
嵐吹く三室の山のもみぢ葉は龍田の川の錦なりけり 能因法師
五色の「錦」のようにもみじが輝く。
70 さびしさに宿を立ち出でて眺めればいずこも同じ秋の夕暮れ
さびしさに宿を立ち出でてながむればいづこも同じ秋の夕暮れ 良暹法師
秋は夕暮れ。
71 夕闇に田んぼの稲の葉さらさらと農家の前で秋風ぞ吹く
夕されば門田の稲葉おとづれて葦のまろやに秋風ぞ吹く 大納言経信
葦葺きの農家の前の田んぼの情景。
72 音に聞く高師の浜のあの波に濡れる心となるのは嫌よ
音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖の濡れもこそすれ 祐子内親王家紀伊
「音に聞く」は有名な。
73 高砂の尾の上の桜咲きにけり外山に霞出てこぬように
高砂の尾の上の桜咲きにけり外山のかすみたたずもあらなむ 前中納言匡房
高い山の桜の様子。
74 好きなのに初瀬の山に吹く風が激しいように心乱れる
うかりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 源俊頼朝臣
初瀬の長谷寺の観音様に恋を祈るが……。
75 約束をしていたけれどあわれにも今年の秋も夢は果たせず
契りおきしさせもが露を命にてあはれ今年の秋もいぬめり 藤原基俊
約束を破られた恨み。
76 海神の大海原をこぎ出せば雲にも見える沖の白波
わたの原漕ぎ出でて見れば久方の雲居にまがふ沖つ白波 法性寺入道前関白太政大臣
青い海、白い雲、いや、白い波の見える大海原。
77 流れ行き岩で分かれる滝川も別れた後には再び会える
瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ 崇徳院
今は別れても、また会える日を待っている。
78 淡路島渡る千鳥の鳴く声にいつも目が覚め須磨の海見る
淡路島通ふ千鳥の鳴く声にいく夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌
海辺の関守は幾夜も鳥の声で目を覚ます。
79 秋風にたなびく雲の切れ間からそっと顔出す月のきらめき
秋風にたなびく雲の絶え間よりもれ出づる月の影のさやけさ 左京大夫顕輔
「月の影」の「影」は「姿」「月の光」のこと。
80 長からん二人の行く末どうなるか黒髪乱れる朝の思いよ
長からむ心も知らず黒髪の乱れてけさは物をこそ思へ 待賢門院堀河
乱れているのはえっちの後の髪の毛と、これからどうなるかという心の乱れ。
今回はここまで。原文を生かすことが少しはできたかな。リズムを持った歌として歌ってほしい。
このシリーズは残り後1回。