【1日1冊】心を動かすコンテンツの作り方/詩学(光文社古典新訳文庫)(著)アリストテレス
こんにちは。本日は、詩学(光文社古典新訳文庫)(著)アリストテレスを読みました。昨日読んだ編集思考で「編集思考を磨くための推薦書」として紹介されています。
まず、光文社古典新訳文庫の翻訳がとても読みやすくなっているおかげで、古典にもかかわらず、なんとか読むことができました。古典ものは最後まで読むだけで、かなりの忍耐力がいるので助かります。
本日の1枚まとめ
本書では、[ストーリー創作を中心とする]詩作術と、それを良い作品とするためにストーリーがどのように組み立てられるかということが書かれています。そして、「詩=コンテンツ」を要素分解し、人がポイントが説明されています。
悲劇の構成要素の優先順位
1. ストーリー:行為から生じる出来事
2. 性格(人物):行為者の質
3. 思考(台詞):言葉で何かを証明したり、意見の表明をする際に含まれるもの
4. 語法:韻律を伴った言葉の組み立て
5. 歌曲:音楽
6. 視覚効果:衣装や舞台装置のような装飾
ここでいうストーリーは、悲劇や詩というコンテンツ全体のなかの「ものがたりのつながり」という意味です。コンテンツにとって重要なものは、見ている人たちの「心を動かすこと」であり、それは、「「行為の成り行きの「逆転」と、登場人物同士などの「再認」」によって心を動かすことができるとあります。
このコンテンツの要素分解と、同時に人がどのような場合において、心を動かされるかの考察がとても詳細にかかれています。
特におもしろいと感じたポイントが、
良いストーリー(悲劇に特有の憐れみや怖れの感情が生じるの)は、「出来事が予想に反する展開」で「相互に因果関係をもって起こる」とあります。
下記に引用している例がわかりやすいが、まったくの偶然である事象で、本来は因果関係がないものに、つながりがあるように見せることに、怖れの感情が生まれます。これはをケース別、それぞれを比較して説明されると違いを認識することができますが、人は、直接の因果関係ないものにも、因果関係のつながりを当てはめてしまうからです。(この話は、ファスト&スロー 第6章 基準 驚き、因果関係 にもありますが、システム1が判断するからです)
このようにいう理由は、運良く偶然に起こった出来事においてですら、何らかの意図的な因果関係から生じたように見える場合、最も驚くべき出来事になると思われるからである。例えば、アルゴスにあったミテュスの彫像が、それを眺めていた殺害犯、つまりミテュスにとって死の原因となった人物の上に落下して[あたかも復讐のように]死に至らしめた場合がそうである(14)。このような出来事は、わけもなく起こったようには見えないのである。したがって必然的に、この種のストーリーは比較的優れていることになる。
アリストテレス. 詩学 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.956-962). Kindle 版.
この「怖れ」や「憐れみ」の感情を呼び起こす要素が、「逆転」「再認」「受難」という3つあるという説明が続くのですが、さらに、構成の細部にまで説明があります。
「怖れ」や「憐れみ」を組み立てるために適した人物設定と展開
・幸福から不幸への変転であること
・不幸の原因が悪徳ではなく、大きな失敗であること
・不幸になる人物は中間な人(優秀でも愚鈍でもない)、もしくは愚鈍よりは優秀
素晴らしいストーリーというのは、一部の人々が主張する二重の構成ではなく、むしろ一本の筋の構成でなくてはならない。しかも、第一に、一本の筋が不幸から幸福への変転ではなく、反対に幸福から不幸への変転であること、第二に、不幸の原因が悪徳ではなく、大きな失敗であること、第三に、不幸になる人物は、上に述べたような中間的な人物であるか、もしくは、劣った人物よりはむしろ優れた人物であるのが必然的だということになる。
アリストテレス. 詩学 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.1181-1185). Kindle 版.
この詩学というコンテンツ制作にあたって、要素を分解し、人物の設定までのような細かい細部まで言及している方法論として学びがあるのと、同時に、人がどういう感情を抱くのかという心理的なものまで考えるきっかけとして、すごく参考になる本だと思いました。
コンテンツ制作や、ストーリーの重要性を感じている人は、ぜひご一読ください。
本日読んだ本