【410字小説】 贈る言葉 #毎週ショートショートnote 裏お題「だいたいニャー」
「だいたいニャー、お前って奴は…」
猫の説教は続く。しかし、中身は四十八日前に事故死した父だ。
信じがたい話だが、最後の願いに、死神が力を貸したらしい。一晩だけ飼い猫のキィに憑依させてくれたのだと自慢げだ。
「こんにゃ機会をもらえたのは、俺の行いがそこそこ良かったからにゃ。お前もそうなるように、がんばるにゃ。」
『"そこそこ"なんだ?』心の中で呟き、笑顔で応えるが、急に心配になった。
「"お前もそうなる"って僕まだ死なないよね?」
「わからにゃいが…生きるにゃ。」
支離滅裂な物言いに僕は苦笑いになる。
「…心配しすぎるにゃ…もっと堂々とにゃ…自信をつけてやれにゃかったのは俺の責任にゃ…すまにゃい…」
初めて見せる父の姿に言葉が詰まる。
「けど…お前は頑張り屋で優しいにゃ。俺の傑作…自慢にゃ!」
一瞬キィが光り、元のキィに戻った。
「いつも…言いたいことばっかり…」
視界が滲み、上を向く。
「ありがとう…」
自慢の父だった。
(本文410字)
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こちらの企画の裏お題にも挑戦してみました。楽しい企画をありがとうございます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。