なぜ私たちは運動をしないと不健康になると断言できるのか?~システムとしての老化から読み解くホルミシス効果~
私たちは、誰だって健康であることを望む。
寿命だってなるべく伸ばしたい。
現在あなたが健康であれば、思い描く将来の夢や目標は、健康な身体を維持していることが大前提となっているだろう。
そしてそんなあながたが、こんなことを思っているとしよう。
『体重や体脂肪率はとりあえず正常の範囲内だし、普段の食事や栄養にはそれなりに気を配っている。
睡眠時間だって十分とれているし、人間関係だって良好だ。
この前の健康診断の成績だって、悪くなかったじゃないか。』
もし仮に、上記のような条件を満たしていても、あなたは不健康になる。
細胞は劣化し、老化するだろう。
なぜなら、週に150分の運動が抜けているからだ。
私たちは、身体を活発に動かし続けなければ健康を維持できなのだ。
では、そう断言できる根拠を詳しく解説してく。
不健康の定義とは|細胞の劣化
運動しないと不健康になる。
こう断言できる理由を解説する前に、まずははっきりさせておくべき定義がある。
すなわち、“不健康”とはいったい何をもって定義するのか?である。
私たちの身体は、約37兆個もの細胞と(銀河系の星の数の約10倍!!)、細胞が作るタンパク質で成り立っている。
(ヒトの細胞数はこれまで60兆程だと言われてきたが、2013年の研究で約37兆個だと判明)
したがって一つ目のわかりやすい指標は、細胞が正しく機能しているのか検査すればよい。
実際には、細胞が正しく機能しているのかを直接検査するのは難しいので、体重や血液、尿、胃カメラなどを駆使して、間接的に検査するのが普通だ。
すなわち健康診断である。
健康診断で調べられた数値が、正常の範囲に納まっていなければ、あなたは不健康の烙印を押される。
だが、不健康の定義が細胞の機能低下だとすれば、私たちは年齢を重ねるとともに不健康になるとも言えるだろう。
そして本当にその通りなのだ。(残念ながら、、)
歳とともに、身体(細胞)の機能が低下していき、不健康になっていくことを一般的には“老化”と呼ぶ。
人間にとって老化現象は、避けられない運命みたいなもので、頭の奥深くではそのことを納得して人生を送るしかない。
(私たち人間は、老化のしていつの日か死ぬことを理解しながら生きなければならない雄一の生物である)
さてこれで、不健康の定義が曖昧になってきた。
(老人=不健康だと決めつけることはできないのでは?)
さらにこの議論を複雑にしたければ、精神の健全さも検討材料に加えてやればいい。
(末期がん患者でも、精神的に豊かであれば健康と言えるのでは?)
だからこの先は、不健康の定義のことは忘れよう!w
いや、不健康の定義が曖昧なままでも、運動しないと不健康になるとする私の主張に筋を通すことは可能である。
その鍵となるのは、先ほどから繰り返しできてきている、老化という私たちを意図的に死に至らしめる積極的な“システム”だ。
システムとしての老化現象を紐解く
ところで、車やパソコンや洋服は使用するとともに劣化していく。
これと全く同じように、生物も歳を取るとともに消耗し劣化する。
ほとんどの人がこう考えているが、これは間違っている。
無生物が、時間の経過にしたがって劣化するのは物理の法則だが(熱力学第二法則:エントロピーの増大)、生物はこの法則を回避する術を持っている。
(実際のところはこの法則を回避する術を手にした存在物を生物と呼ぶ=生物の定義)
現に、サメやハマグリやオークの木は、歳をとっても細胞の劣化が一切みられないことが分かっている。
(老化しない生物は他にも数多く発見されている)
そして私たち人間も、20歳ころまでは一切老化しない。
(むしろ成長(=逆老化)する)
したがって、20歳を過ぎたあたりから成長するのを“あえて”やめて(もちろん成長し続ける要素もある)、わざわざ身体が劣化していく老化現象は、進化の過程で自然が“それを”選択してきた結果であり、意図的で積極的なシステムと言えるのだ。
だがこのことは、従来の進化論と少し食い違う部分がある。
従来のダーウィン主義的進化論は、個の生存と繁殖を最大化するように進化してきたという立場をとってきた。
もし個の生存と繁殖を最大化したいのなら、歳をとると死に近づく老化システムはむしろ邪魔ではないだろうか?
最も生存力がある個が、老化などせずに生き続ければいいのではないだろうか?
もちろんそうとは問屋が卸さないのだが、これには深い理由がある。
結論から言おう。
私たちを含め、多くの生物が老化というシステムを選択したのは、生態系を安定させ、種(あるいはコミュニティ)としての適応力を高めるためなのだ。
少し回り道にはなるが、この先の内容を理解するのに必要な知識なので詳しく説明していく。
歳とともに、細胞の機能が低下していく老化システムが、種やコミュニティの適応力を高める理由は大きく2つある。
第一に、老化によって意図的に死を迎えることは、個体数の爆発的な増加を抑制するのに役に立つ。
例えばライオンが老化しなければ、ライオンの頭数が年々増加するのは誰にでも想像がつく。
すると反対に、ライオンに捕食されるガゼルの頭数は年々減少して、いずれは絶滅するだろう。
ガゼルが完全に絶滅すると、餌がなくなったライオンはどうなるか想像してみてほしい。
そう、ライオンも餓死していずれ絶滅するはずで、結果として、老化しないライオンは生き残れない。(そればかりかガゼルも生き残れない)
したがって、老化によって個体数を抑制することは、種やコミュニティにとっては大きなメリットがあるのだ。
(この例えではコミュニティをライオンとガゼルの2種類に仮定したが、リアルな自然界ではもっとはるかに複雑である)
第二に、老化によって歳をとった個体の身体機能が低下しなければ、天敵に狙われるのはいつだって赤ちゃんや子どもになっていまうことも、想像に難くない。
新しい命が成長するチャンスがなければ、そのコミュニティ内に遺伝子のバリエーションが増えない。
(有性生殖の意義の一つは、次世代にDNAを受け継ぐ度に遺伝子を組み替えて、コミュニティ内の遺伝子のバリエーションを増やすこと)
もし自然災害や疫病などが流行ると、遺伝子のバリエーションの多い方が、種としては生き残る可能性が高い。(=つまり適応力が高いということ)
したがって、老化によって歳をとった個体が劣化するのは、天敵の狙いを子どもではなく、年寄りに向かわせることによって種やコミュニティの利益に貢献しているのだ。
(客観的な理論をストレートに主張すると、冷徹な人間だと思われるのは仕方のないことだが、私は決して年配の方を軽視しているわけではないことをご了承いただきたい)
そしてこのように、生態系を安定させ、種やコミュニティにメリットをもたらす為の老化システムという視点から考えると、次のような結論が導き出せる。
すなわち、裕福で満たされた環境で過ごすほど子孫を安定して残せるので老化は早く進む方に利益があり、劣悪で過酷な環境で過ごすほど子孫を残す機会が減少するので老化は遅く進む方に利益がある。
(このことついては様々な研究が成されており、餌をあまり与えず運動ばかりさせたマウスの方が、餌を十分に与えてあまり運動させないマウスより何年も長生きすることもわかっている)
参照:著書「若返るクラゲ 老いないネズミ 老化する人間/ジョシュ・ミッテルドルフ」
さて、こう結論付けられるさらなる詳細は上記著書に譲るとして、このように老化システムのメカニズムを正しく理解できれば、冒頭に私が記した主張の根拠も理解できるはずだ。
つまり、良質な食事、睡眠、人間関係など、運動を継続していること以外健康的な振る舞いができていても、運動をしていないという事実だけで私たちは老化し、寿命は短くなり、早死にするのである。
少々小難しい話しで回り道をしたが、死ぬまで運動を継続しなければ健康を維持できないという運命が、私たちの体には深く暗号化されていることをご理解いただけただろうか。
では次に、運動をするとどのようにして細胞の機能が維持されるのかを見ていくとしよう。
運動とホルミシス効果|アンチエイジングの真髄
運動をすると健康になる!
筋トレは身体に良い!
ジョギングすると長生きする!
これらはあまりにも一般的に浸透し過ぎていて、それがなぜなのかを疑うことは普段しないだろう。
(一時期、運動をすることが身体に悪いというデマが世間を賑わせたこともあったが、その根拠の部分(フリーラジカルと酸化)は真っ赤な嘘であることが分かっている)
でもよくよく考えてみると、きつくて辛い運動をして体に鞭を打つことが、なぜ健康の為になるのか、不思議に思わないだろうか?
運動による一種の“ダメージ”が、どのようにして細胞の機能維持に繋がるのだろうか?
ここで、一般の人にはあまり耳慣れないであろう専門用語を登場させたい。
すなわち“ホルミシス効果”だ。
ホルミシス効果とは、細胞が(物理的・化学的)ストレスに晒されてダメージを受けた(損傷した)後に、その修復活動を過剰にやり過ぎる効果のことをいう。
わかりやすく言えば、地震で家が倒壊した後、大工さん10人態勢で修復作業を行い、半年後に完全に元通りに戻ったにも関わらず、その後も10人の大工さんが毎日家に来て何かしらの作業を継続しているような状況である。
結果的にあなたの家は、元の状態より頑丈になる。
例えとしては正確ではないかもしれないが、イメージはこんなところだ。
つまり、筋肉、心臓、肝臓、皮膚、骨、脳、精神、免疫、血液、ホルモンなど、私たちの身体を作る全ての要素である細胞が、その正常な機能を維持するには、“ダメージ”が必要ということである。
ではそのダメージとはいったい何か?
もちろん、、“運動”である。
一見、細胞にはダメージを与えるように思える運動が、細胞の機能を保ち、老化のぺースを遅らせる根拠が、まさにこのホルミシス効果にあるのだ。
だから、バランスのとれた食事、バリエーション豊富なサプリメント、高級エステの機械やマッサージ、良質な睡眠や人間関係、これらも健康維持には重要だが、はっきりいってアンチエイジングにはならない。
裕福で満たされた環境でぬくぬく生活しているだけでは、私たちはどんどん老化する。
運動を死ぬまで継続しなければ細胞は劣化し、機能不全を起こし、身体は不健康になるのだ。
(この事実が前章の“過酷な環境であるほど寿命が延びる”ことの証明になるこことにも気が付いてもらいたい)
運動の条件と継続する戦略
さてここまでの内容で、身体にはなぜ運動が必要なのか?
運動がどのように身体を健康にするのか?
これらの問いかけにについて、正しく理解できたはずだ。
では最後に、運動、運動といってもいったい何をやればいいのか?という疑問にお答えしておこう。
ここでいう運動の理想の条件は、以下の3つを満たしていればよい。
①心拍数がそこそこ上がる
②ダイナミックな動きを伴っている
③動きの種類が豊富である
以上。
②と③を満たすのが難しければ(本当は②と③を満たすほど心拍数も上がりやすい)、心拍数が上がる運動であればひとまずは良しとする。
(速足のウォーキングでも動きのダイナミックさやバリエーションはないが、心拍数は120前後にはなるだろう)
したがって、ストレッチや軽めのヨガは含まない。
(もちろんこれはストレッチやヨガの健康への効果を否定するものではなく、ホルミシス効果(ダメージが必要だったのを思い出して!)を出す為の運動の条件である)
そして運動時間は、週合計で90分~150分を目指そう。
30分間の運動を週3~5回と考えると、かなりハードルは高いかもしれないが、将来やりたいことを制限なくやれる時間を延長できると考えれば、それもそこまで苦ではないだろう。
いや、、そもそも運動をすることを、“苦”と考えること自体避けるべきだ。
運動でも、その他の習慣でも、長期間にわたって継続するには、そのことを日々の楽しみに位置付けなくてうまくいかない。
何か運動の中に楽しめる要素を追加しよう。
ダンスやキックボクシングやテニスなど、スポーツに熱中することはその助けになる。
もしくは、誰か仲の良い友人や恋人、パートナーと一緒に運動する約束をするのも継続するための良き戦略の一つだ。
もちろん、信頼できるパーソナルトレーナーのプライベートジムに、毎週予約を入れておくことも、運動を継続するモチベーションになる。
⇩神尾健太のパーソナルトレーニングを受けるには⇩
まあ、、兎にも角にも、何はともあれ、有無を言わずに、運動、運動、運動、そして運動をしよう!
運動を習慣的に継続することには、あなたの人生を確実に豊かにするはずだ。
そう、私は確信している。
※もちろん運動もやり過ぎは禁物。運動をしたらしっかり休息と栄養をとることも同じくらい重要である!
エピローグ~人類のジレンマ~
おそらく、私はいつか死ぬだろう。
(あと50年以内に不老不死の技術が開発されるのではないかと、少しばかり期待しているし、そう期待できる根拠も持っている)
そして、死の後は無限に広がる“無”が待っているだけだ。
魂?生まれ変わり?死後の世界??
これらは「闇に怯える裸のサルが、自分たちのなぐさめにひねり出したフィクションに過ぎない」とジェイミー・デイヴィス氏が言ったことに、私は共感している。
だが、老化した末に死ぬことが自然が選択してきたシステムなら、私たちはそれを受け入れるべきなのだろう。
なぜなら、私たち人間(ホモサピエンス)だって、地球(ガイア)と繋がっているすべての生物の一部に過ぎないのだから。
(人類は特別だなんて思い上がるのはいい加減やめにしよう)
したがって私たちは、もう一度深く考え直さなければいけないのかもしれない。
寿命を引き延ばし、人口を爆発させ、一人ひとりの幸せを最大化する取り組みと、その利己的な取り組みが生態系や自然環境に及ぼす悪影響とが衝突するジレンマを。
日々の一つ一つの選択が、あなたの未来の美と健康を形作るのと同じように、私たち一人ひとりの振る舞い方が、未来の地球と人類の関係性を形作るのである。
⇩この記事を書いた神尾健太という人物⇩
https://wp.me/P9oEaZ-41
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