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源氏物語 13 角田光代訳②

角田光代源氏、下巻に続いて、上巻読了。
敬語を省いての訳出は、物語の骨格を鮮明にしてスピード感が出るものの、王朝気分が減じて、特に上巻の「少女」までは光と姫君たちとの行き来が単なる関係性の説明になって、語り手が時に立ち現れるような『源氏物語』の妙味である典雅な調べと縁遠いものになるような印象である。第10帖「賢木」のような錯綜した人間関係の綾が読みどころとなる巻では、角田訳が冴え渡って滲み入るが、和歌を交わし合い、松風に吹かれ、明石の波音と箏や笛の音が混交するような場面の甘やかな雰囲気はなかなか醸し出されない。このあたりは、前にも触れたように訳なら、やはり谷崎新々訳の調べが一頭地を抜いている、と個人的には感じる。
もう1週間、中巻で光の後半生をゆるりと味わいたい。2021/07/17

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