【演劇】帰って来た蛍 〜永遠の言ノ葉〜
2024年6月30日(日)、六本木の俳優座劇場にて、カートエンターテイメント プロデュース『帰って来た蛍』を観劇しました。第二次世界大戦期の特攻隊員たちの物語です。
平成20年の初演から、今回で8回目の再演となるそうです。私は最近観劇が多く、今回は見送ろうと思ったのですが、知覧や万世にも縁があって特攻平和会館など見学したこともあり、今回の観劇に至りました。言葉など懐かしく思うところも多かったです。以下、記録を残します。
■はじめに、あらすじ等
昭和20年の春から夏にかけて、沖縄に向けて陸軍最大の特攻基地となった鹿児島県の知覧。そこでの若き特攻隊員たちと、軍指定「富屋食堂」の女将・鳥濱トメさんとその家族の物語です。戦後の東京(トメさんの娘・礼子さんが「薩摩おごじょ」開店後)から、昭和20年を振り返る形で話は進みます。
そして、少しネタバレとなりますが、「帰って来た蛍」というのは、特攻で命を落とした隊員が蛍となって食堂に帰ってくるという話の流れから来ています。
■感想①:鳥濱トメさんと特攻隊員
私は、鳥濱トメさんの名前は知っていましたが、特攻隊員たちにとってどのような立場にあった人なのか、今回の舞台で具体的に知ることが出来ました。
自分の着物を売って、食材の調達に充てるなど、特攻に向かう(向かわざるを得なかった)若者たちに、精神的な休息を与えているようでした。また、トメさんの娘・礼子さんを通し、知覧基地で特攻隊員の世話をした「なでしこ隊」の女性(女子高生)たちも描かれていました。
そして、戦後のある時点から振り返ることで、生き残った隊員の方々の話も内包するようなつくりとなっていました。
■感想②:懐かしい言葉など
以下のような言葉が懐かしく映りました。
鹿児島では「さつま揚げ」を「つき揚げ」ということについて
鹿児島の女性「薩摩おごじょ」
舞台で軍歌「同期の桜」が何度か流れました。→鹿児島発の歌ではないと思いますが、親世代が歌っていたのを聞いたことがあり、懐かしく思いました。
開聞岳→薩摩半島の南端に位置する山で、私も登ったことがあります。配布プログラムによると、「特攻隊員が最期に見た本土」とありました。
知覧以外の特攻の地名として、万世、都城、鹿屋の名前が挙げられていました。
■感想③:戦争の捉え方
ここが一番の感想になるかもしれませんが、劇中の様々な登場人物を通して、戦争や特攻に対し、複数の見方がなされていたように思います。
例えば、特攻が決まった宮川三郎軍曹と滝本伍長のやり取り(口論)です。二人とも命令に従い特攻に向かうことに変わりませんが、宮川軍曹が祖国を守るためという色が強いのに対し、滝本伍長は、(命令には従うものの)なぜこのような戦争に突入したのかという疑問が挟まれます。
また、憲兵が取り締まり、暴力などを使う場面もありますが、「憲兵は憲兵なりに…」といった言葉があったように思います。
■最後に
昨今、「ナショナリズム」の見直しなどの話題を耳にすることもあります。何にも触れずに中立というよりは、いくつかの歴史的事実や考えに触れて、自分の考え方を探って行くのがよいのではないか、と思える舞台でした。
冒頭の画像は、「零戦」で検索し、ttg100さんの画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。零戦は海軍の戦闘機ですが、知覧特攻平和会館にも展示されているようです(会館のホームページに写真がありました)。
■公演概要
期間:2024年6月29日(土)〜7月7日(日)
場所:俳優座劇場
脚本・演出・製作総指揮:柿崎ゆうじ
特別プロデューサー:井上和彦
企画・製作:カートエンターテイメント
出演者:伊藤つかさ・竹島由夏・倉本琉平・笹田優花・仲泊百花・風山真一・榎木薗郁也・久保真優・小山田優・三辻拓海・島村明日果・村上ひなた・森山珠那・馬場光梨・井路端優・木村日陽・中里信之介・川上周之・中山陸・吉田壮志・鈴木弾・菊池永康・伊藤航・小原卓也・原川浩明・鹿島良太
特別出演:内田雅章・半井小絵・大鶴義丹・さとう珠緒
語り:柳沢三千代
本日は、以上です。