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ASDでうつ病の人間が人生で初めてサカナクションのライブに行ったらすごく感動した話
※精神疾患とライブのセトリのネタバレ等含みます。苦手な方は申し訳ございません※
初めに
私はASD,うつ,他パニック発作や対人恐怖症の酷さから、音楽が好きな割にはライブというものに約30年、人生で一度も行けた事がありませんでした。
それが今年初めてライブに思い切って行ってきました。
以下、きっかけや感想、効能(変化)、心得を書いていきます。
きっかけと決意に至った動機
きっかけ
きっかけは以前、知人からの私の人混みの苦手さを知った上での一言でした。
「でもサカナクションのライブは絶対行ったほうが良いよ!スタンド席なら座ってゆったり見れるし、音も良いしとにかく最高だから!」
それなら私でも参加出来るかも、、と淡い希望を抱き続けていたところにサカナクションが復活してくださったので、すぐにチケットを申し込みました。
動機
でも、私は知人の一言に感化されただけで、ライブに参戦できるほど素直な人間でもありません。その漬物石の様に腰の重い私が、ライブ参戦を決意した理由は下記の理由です。
人間いつ死ぬかもどうなるかも分からない。
今の私には聴覚過敏はあれど重度難聴はありませんし、ベッドから起き上がれないほど重度の脊髄損傷などもありません。でもこれまでに数々の精神・身体疾患に罹患し、それらを抱えながら生きているので、半年後にどうなっているかは分かりません。
それに、もし10年後にうつが寛解しても、その時には踊れる体力はないかもしれない。
そもそも10年後生きているかも分からない。
更にwowakaさんという方の始めた「ヒトリエ」というバンドを2020年頃から好きになったのですが、残念ながらその僅か1年前にwowakaさんはご逝去されていました。
私が生きていても、大変悲しいことにミュージシャンご本人が他界されているケースもあります。
その悲しみも合わせて考えた時、人間いつ誰がどうなるか分からないのだから、行ける内、体験できる内が華という結論になり、多少の無理をしても、清水寺の舞台から飛び降りる様な覚悟で行くことにしました。
ライブ当日(※セトリなどネタバレ含みます※)
セットリスト
1.Ame(B)
2.陽炎
3.アイデンティティ
4.ルーキー
5. Aoi
6.プラトー
7.ユリイカ
8.流線
9.ナイロンの糸
10.ネプトゥーヌス
11.ボイル
12.ホーリーダンス
13.『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』Remix
14.ネイティブダンサー Remix
15.ミュージック
16.ショック!
17.モス
18.新宝島
19.忘れられないの
アンコール
20.夜の踊り子
21.白波トップウォーター
22.シャンディガフ
感想
この日のために体調管理に励み、とうとう5/3(金)マリンメッセ福岡でのライブが開幕しました。
一言でいうと最高でした。
あまりに予想外の事が起こるとパニック状態になる私は、予めセトリを確認しプレイリストを組んで、“出来るだけ予想通り”になるように準備”をしていました。
それでも実際のライブは私の想像を遥かに上回り、その上でパニックの揮発剤にもならず、ただひたすら高揚感と感動の連続でした。
SEの落ち着く仄暗い雨の音、そこから始める「Ame(B)」、続いて流れるような滑らかさでダンサンブルな曲が連続し、それに合わせた華麗なライティングの数々。
特に、必要なところではライティングを消滅させる辺りが、サカナクションの“間“を大事にする、現れては消え消えては現れるように聞こえる音楽を体現しているように思え、気がつけば私は席から立って隣の人に合わせて手を降っていました。
以前の私では考えられない事でした。
普通の人の様に手を鳴らし、普通の人の様に笑い、生の音楽を体感する。
大袈裟ですが、少し自分の中での自信のマイノリティ性への酷い劣等感が一瞬、消えた瞬間でした。
「私も周りの人、普通の人と同じ様に“場“を楽しめるのだ。」
この驚きは、サカナクションのライブで得られた貴重な感情の一つです。
そして大好きな「ユリイカ」からの「流線」などのダウナー系の曲が続きます。
前半の立ち、飛び跳ね、拍手をしたアップテンポナンバー曲たちの火照りが程よく冷めていきます。
生で山口一郎さんの丁寧に絞り出すような「流線」のメロディーが聴けてとても嬉しかったです。
そして次は念願の「ボイル」。
この曲は個人的にとてもとても好きで、何度聴いては憂鬱な朝の支度を励まされたか分からない程、何度も聴きました。
その歌を生で聴ける幸せ。
涙が出そうでした。
それから「ホーリーダンス」でまたアップを始め「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」のRemixから再びフロアが盛り上がり出し、代表曲「ミュージック」。
この曲の歌詞「消えた」部分のライティングが本当に素晴らしく、“今まさに生で音楽を体感する“事を一番強く感じられた曲かもしれません。
歌詞の一つ一つにも個人的に噛みしめるものがあり、ライブが終わった今でも何度も聴き返している一曲です。
それから「ショック」「モス」など次々とアップテンポの曲が、あっという間に踊りと共に流れていき、アンコールへ。
ライブにはペンライトなどがなかったため、観客の方々がスマホのライトを点け振っていたのですが、それが夜の対岸に連なる光の様で自身もスマホを振りながらとても綺麗に感じたことを覚えています。
サカナクションの曲には夜の曲が多いですが、長い夜も曲がりくねった道を長く進むことになっても、どこかで光に出会え、夜を抜け朝を迎えられるのかもしれない。そんな事もふと思いました。
アンコールの最後は「シャンディガフ」。
私は、コロナ禍からサカナクションを聴き始めたのでファンを名乗るには歴が浅いのですが、休止を経て、遂に復活へと足を踏み出した山口さんの心情が丁寧に描かれている様な歌詞としっとりと聴かせるフォーク調の様な曲調が胸に染みました。
ライブの最後、復活の始点、どちらも意味する最高の最終曲だと思いました。
今回の人生初のライブは、本当に本当に参加して良かったと思う素敵なライブでした。
改めて日常と非日常、どちらにも寄り添い連れて行ってくれる音楽、その音楽を作り演奏してくれるサカナクションというバンドに感謝をしました。
ライブ以降の変化
こんな私でもライブに行けた
その事実で、少し自信がつきました。
また、ライブにまた行きたいと思いました。
私には残念ながら心身双方の疾患が色々あります。
それらについて、家族の理解も支援も得られませんでした。
そのため、薄給の障害者雇用の給与のみで爪に火を灯す様な生活を送り、毎日這うように出社していました。
私の勤務先は、同じ障害者雇用でもご家族の理解に恵まれた方が多かったので、彼らの家族旅行のお話やご家族お手製のお弁当を見ては内心絶望していました。
うつ病を患ってからは更に生きづらさが増しました。
動けない、食べられない、頭が働かない、睡眠も充分に取れない、希死念慮に支配される、、。
毎日病気の症状に負けながら半死半生で過ごしていました。
ライブ参加決意までの私を生かしていたものは、確実に死ねる方法がなく死の準備をする気力もないという理由だけでした。
希望なんて到底持てませんでした。
それが今回ライブに行き、日常を離れ、自分の課題を1つ少しだけ克服したことで、まだ人生を続けていきたいと思えるようになりました。
また、サカナクションのライブに行きたい。
今度は「夜の東側」が聴けたら嬉しい。
「さよならはエモーション」や「フレンドリー」も聴きたい。
他にも好きなご存命のミュージシャンのライブに行きたい。
いつかはCoachellaにも音楽仲間と参加してみたい。
そんな風に思えたのは、うつ病を患って以降、初めての事でした。
そんな風に思わせてくれた素晴しいライブを魅せてくれたサカナクションの方々、私にライブを勧めてくれた知人、初ライブでの不安を応援してくれた友人、音楽通の先輩達に改めてとても感謝しています。
人間いつ何がどうなるか分からないからこそ、思わぬ僥倖(ぎょうこう)に預かることもある。
今回のライブではその事を深く実感しました。
まだまだ生きづらさは酷く、1日中動けない日も沢山ありますが、希望を持って、またライブに行けるよう日々を繋いでいきたいと思います。
長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
余談
誰と行ったか
ライブはぼっちで行きました。
周囲と上手く繋がれない私の特性、人といると気を遣ってしまう私の症状で、誰かに迷惑を掛けることも音楽に集中できないことも避けるには、私の場合はぼっち参戦しかありませんでした。
幸いライブは多種多様な方々が参加していて、お一人参加の方も沢山いたので、ぼっちでも服がダサくても全然目立ちませんでした。
ライブが行われたマリンメッセ福岡は、対岸にあるベイサイドプレイス博多の夜景がとても綺麗です。
夜景を眺めるだけに、夜の散歩をするのも良いと思いました。
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サカナクションLIVE環境等で素晴らしいと思ったところ
1.保育チケット、身体障害チケットなど多様なファンへの対応
まだまだ手が離せない年頃のお子様を抱えていてもライブに行きたい、育児をするまでは立派な魚民(サカナクションファン)だった。
また、身体に障害がありアリーナ席には行けないけれど、サカナクションの音楽は好き。
そうした方々も沢山いらっしゃると思います。
そうした方々への配慮が行き届いたチケット販売が素敵でした。
もちろん、障害チケットは隣に介助者席確保の上でのセット販売でした。
また、これは一般的なものなのかライブ経験が一度だけの私には分かりかねますが、会場でイヤーマフの貸出もありました。
2.音響へのこだわり
ライブやコンサートに行って後方席で音割れを経験された方は、沢山いらっしゃるかと思います。
サカナクションの場合、今回のツアーでは通常のステージだけでなく均等間隔にスタジアム最後列までスピーカーが配置されていて、一切の音割れを感じませんでした。
ライブにあたり備えたりしておいたりして良かったこと
1.前日と翌日のリラックスタイム
これは私のASDの慣れない事への疲れやすさ、うつ病の疲れやすさから設けておいて正解でした。ライブはとても楽しくても、相応に消耗します。そのため前日と翌日は予定を入れず、ゆっくり休むと疲れがよく取れました。
2.アリーナ席かスタンド席なら、体調に自信がない場合はスタンド席
アリーナ席はステージに近い分、座る席がありません。正に“ライブ“といった感じです。反面スタンド席はライブ感はアリーナに比べもちろん劣りますが、疲れてきたら座れます。
サカナクションのライブについては、後方にも均等にスピーカーが設置されているので、後方スタンド席でも音割れなく充分に楽しめます。
3.グッズの早めの購入
私はライブ経験がないこともあり、こんなにグッズがすぐになくなるものだとは知りませんでした。幸い今回は整理券番号の発行でグッズも買えましたが、今後はもっと早く購入しようと思います。
3.気温対策
5月でもお昼は既に夏の日差し、けれどライブ後は10数℃と肌寒く、しかしライブ会場は熱狂で暑かったです。半袖の服に一枚羽織るもの、冷たい飲み物など、念入りに気温対策をした方がより楽しめると思いました。
4.頓服とお水
私の場合はパニック発作や視覚・聴覚過敏があるので、ライブ中に具合が悪くなる可能性がありました。そのため会場内に頓服とお水を持ち込んでおいた方が、安心して観られました。
5.さっぱりした夕食
ライブでは、やはりどれだけ楽しくても消耗しました。予めホテルや自宅の冷蔵庫にさっぱり目の夕食を入れておくと、体調回復に良かったです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
疾患などをお持ちの方で、今後はじめてライブやコンサートに行く方は症状によって備えや必要品も異なるとは思いますが、私の経験談がお役に立ちますと幸いです。