かみゆりね

第一弾 5/31から8/31 第二弾 11/1から 着想は好きな絵画やPinterestの画像とかから。

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第一弾 5/31から8/31 第二弾 11/1から 着想は好きな絵画やPinterestの画像とかから。

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最近の記事

12月29日のお話

車窓から、まっすぐ正面に満月が見えました。 眼下には町の明かりが、地味に、控えめに広がっています。 新宿発の特急電車。 カイネが乗るのは右側の窓際の席です。 駅で買ったコーヒーを口に運びながら、彼女は地図を頭に浮かべながら考えます。 『冬やから、お月さんの昇る位置は東からすこしだけ北。 それが真横に見えるから、あぁ、この列車は北北西に向かっているんやわ。』 目的地の方向から、電車は最初、西側に進んでいると思っていましたが、 今は進路を北に変えているようです。 窓の横で

    • 11月27日のお話

      私は、きっと感情の起伏が激しい方です。 ちょっとしたことで、荒れ狂うように心が激しく波打つこともあれば、穏やかなときは、誰もが振り返るような、キラキラと輝く微笑みが魅力だと言われます。 歌を口ずさめば、その音は多くの人を癒やすといわれますが、周囲の影響をうけやすく、大きな声で怒鳴ってしまうことも少なくありません。 だからでしょうか、私は美しくもあり、包容力もあるが、恐ろしいともいわれているようです。 そんな私にも、変わらず寄り添ってくれる人がいます。 彼は私と正反対で、いつ

      • 11月20日のお話

        今は一部の人が魔法を使い、多くの人が科学技術を使う時代。人間の居住区にだけ都会の街並みと自然が共存し、その他の大地は荒れ果てている。そんな世界の、荒れ果てた大地の果てで暮らす人のお話。 4205年11月20日 新都心エリアから飛行機体に乗り、5時間。陸路だと数日かかる距離の辺境の地。旧王国デノーヴェと呼ばれる街の先には、「世界の終わり」と呼ばれる巨大な大地の裂け目が横たわっています。裂け目と言ってもこちら側から向こう側までは距離にして約4km。谷底には誰も到達したことがな

        • 7月28日のお話***

          「羽田空港 Terminal3」 あたたかな陽が滑走路の向こうの海に沈み 冬の名残が色濃い冷たい闇が訪れても 飛行場は負けじと星空よりも色とりどりの灯りをまとう 夜の寒さに肩を寄せ合う相手もいない僕は ひとり 誰を見送るでも待つでもなく 送迎デッキから飛行機を見つめている 君になんて全く興味がなかった僕の平凡な人生に 君は突然割り込んできた みんなから「派手なこと好きなお調子者」言われているくせに 僕はその時 見てしまったんだ  留学に向かうあいつの見送りに来たあの日

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          23本
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        • 音楽からの着想
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        • 4202年からの物語
          17本
        • 読書からの着想
          2本

        記事

          1月27日のお話*

          「もう別れよう。これ以上、待てないや。」 マリエからそんなLINEが来たのが3日前。既読をつけてしまったけれど、返信を打つ気になれず、かと言って彼女のアカウントを削除することもできず、放置したまま4日目が終わろうとしている。 いつもの彼女なら、「既読スルー?」と怒りのLINEを送ってくるところだが、そういうメッセージもないところを見ると、既にブロックでもされているのかもしれない。それなら今更僕が何を送っても無駄になる。 そう思うと気が楽だから、ブロックしていてくれたらいいのに

          1月27日のお話*

          1月26日のお話*

          「イルミネーションってさ、寄り添いながら歩いてくれる人がいるから、きれいだなって思えるんだと思う。」 すれ違った女の子二人の会話が、急にそこだけ切り取られたように耳に入ってきた。彼女たちが歩いて行った方に少し視線を向けると、もう一人の子が慰めるような言葉をかけているのが聞こえてきた。失恋でもしたのだろう。 冬になると街路樹が葉の代わりに電球を纏い輝く街。銀座。 イルミネーションの発祥もこの街だったと思い出すと同時に、そのことを僕に教えてくれた人のことも思い出してしまった。

          1月26日のお話*

          1月25日のお話*

          2022年01月25日 「大切な話があるの」 そう呼び出された僕は、浮き足立つような気持ちと、それをかき消すような違和感を交互に抱えて深夜の銀座の街を歩いていた。 僕を呼び出したのは、一月前に出会い、意気投合した女性、紅 宮音さん。 銀座のバーで「ミヤネさん」と呼ばれていたから、てっきり苗字だと思っていたが、周囲に倣ってミヤネさんと呼び始めてしばらくしてから、それがファーストネームだということに気づき、とても慌てたのを今でもつい2、3日前のことのように思い出す。 「苗字の

          1月25日のお話*

          6月2日のお話*

          1921年6月2日。東京府。 この日、銀座のある場所に、突然現れた花屋が、大変香りの良い花を売っていると評判になりました。春の沈丁花、秋の金木犀にも勝るという初夏の白い花です。 「懐かしかぁ。」 「あら、東に下ってから初めて見た。」 「東京にもあるんやな!」 「故郷を思い出すわぁ」 そう言うのは、西のなまりがある大人ばかりで、江戸弁を操る地元の人々は、その強く甘い香りに目を瞬かせます。 「うわぁ、ハイカラな香りね!」 と喜ぶのはもっぱら女性で、江戸あがりの男たちには馴

          6月2日のお話*

          6月1日のお話*

          「おじいさんは、ある日、神様の使いの白い鳥が出てくる夢を見た。ハッと目が覚めてなんとなく外に出て散歩していたら、立派な松の木に夢に出てきたのと同じ白い鳥がいるのを発見。」 夕方。 帰宅ラッシュを避けてまだ陽の高いうちに地元の駅まで帰ってきた私は、筑土八幡神社の境内を通り過ぎようとしていました。普段は時間も遅いので人に会うことのない場所でしたが、今日はまだ子供たちが遊んでいる時間だからでしょう、一人の青年と、懐いた様子でその青年の周りを囲む小学生数人がいます。 「白い鳥って

          6月1日のお話*

          5月31日のお話*

          2021年5月31日 最近は、暑くもなく、寒くもない。一年のうちにこんなに快適な日が存在していたことを、私はずいぶん忘れていました。思い返せば、学生時代などは、妙に散歩に出掛けたくなる陽気の日が確かにあって、授業と授業の合間に芝生に寝転んだり、窓をいっぱいに開けて風を感じながら読書をしていました。 それが、大人になってからすっかりと感じることがなくなっていたようです。理由は明確で、オフィスで仕事をしているから。早朝に通勤し、空調のきいたオフィスの中で過ごし、夜に帰る。気持

          5月31日のお話*

          3月1日のお話。

          朝、天気予報を見たときは「曇り」。今日いっぱいは雨は降らないと思って干した洗濯物も、こう、雲がどんよりと暗くなってくると心配です。 もし降ったときのために、取り込んでしまおうか。 昼下がりの2時。おやつの珈琲を淹れながら、狩野かなめはそんなことを考えました。今日はいつもより暖かいし、概ね乾いているだろう。あと少し部屋に吊るしておけば夜には片付けられるかもしれない。それが良い。 熱々の珈琲を一口だけ飲み、用意しておいたチョコレートはお預けにして彼女はベランダに出て行きまし

          3月1日のお話。

          12月4日のお話

          東京の冬は晴れが多い。 どうしてこうも毎日晴れるのだろう、と、クルミは早朝のベランダで空を見上げました。12月にもなると、晴れていてもこの時間は冷えます。パン屋に勤めるクルミの朝は、夜明け直後のこの時間から始まります。 ベランダには東の空から真っ直ぐに太陽の光が降り注ぎます。洗濯物を持つ手がかじかむのも強い日差しがあればいくらかマシ。晴れる日は嫌いではありませんが、こうも毎日晴れると、クルミは毎日洗濯”したくなる”から困るです。 一人暮らしにも関わらず、天気の良い日は毎

          12月4日のお話

          12月1日のお話

          これはある街の坂の中ほどにあるパン屋さんのお話です。 そのパン屋さんがこの坂の中ほどにオープンしたのは2年ほど前です。当時からそれはそれは大人気で、平日でもお昼前後は行列ができます。休日なんて、開店してから売り切れるまで、列が途切れないほどの人気店です。人気の理由はシェフ。以前も有名店で活躍していた若手のイケメンシェフということで、オープン前からパン好きの人々の間で噂になっていたお店なのです。 そういう人気の背景を、全く知らない、パン屋の近所に住む男と、パン屋の売り子の娘

          12月1日のお話

          11月30日のお話

          「ねえ、マルラッテ。」 壁一面に魔法書が並べられた本棚のある地下室の中央には、オレンジ色のランプに照らされた机と半球の水晶、分厚い書物といくつかの実験道具。そして傍に立つのは魔法の国の大賢者ククです。彼女は歳を重ねても美しい銀髪をかきあげながら、眉間にシワを寄せ頭を抱えるようにしながら、侍女の名前を呼びました。 「マルラッテ、やっぱり私、失敗してしまっているみたい。」 もうずいぶん長い間大賢者として君臨している初老の女性のはずですが、その口調と仕草に奔放な乙女のような雰

          11月30日のお話

          11月29日のお話

          「それはさあ、お前、やめといた方がいいぜ。その女はさ。」 港町のくたびれた居酒屋で、机に置かれた一枚の葉書を、男が二人が覗き込んでいました。 一人は郵便局員の中村、そして「やめとけ」と発言したのは高校からの同級生、玉置です。 葉書は中村宛のもので、東京に住むミキという女性からのものでした。先日、中村が出した葉書の返事が届いたのです。可愛らしい猫の写真の絵葉書に、一言、こう書いてありました。 私のお店の名前は「81lounge」 お越しいただいたら一杯ご馳走させてくださ

          11月29日のお話

          11月28日のお話

          2019年11月28日 「勇者の憂鬱ってやつね。」 夜の公園、男はベンチに座りながら、耳だけを傾けていました。 「勇者?」 「そう、勇者。少年漫画とかで主人公になっている、あれです。」 「あれ、かぁ。」 男は少し疲れてしまっていました。 「いや、疲れているわけじゃないんですどね。」 「疲れているなんて言っていないわ。憂鬱って言っているのよ。」 自分が疲れていると思いたくない。男性にはよくある真理です。そう見せてしまってはいけない立場にあるから、いつでも笑顔で

          11月28日のお話