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【演劇】猿女版 火の鳥 〜鳳凰篇〜(サルメカンパニー)

 2024年7月20日(土)、21日(日)に、池袋の東京芸術劇場シアターウエストで『猿女版 火の鳥~鳳凰篇~』を観劇しました。感想を残します。
 4日間の公演で21日(日)が千穐楽でした。

■はじめに

 本作は、手塚治虫(1928〜1989)の漫画『火の鳥〜鳳凰篇〜』を原作としています。本公演の公式HPにも『火の鳥』連載70周年記念とありました。公演団体としては、「サルメカンパニー」と「ハピネット・メディアマーケティング」のタッグ公演とありました。

 「鳳凰篇」は『火の鳥』の中でも有名な作品の一つだと、個人的には思っています。
 少しだけあらすじに触れると、舞台は奈良時代の日本。2人の彫刻家、我王がおう茜丸あかねまるが主人公です。2人は、仏教・仏像の彫刻、そして時の政治権力に巻き込まれていきます。そして物語の中で、2人はそれぞれ女性に出会います。我王は速魚はやめ、茜丸はブチという女性にです。
 私は、この「鳳凰篇」が好きだったこともありますが、ナタリーの記事などで、各カップル(組合せ)の画像を目にして、観劇してみようかなと思いました。人間が演じている姿に「厚み」を感じ、面白そうだなと思ったのです。

■感想①:「鬼」について

 我王と茜丸のやり取りの中で「鬼」について考えさせられる部分がありました。隻眼隻腕の我王の容貌を「鬼」と指したり、人から物を強奪することなどは「鬼のような所業」であり、命をかけて仏像を彫ることは「鬼になる」と例えることが出来るかもしれません。

 話がそれてしまいますが、伝統芸能「能」の演目は、「神・男・女・狂・鬼」の5つに分けられることがあります。私は、これまで「男・女・狂」を人間世界、他の「神・鬼」は口を出すことが出来ない別世界のように捉えていました。今回の観劇を通じて、「鬼」は人間(世界)の延長線上にあるのかもしれないな、と思いました。

 もう一つ、夏目漱石の『草枕』の冒頭(付近)を思い出しました。引用します。

〈前略〉人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう。

夏目漱石『草枕』より抜粋

 どこに線引をするかという問題もありそうです。「人」と「鬼」との間にも線がありそうですが、「男・女」と「狂」の間、「男」と「女」の間にもあるかもしれません。「線」の有無、あったとして超えられるのか、問題は色々ありそうです。

■感想②:あなたはどっち派?

 物語の主人公である我王と茜丸。2人とも輪廻転生するのかもしれませんが、特に、鼻の大きな我王は『火の鳥』の他の篇にも登場してきます。
 子どものとき、人気のキャラクターは我王だったように思います。極悪非道な面もありますが、それには理由・背景があり、実は素朴で心がきれいなキャラクター(といった所でしょうか)。一方、茜丸は、権力に翻弄される少し嫌なキャラクターのように思います。
 私は、ガキ大将っぽいタイプではなく、茜丸に近いような感じで、「損な役回りだな。」と思ったものです。そういう背景もあって、今回は「茜丸に一票。」と思って観劇しました。バイアスかかっていますね(笑)。
 観劇後も、友人に「どっち派」などと聞いたりしていた(からんでいた)のですが、「どちらも精一杯生きたのでは。」と言われ、「確かになぁ〜。」と思いました。ある意味救われました。

 主な配役の方々を記載します(敬称略です)。

・火の鳥:悠未ひろ
・我王:柴田元
・茜丸:石川湖太朗
・ブチ:小黒沙耶/遠藤真結子
・速魚:田上真里奈/西村優子

公式HPなどより抜粋。

 茜丸役の石川湖太朗さんは、「サルメカンパニー」の主宰で、本公演の脚本・演出ともありました。同劇団は結成5年目で、池袋の東京芸術劇場。手塚作品の『火の鳥』。皆さん、忙しかっただろうなと思います。
 また、ブチと速魚がWキャストで、私はA公演を観ましたがとても面白く、B公演もみたかったです。

■感想③:火の鳥、身体表現、生演奏など。

(1)身体表現

 人間が演じることの「厚み」と上記したこともあり、身体表現について記載します。
 キャストの皆さんの身体の動きがすごかったです。我王に脅される茜丸を絡めとったり、集まって木を表現したり、パントマイムというかコンテンポラリーというのか(←技術について正確でなくてすみません)、重い物を運んだり、労働する姿を示したり。石川さん(茜丸)が、転生し、亀になる所など面白かったです。
 私は「サロメカンパニー」の作品を観るのは今回初めてでしたが、この身体表現に一番興味・関心を持ちました。生で見る「身体表現」は演劇・舞台の面白さの1つだと思います。

(2)生演奏

 生演奏をいつもされているのでしょうか。今回も舞台奥で演奏がされ、10分間のインターミッションでは舞台での演奏がありました。生演奏は、やはり迫力があります。

(3)悠未ひろさんの「火の鳥」

 物語から記載してしまい、最後になってしまったのですが、「火の鳥」について記載します。
 「火の鳥」がどのように表現されるのかも、観劇する前から気になる点でした。実際、悠未ひろさんの「火の鳥」は存在感がすごくありました。鳥の動きというよりは、ターンテーブルの中心で、光を放つ感じでした。(語彙力が無いことを含め、最後の記載になり、申し訳ありません。)
 また、「火の鳥」と異なる立場で、悠未さんが歌う場面がありました。(たしか)「ニューオリンズの…」といったような歌詞だったと思うのですが、(2)で記載した生演奏と合わせて、物語・舞台の世界に合っていたように思います。何という曲か知りたいです。

■最後に

 色々な点で面白く観劇した舞台でした。そして、また「サルメカンパニー」の公演がありましたら、観に行きたいなと思いました。
 記載する順番など、もう少し工夫すれば良かったのかもしれませんが、本日は以上にしたいと思います。最後までお読み頂き、ありがとうございました。

以上です。

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