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必ず何かを生み出せる:ドラマ・原作『宙わたる教室』レビュー
伊予原新の『宙わたる教室』単行本上梓は一昨年秋。「オール読物」連載分4作に書き下ろし分3作が加わっての一冊は、所謂エンタメ作品ながら内容の上質さゆえにすぐさま青少年読書感想文全国コンクールの課題図書となり多くの読者を獲得した。学園もの、化学ものというエンタメの王道とも言うべき基軸の面白さとともに、実話に基づく物語であることが読者の胸を熱くしたこと間違いなく、誰にも必ず何かを生み出せるとの作品テーマはなるほど課題図書に相応しいものだった。
この原作が昨年秋NHKでドラマ化され、原作ファンの期待を裏切ることのない仕上がりで、最終回注目度では第2位となる好感度となった。読むだけでも様々に想像力が刺激される原作をドラマ化することで製作側はより一層の具現化を目指し原作をやや膨らませるだけでなく、教室での青空やオポチュニティの轍の画面を通しての提示で、観る者の涙腺に強烈に訴えかけた。全10回、毎回原作以上に心揺さぶられる展開だった。原作とドラマ化との幸福なコラボレーションと評したい。