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【演劇・読書】サド侯爵夫人(劇団未来、三島由紀夫)

 1つ前の記事で、劇団未来の『わが友ヒットラー』の感想を書きましたが、同時上演された『サド侯爵夫人』の感想も書きたいと思います。

■あらすじなど

サディズムの語源ともなったサド侯爵は、その性的倒錯により投獄される。18年もの間、投獄と脱獄、そしてまた投獄を繰り返すサド。獄中の夫を献身的に支える妻ルネ。〈中略〉人間の強烈な欲望とエロティシズムを描きながら、フランス革命期の道徳規範に挑戦する三島由紀夫43歳の作品。

劇団未来の配布チラシより抜粋。

 全三幕。登場人物は女性6人です。サド公爵は、明らかな形では出演しません。今回は、少し登場していました。

■感想など

 私は過去に本作を、他の上演で鑑賞したことがあるのですが、今回も、それぞれの登場人物の個性に目が行きました。過去の記事でも本から以下の文章を引用したのですが、今回も再掲します。

サド侯爵夫人・ルネは「貞淑」。厳格な母親モントルイユ夫人は「法・社会・道徳」。敬虔なクリスチャンのシミアーヌ男爵夫人は「神」。性的に奔放なサン・フォン伯爵夫人は「肉欲」。ルネの妹・アンヌは「無邪気、無節操」。家政婦・シャルロットは「民衆」を代表するものとして描かれ、これらが惑星の運行のように交錯しつつ廻転し、すべてはサド侯爵夫人をめぐる一つの精密な数学的体系となる。

「跋」
(新潮文庫『サド侯爵夫人・わが友ヒットラー』より)

(1)貞淑について

 サド侯爵の妻・ルネは、「貞淑」と形容されます。この「貞淑」という言葉がどの程度の範囲を持つのかにもよりますが、あまり前面に出し過ぎると、頑なな印象を与え、周囲を苛立たせたり、日頃、道を守っている(ように見える)が故に、外れたとき大きな批判を浴びることになったりするのでしょうか。
 かと言って、あまり周囲に合わせ過ぎるのも、逆に「自分」が無くなってしまう気もします。
 今回、連なる行動を含め、難しい概念・価値のように思いました。

(2)取り巻く人々

 冒頭から鞭を奮い、サド侯爵の信奉者・協力者のように振る舞うサン・フォン伯爵夫人は、とても面白い登場人物です。表現が上手く出来ませんが、キャラが立っているなと思います。また、敬虔なクリスチャンのシミアーヌ男爵夫人とは対照的です。

 妹・アンヌは、姉のルイに批判的で、お菓子を食べる場面が何度かありました。このお菓子に、潜在的な人間の欲望が表現されているように思います。戯曲を読み込めていなくて恐縮なのですが、ト書きに書かれていたりするのでしょうか、それとも演出でしょうか。
 また、下げられたお菓子を口に頬張って出てくる家政婦・シャルロットにも、当時の環境を垣間見る感じがします。
 本作は、言葉がびっしりと詰まった会話劇なのですが、その分、概念だけではなく、具体性をどこまで与えるか、肉づけするかという面も、面白さの一つとしてあるのかな、と素人ながらに思いました。

 そして、ルネの母親・モントルイユ夫人について最後に記載します。サド侯爵との関わりを巡り、娘のルネと争う場面もあるのですが、娘に、こうあって欲しいという親の願いのようなものも伝わって来ます。ある意味、ルネの母親を中心に舞台が回っているような気もして、「法(ルール)・社会・道徳」というのは、言い得て妙だなと思いました。

■最後に

 登場人物についての感想を中心に記載しましたが、少しネタバレのようになってしまった気もして、すみません。
 冒頭の画像はお菓子の「タルト」で検索し、NOMADさんの作品を使用させて頂きました。ありがとうございました。


■公演概要

『サド侯爵夫人』
作:三島由紀夫 演出:松永泰明
【出演】 
ルネ:植村 早智子
​モントルイユ夫人:肉戸 恵美
アンヌ:北条 あすか
シミアーヌ男爵夫人:三原 和枝
サン・フォン伯爵夫人:前田 都貴子
​シャルロット:​池田 佳菜子

◇公演期間
2024年10月25日(金)〜27日(日)、11月1日(金)〜3日(日)
『わが友ヒットラー』との2本立て公演

◇会場
劇団未来ワークスタジオ@大阪

 本日は、以上です。


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