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【追悼】福田和也 「作家の値うち」の値うち

福田和也さんが亡くなった。63歳だった。ご冥福を祈りたい。


わが世代のトップランナーの一人だった。その中で、最も早く亡くなられた感じだ(少し年上の坪内祐三氏も61歳で早逝したが)。以前から健康問題は聞いていた。


編集者をしていたとき、最も衝撃的だったのは、2000年の『作家の値うち』だ。

作家を100点満点で採点していくというのも大胆だったが、石原慎太郎や矢作俊彦を高く評価し、大江健三郎、日野啓三、五木寛之、船戸与一らを低く評価する価値観は、当時衝撃的だった。

しかし、例えば、高橋源一郎では「さようなら、ギャングたち」を高く評価し、それ以外を「恥知らず」とするのは、同世代として誠によくわかる評価で、正直な感想だと思った。


変な話だが、福田和也は、この『作家の値うち』によって、初めて私には脅威になった。

それまで、保守派の論客とか、三島由紀夫賞とかいっても、狭い文芸批評界の話であって、大勢への影響力はなかった。

でも、『作家の値うち』は、出版界全体の地殻変動に結びつく可能性があると感じた。実際、業界がザワザワしはじめていた。福田はすぐに二の矢である『作家の値うちの使い方』(2000年12月)を出した。

80年代のポストモダンも含めて清算するような、90年代論壇の破壊力を感じた。

マスコミがつくっていた作家の評価や文壇の秩序を、根本から揺るがすように思ったのだ。


だが、そうはならなかった。

これも変な話だが、私の記憶の中では、翌年(2001年)の「9・11」で、福田和也どころではなくなった。

何か、福田和也が揺り動かそうとしていた世界が、より大きなスケールで福田ごと揺り動かされた感じだった。

「9・11」が変えたのは、日本の保守論壇の命運だけではないが(イラク戦争への流れでアメリカ評価をめぐり保守が分裂する)、何かあのあたりで、彼がもう一つビッグになる機会が失われた気がする。

その後の「en-taxi」のような仕事は、若旦那の道楽的というと言い過ぎだが、80年代をまた繰り返しているようで、私は興味が持てなかった。


健康を害して、思い通りの活躍ができなかったとしたら、悔いが残っただろう。

重ねてご冥福をお祈りしたい。



<参考>


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