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【トランプ大統領候補正式決定】左派の「ポピュリズム」「反知性主義」濫用に注意
トランプ氏が共和党の大統領候補に正式に決まりました。
ということは、これから日米でよく使われる言葉は「ポピュリズム」「ポピュリスト」や「反知性主義」になるでしょう。
今回の暗殺未遂で、左派はトランプたちを「ヒトラー」や「ファシズム」と呼びにくくなった。それらの言葉が暗殺を煽った、と批判されているからね。
それに代わって、これから左翼リベラルが、トランプや支持者を批判するさい、使いそうなのが「ポピュリスト」「反知性主義」といった言葉です。
日本では、「ポピュリスト」という言葉は、小泉純一郎首相のあたりから、使われていた記憶があります。
「反知性主義」は、安倍晋三批判のため、マスコミが盛んに使いました。安倍嫌いの読売のナベツネなんかを筆頭に。
佐藤優が、「反知性主義という言葉を使って安倍晋三を追い込もう」(大意)と言っていたのを記憶しています。
「ポピュリズム」と「反知性主義」は、結びついていますが、まず認識すべきは、これらは必ずしも悪いものではない、ということですね。
ポピュリズムーー草の根保守や、反知性主義ーー反エリート主義は、アメリカ民主主義の重要な要素でした。
・・・ああ、このあたり、むかし原書を読んで、かなり勉強したんだけど、もう忘れちゃったなあ・・
アメリカ政治思想の中山俊宏さんなんかが、このあたりの専門でしたが、若くして亡くなったのは惜しかったねえ。
ともかく、日本では、「ポピュリズム」を、「衆愚主義」などとヒドい訳し方をして、最初から悪いもののように決めつけて言うマスコミ人や学者がいるから、要注意ということですね。
保守やリベラルの側からは、これらの濫用に対抗して、「反エスタブリッシュメント主義」を使ったほうがいい。
antiestablishmentism----「反体制主義」とも言う。
anti-establish populismとも言う。
「反体制」というと、左翼みたいだけど、もともとアメリカの建国の精神にあったものです。
Antidisestablishmentarianism--というのは、長い英単語の一つとして有名で、「エスタブリッシュメント」への「反対の反対」、「反・反体制」というような言葉。「反国教会禁止主義」「反国教廃止主義」などと訳されます。
これは、イギリスで国教会廃止を主張した古典リベラリズムに抵抗した19世紀ヨーロッパの思想です。そのため、イギリスではいまだに、イギリス国教会が、中途半端な形で残っています。
アメリカがイギリスから独立した第一の理由は、この「国教会禁止への反対」の反対、国家による「宗教」の押し付けの否定でした。つまり、国教会反対という意味での反体制主義、ジョン・ロックに代表される古典的リベラリズムの立場です。
この場合の「エスタブリッシュメント」「体制」とは、思想を押し付けてくる国家のことで、それを否定するのが、アメリカ憲法第一条の精神ですね。
アメリカ憲法修正第1条の最初の節は、
「Congress shall make no law respecting an establishment of religion(連邦議会は、国教の樹立を規定する法律を制定することはできない)」
というものだから、「エスタブリッシュメント条項」とも呼ばれます。
トランプや、今の日米の保守が目指しているのは、そういう意味での「反体制主義」で、左翼的イデオロギーから自由になって、古典的リベラリズムに戻ろう、という動きでもある。
極右的部分があるのは否定できないけど、ただの「右翼」とだけ見るべきではない、と思うんですね。
まあ、トランプみたいな人は、あんま理論武装はしないから、保守の人たちは、こうした概念を磨いておくべきだと思う。
古典的リベラリズムを擁護する点では、リベラルのわたしも同意なので、また勉強しなおしときます。
<参考>