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何者~本当の「がんばる」は、インターネットやSNS上のどこにも転がっていない~ #読書感想

就職活動を目前に控えた拓人は同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞樹も来ると知っていたからーーー・
瑞樹の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた五人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて・・・・・・。直木賞受賞作。

何者 内容紹介(裏表紙より)

感想

めちゃくちゃつらくなった作品だった。

読み進めている最中。

読み終わった後。

何度つらくなったかわからない。
このつらさは・・・かつて自分の就活時期にあった「心の中の黒い渦」に近い感情を思い出させられるような感情。

自己嫌悪に近いつらさがあった。

おもしろかったという表現があっているのかもわからないけど、確実に自分が自分自身に蓋をしていた部分と向き合わせてくれるきっかけがもらえた作品だった。

「時をかけるゆとり」を読んでから本作とであったわけなのですが、
確実に「朝井リョウさん」という人柄に惹かれた。


好き-たいてい、

最近どう?と聞いてくる人は、たいてい、相手の近況を聞きたいわけではなく。自分の近況を話したくてたまらない。ESを見せ覆うよ、と行ってきたあの子はきっと、誰かのESを参考にしたいのではない。自分の完璧なESを見せびらかしたくてたまらないのだ

p66より

ここの一文は共感が強すぎて吐きそうになった(良い意味で)

吐きそうになったのは、
私が社会人になって切り捨てた感情。

「もうこういう穿った見方を他者に向けたくない」
「そういう見方をしてしまう自分が好きじゃない」

いつしかそう思って、切り捨てた感情。
でも、自分自身かつて持っていたもの。その感情も含めて「自分」だったとき。

今の自分人を疑いたくない思考は、根底のこういう見え方をしていた自分を否定して自分自身を育てた結果なんだと思った。


好き-本当の「がんばる」は、インターネットやSNS上のどこにも転がっていない

瑞樹さんは言った。「がんばらなきゃ」と。それだけが真実だと、俺は思った。
もっともっとがんばれる、じゃない。そんな、何も形になっていない時点で、自分の努力だけアピールしている場合ではない。何のためにとか、誰のためにとか、そんなこと気にしている場合ではない。本当の「がんばる」は、「がんばる」は、インターネットやSNS上のどこにも転がっていない。すぐに止まってしまう各駅停車の中で、寒すぎる二月の強すぎる暖房の中で、ぽろんと落ちるものだ。

p138より

シンプルに好き。

瑞樹さんの生き方がとてもすき。

「本当にがんばっている時は周りの人は見てくれてる。」

そう昔、教えられて信じている。今でもそう思っている。
けど、なかなか難しい。

がんばってるのになかなか結果が出ない時。
がんばり方がわからなくたってきた時。

そんなときほど、「がんばってる」自分を認められたくてネットの海に発信したくなる。

でも、大切な「がんばってる」感情だからこそネットの海に流すのはもったい。限られた人。ほんとに外から見てる人が見てくれてる小さい海。
水槽みたいなコミュニティの中でぽろっと伝わる人にだけ伝わればいい場所で言葉に出せる人になりたいなと思った。

言葉を大切に扱えるということ

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