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ひとつの美しい調べに寄せて

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主に近現代の小説を読みながら、作中人物たちに思いを掻き立てられ、伝えたくなった言葉たち。作品ひとつにつき、登場人物ひとりに宛てて、手紙をしたためました。
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#イギリス文学

3.カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(土屋政雄訳)

3.カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』(土屋政雄訳)

トミーへ

トミーに手紙を書こうと思ったのは、他でもない、あなたが癇癪持ちだったからです。あなたはそのことでずいぶん苦労していたようですが、最後にキャシーがいうように、あなたは全て、体で感じ取り知っていたから、だからこそあそこまでの癇癪をいつも引き起こしていたのではないか、私もそう思います。絵が下手だったのだって、他の人とは違う感受性がはたらいていたから、そのように思えます。そんなトミーの癇癪を私

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2.エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(河島弘美訳)

2.エミリー・ブロンテ『嵐が丘』(河島弘美訳)

今日は『嵐が丘』のなかのエレン・ディーンに宛てて、お手紙をしたためました。

エレン・ディーンさんへ

私はあなたに怒っています。確かにあなたは誰に対しても(目の前にいる相手、ということですが)公平に、不当な憎しみを持つことなく接していました。家政婦らしく主人とその家族の幸せを願い、行動し、時に助言を与えてきました。
でも私には、目の前の相手の感情に動かされすぎているように見えました。その結果、余

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