【能・狂言】雲林院・引括
2023年4月8日(土)、国立能楽堂に能・狂言を観に行きました。演目は、能の『雲林院』と狂言の『引括』です。メモを残したいと思います。
※和歌の部分の間違いの修正と追記を行ないました。
■普及公演と解説・能楽あんない
国立能楽堂の普及公演では上演前に解説があり、今回は、国文学者で甲南大学文学部教授の田中貴子先生の解説でした。
題は『「伊勢物語」のまぼろし ー 能と注釈と』で、①世阿弥の自筆本との違い、②場所はなぜ雲林院か、③ワキである芦屋公光について、など解説がありました。研究者の人たちは「伊勢物語」の「昔男」や女性が誰なのか特定しようとしてきたそうです。また、古注と新注の区別など私は初めて知りました。
私が特に印象に残ったのは、②の雲林院についてです。次の項目にまとめてみました。田中先生の解説に、Wikipediaなども参照しました。
■京都市の雲林院について
(1)所在や歴史
所在地は京都市北区紫野。
淳和天皇(在位:823~833年)の離宮として造成され、紫野一帯は野の広がる天皇の狩場でした。869年、僧正遍昭に託され、官寺「雲林院」になり、息子・素性法師も住んだそうです。
京都では「雲林院」は「うじい」とも読まれるようです。
(2)文学作品と「雲林院」
今回の『伊勢物語』以外にも、多くの文学作品と関連しているようです。
・万葉集「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」(額田王)
・能の『半蔀』、立夏供養の寺
・源氏物語「賢木」で光源氏が籠もる
・大鏡「雲林院の菩提講」
など。
私は、京都に行ったことがほとんどないのですが、いつか雲林院は訪れてみたいと思います。
■能『雲林院』について
(1)簡単なあらすじ
摂津国(現在の兵庫県)に住む芦屋公光は、幼い頃から『伊勢物語』を愛読しており、不思議な夢を見てそのお告げに従い、京へ向かいます。
そして、雲林院で、年老いた男性と遭遇し、その男性の正体は在原業平ではと思われ…<以下省略>
(2)前場に関連して
前場では、桜の一枝を手折った公光と、それを咎めた老人が、古歌を引いて問答します。(追記しました)二人が引用した古歌を詞章から転記しました。一つ目が公光が引用した古歌で、手折って家への土産にしようとする歌です。二つ目が老人が引用した歌で、手折るのではなく、自然に任せたい気持ちが伝わってきます。
(3)後場に関連して
後シテ(在原業平)が登場する場面で、以下の歌が詠まれました。月や春が去年の春と変わっていくのに、わが身だけは変わらないといい、今回の能の世界にぴったりくる和歌のように思います。
また、詞章に「まづは弘徽殿の細殿に、人目を深く忍び」という下りがあり、在原業平が二条の后と忍んで会うことを、源氏物語で光源氏が朧月夜と密会する場面に被らせているそうです。
最後に、最近舞を見るポイントがあまり分からず困っていたのですが、今回は雲林院の満開の桜を想像するのと、足運びに注目して鑑賞してみました。売店で野村四郎(著)『仕舞入門講座』という本を見かけたので、今度読んでみたいと思います。
(4)その他
解説本などには、今回の演目は三番目物もしくは四番目と記載されていました。美男子の三番目物もあるとは聞いていましたが、男性物は今回が初めてでした。また、在原業平の二条の后に対する恋心(執心)が歌われ、四番目物という区分も理解できます。私は男性だからか、やはり男性が主人公の作品の方が、引き込まれやすいように思います。
そして、能面は、前シテは「小尉」、後シテは「中将」でした。
今回も多くの文学作品との関係を知ることが出来る能で、私も大変興味深く観ることが出来ました。
■狂言『引括』について
口うるさい妻と離縁しようとする夫の話でした。夫は妻に離縁の印として、妻がいつも使っている袋を渡し、気に入ったものを入れてなんでも持って行ってよいと言います。妻が袋に入れたものとは…<以下省略>
妻が袋に入れたものを見て、私も笑いがこぼれました。狂言についても慣れていきたいです。
以上です。