鶏が芹を背負ってきた
「鴨が葱を背負ってくる」
いわゆる(カモネギ)とは、鴨鍋に欠かせない葱を鴨自身が背負って自ら食べられにやってくるというなんともシュールな状況を描いたことわざで、鴨が間抜け扱いされてる感満載。
「上手いようにことが重なり、好都合であること」「相手が望み通りのものを持って現れること」
お人好しが相手の利益になるものを持ってのこのこやってくるといった状況に対して用いられる。
江戸時代、鴨鍋は滋養にいいとされ、これを食べれば風邪もひかない、とも言われていたとか。
ただ、鴨肉にはくさみと味にもクセがあるため、それらを抑える薬味として葱が使われた。
「鴨が葱を背負ってきてくれれば、材料が揃ってすぐに調理を始められるから便利だよな~」
そのことから転じたと言う。
「運の強いやつのところへ、運の悪いやつが、同じく運の悪い友人を連れて麻雀をしにやってくると『運の悪いやつ』は『カモ』、連れられてやってきた『運の悪い友人』は『ネギ』、『運の強いやつ』は鴨鍋を美味しく頂くと言うのだ」と、麻雀をする友人から教えられたことがある。
また、カジノ好きの知人からは、嬉々としてやってきてはいつも大負けする客は「カモ」と呼ばれ、これは鴨がおとりにつられて捕獲されやすいことからきているとも聞いた。
あまりの言われように鴨が不憫になってくる。
反義語は、自分が働かなければ利益は得られないことを意味する「蒔かぬ種は生えぬ」のようだ。
英語で「カモネギ」をどのように訳せば英語圏の人たちはピンとくるのだろう?そもそもことわざになる程のお人好しは日本人特有なのか?
私はフランス料理に全く興味がなく、改まったお席に招かれて頂くぐらいの経験しかない。鴨肉には葱でなく、オレンジやいちじく、ベリー系の果実が添えられていたり、またはそれらをソースにしているものが圧倒的に多かったように思うが、西洋葱(ポロ葱、リーキ)を鴨肉に合わせるのも西洋でポピュラーなのかな。食した記憶がないなあ。
もし「鴨肉には葱」という食文化が根付いていなければ、当然「カモネギ」を英語にそのまま直訳しても、なんのことやら?になりそうだ。
学生時代、海外からのお客様を案内する務めを命じられた際、その任を共に受けた相棒が、そのお客様からなにかを褒められ、本人は謙遜するつもりだったのだろう。
「sesame seeds-grind!」彼女は満面の笑みで言ったがご想像通りその場に静けさだけを呼んだ。頭を過った言葉もあったが、その後の展開は彼女の対応力にお任せしようと口は挟まなかった。
鴨肉を食する習慣が私にはないので、鶏肉に旬の芹を背負ってきて頂いた。鶏肉に振り塩後しばらく置き、出てきた水分をキッチンペーパーで吸わせて一度軽くソテーしてから炊き含めるとくさみが取り除かれ、鶏肉の旨みが際立つ。温燗にしようかな。