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絵画からの着想

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#ゆたかさって何だろう

6月15日のお話

6月15日のお話

旅が彼をいざなったのか、彼が旅に魅せられたのか。どちらかはわかりません。ただ彼は、結果として長い旅に出ることになりました。

当てがあるわけではありませんでした。ただ、自分ではない何者かになりたくて、自分の跡をいつまでもついてくる自分の影を脱ぎ捨てたくて、自分のことを知らないどこかにいきたくて、異国から異国へとさまよいます。

彼は自分に与えられた「性」がとても嫌でした。

本当はみんなと仲良くし

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6月11日のお話

6月11日のお話

仮想空間での娯楽がここまで発展したのは、5年前の世界的なパンデミックが発端になったことは言うまでもありません。しかし、発端こそそれでしたが、浸透・定着した背景には、行き過ぎた情報化社会を迎えてしまった現実世界の住みにくさがあったのではないかともいわれています。

真偽のわからない汚職や不正行為、あかの他人の不実の行為や経済発展と引き換えに生まれた闇社会、場所にまつわる遠い昔の不幸な出来事や心無い誹

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6月4日のお話

6月4日のお話

世界は、生まれてすぐに、まずは大地の鼓動という名のリズムを手に入れました。

鼓動がその世界の大地に生きるものたちを目覚めさせると、リズムに乗って、小鳥はさえずり、獣は哭き、草木は葉を擦らせて音を奏で始めました。

あとからやってきた人間は、そこに言葉という詩を乗せると、歌が生まれました。そうして世界は、合奏と合唱の音楽に満ちてゆきます。

世界のみんなが奏でる音楽が、それはそれは幸せな音色だった

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6月1日のお話

6月1日のお話

2003年6月1日

今日は制服の衣替えの日。少しダサめのワンピースだった冬服から、可愛い(と他の高校からも評価の高い)夏服の白いセーラー服に切り替わる日。

出来れば街に遊びに行くのは、セーラー服になってからの方が良い、確実にその方が男子達の視線を集められるからだ。

そんな高校の頃のワクワクした気持ちが、卒業して3年が経とうとする今でもカレンダーを見ると蘇ってくるから面白い。

そんな今日、私

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