【杜若日記】ご近所猫とのお別れ②
先日の①からの続き。
この猫に対する悔いを残したくない。
娘にも、できることをやらせてあげたい。
痩せてるのは、あまりご飯を食べられないからなのかな…
月並みだけど、私は「ちゅ〜る」をあげる事にした。
「ちゅ〜る」とは、猫ちゃん達に大人気の液状のおやつである。
何年か前、娘が獣医さんになりたいと言った時に猫カフェへ彼女を連れていき、オプションで「ちゅ〜る」をつけた事があるので存在を知っていた。
ちゅ〜るをあげた、あの時だけは熱狂的な猫の人気者になれたっけ。笑
幸い、最寄りの小さなスーパーにも「まぐろ味」と「とりささみ味」の2種類が置いてあった。
私は人生で一度も猫や犬の類を飼ったことがない。ペットフードを購入するのは新鮮だった。
娘が学校から帰宅した。
私は娘に「ちゅ〜る」を買ってきたことを伝えると、早速あげに行かせた。
パッケージのままだと上手に食べられないかもしれないから、使い捨てのスプーンに載せてあげるように言った。
娘は少し戸惑いながらもあげに行った。
5分後。
娘が戻ってきた。
私「食べてくれた?」
娘「食べてくれなかった…逃げちゃった…」
しょんぼりしている娘を叱咤激励して、もう一度チャレンジしてみるよう強く言った。
未知で初めてのことに対しては少々諦めが早く、怖気付きやすい子なのだ。
5分後。
再チャレンジした娘が帰ってきた。
「お母さん!食べてくれたよ!!」
笑顔で息を弾ませ、先ほどとは別人のようだ。使い終わったスプーンと空になった袋の処分の仕方を教えた。
(良かった、良かったねぇ…
…猫ちゃん、この子はね、敵じゃないよ。おやつ美味しかったかな、喜んでくれたかな)
固形物はまだ食べられてるんだろうか。どうか、お腹を空かせずにいて欲しかった。
娘は翌日もあげに行き、1日空けてまた行った。
そんなこんなでまぐろ味4袋がなくなったので、私はとりささみ味を買ってきた。
娘は学校から帰宅すると「ちゅ〜る」をあげに行く。金曜日にとりささみ味を食べてもらった。
そしてその週末。
日曜日、とうとうご近所猫は天国へ旅立った。
火曜日に、お世話していたご近所さんの向かいのおうちの方からLINEでご連絡をいただいて、猫ちゃんの訃報を知った。
その方もお子さんがいたので、猫ちゃんとお子さんのツーショット写真を撮ったそうだ。
死期が近い事は誰の目にも明らかだったのだな、、、
私の息子は、月曜に路上に猫がいないので、もしや…と思ったと言った。
帰宅した娘に、ご近所猫が旅立った事を告げた。
娘は、泣いたりはしなかった。
…そういう子なのだ。
大袈裟に反応せず、うまく言語化できない心を、自分の中でずっしりと受け止めているのだろう。
木曜日、猫ちゃんのお世話をされていたご近所さんにご自宅前でお会いした。
私は猫ちゃんの話を振った。
ご近所さんは、私にお礼を言わなければ!とずっと思っていたそうだ。
お嬢さんがおやつをあげに来てくれてたのが本当に嬉しくて嬉しくて…と仰った。
最期は、ご自宅の中で息を引き取ったと教えてくださった。
あの猫のために、色々してくださっていた事を今更知った。
お話をされている間のご近所さんの目が、これ以上ない美しい目をされていた。
あまりの美しさに、思わず釘付けになった。
猫ちゃんへの深い愛情。
少し涙ぐんでらっしゃるだろうか。
人の純粋な心がそのまま表情になって現れている。
なんて温かく、慈悲深い…
私は感激した。
心打たれた。
人間の慈愛に満ちた表情は、美しいのだ。
お礼を言わなければならないのは、こちらの方だ。
ご近所猫は、地域住民に慈しまれ、可愛がられ、見守られて旅立っていった。
猫ちゃん、ありがとう。
12年、同じ土地で一緒に生きてくれて、本当にありがとう。
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