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驚異の疾走感:毬矢まりえ・森山恵姉妹訳A・ウェイリー版『源氏物語』レビュー
教養講座で昨年から『源氏物語』を担当するにあたり(https://images.app.goo.gl/MNaA3BHb4QYGjRSCA)、既刊の現代語訳をほぼ確認したつもりでいた。その上で、受講される皆さんには、使用するテキスト(岩波文庫新版全9冊)とは別に、読み易さの観点から最新の角田光代訳(河出書房新社全3巻)を薦めていた。恥ずかしながら不明にして左右社の本書4巻は全くノーマークだった。平
もっとみる源氏物語 13 角田光代訳②
角田光代源氏、下巻に続いて、上巻読了。
敬語を省いての訳出は、物語の骨格を鮮明にしてスピード感が出るものの、王朝気分が減じて、特に上巻の「少女」までは光と姫君たちとの行き来が単なる関係性の説明になって、語り手が時に立ち現れるような『源氏物語』の妙味である典雅な調べと縁遠いものになるような印象である。第10帖「賢木」のような錯綜した人間関係の綾が読みどころとなる巻では、角田訳が冴え渡って滲み入るが、