マガジンのカバー画像

『僕の同居人』(ノンフィクション)

12
コロナの影響でバングラデシュから日本に一時帰国した友人との同居生活の日常。
運営しているクリエイター

#同居

ペスカトーレ〜僕の同居人#8〜

奴との同居生活が始まってから、 (ほぼ)毎日の散歩が定着化しつつある。 こんなに歩いているにも関わらず不思議と体重は変わらない。 そんな中、僕らの深夜の散歩に新たな目標ができた。 ライトアップされた東京タワーを拝もうというものだ。 毎度、東京タワーに到着した頃には僅差で消灯されてしまう。 単純に早く家を出ればいいだけの話なのだが、 依然、目標は達成されずにいる。 「ペスカトーレは食べられる?」 「なにそれ?」 とある日の夜。 珍しく僕らは晩飯を家で作ろう

シェアハウス、シェアバイク、シェアパンツ〜僕の同居人#10〜

奴との同居生活が始まって以来、 深夜の散歩は断続的に続いている。 この日は、 広尾、恵比寿、中目黒と、 日比谷線を沿うように進み、 駒沢通りを蛇崩の方へひたすら歩いた。 1時間半程歩いたところで、 疲労と飽きがやってきた。 「そろそろ帰ろうか」 こんな感じで僕らはいつも帰路に就くのだが。    しばしば遠くまで歩き過ぎてしまい、 帰りがしんどくなってしまう。 帰りのことも考慮しながら調整して歩くということが下手くそな僕らは、 「どうする?今日はタクシーで帰る?

真夏のピークが去った〜僕の同居人#11〜

同居生活を始めて1ヶ月半が経ち、 東京は本格的な夏に突入した。 本当は海や山にでも行って夏を満喫したいところだが如何せん休みがない。 キンキンに冷えたビールを飲みに行こうにも、同居人は下戸。 結局、僕らはカラオケか喫茶店に入る。 年に一度くらいしか帰国しない奴とのカラオケではもはや恒例になっているのだが、 寿司屋の大将の如く、 旬な曲を何曲か僕が歌い、 「今これが流行ってるぞ!」 と、得意げに奴に薦めるのだ。 大抵、奴は知っている。 なんなら奴の方が詳しかっ

夕暮れ〜僕の同居人#12〜

(これは8月中旬の話)     「最後にやり残したことをやろう」 仕事終わりに僕らは話し合った。 別に奴が死ぬわけではない。 余命はわずかだが。 (#7に詳細) ただ、本当に奴が死んだと思ったことがあった。 考えたら常に奴は死と隣り合わせの日々を送ってきたかもしれない。 数年前にバングラデシュのとある街で爆破テロが起きた。 その時テレビを見ていた僕に、 20代男性で同じ地元の日本人がテロに巻き込まれて亡くなった という訃報が速報で流れこんだ。 即座に奴の顔が