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良いところで見切りをつけて「夢破れても案外人生なんとかなるよ」って姿を見せるのも、あんたらアーティストの仕事だろうが。



昔は消えた芸能人はきちんと消えてたんですよね。


あの人は今、みたいなのに取り上げられるまではちゃんと表舞台から完全にいなくなってた。

それだって取り上げられるのは他業でそれなりに成功していて、人前に出しても大丈夫なレベルの人だけ。
田舎で従業員50名束ねて社長やってますとか、レストランのオーナーになってますとか、もう一回TVに出しても恥ずかしくないような人だけです。

その他多数の、というかほとんどすべての消えた人たちが、そのあとどうなったかなんて本来知る由もなかったから、人々は勝手に「田舎に帰ってのんびり会社員でもやりながらごくごく普通の家庭を築いているのだろう」とか夢を見ることができていたんですよ。

本当かどうかはどうかはどうでもいいことです。


もしそうじゃなくても、全国のお茶の間の皆さんは、都心から電車で30分もかけて埼玉県のキャパ50人の小劇場やライブハウスになんて来ませんから(やってることも知らないですし)アマチュアに混じって、その程度の客席すらもう全然埋めることができないことや、彼らが若い同業者へ向ける劣等と優越の入り混じった卑屈な表情などを知ることもありません。


消えた芸能人達は、群れを離れた象のように、汚い最期を見せずに人々の視界と記憶から消えてくれていたんです。

こちらから暴こうとしない限りは。





それが今は第一線を退いた後もだらだらとSNSやyoutubeとかで未練がましくいつまでも発信しちゃって。みっともない。
求められてもないのに見苦しい活動を続けて、売れなくなったあとの悲惨さが可視化されちゃってキツイんですよね。


チケット売ってた系の人はまだまし。広告収入型の稼ぎ方しかしてこなかった人は特にきついですね。
能力が生み出す何かではなくただただ自分へのビューを金に換えてた事のツケ。見た目とか、しゃべりとか、その程度の何か。代替可能な何か。


超メジャーだった人でも、飲食店やファッションブランド立ち上げて、結局ズルズルと負けが込んで、起死回生、一発逆転を狙って騒ぎを起こしたり炎上させてみたり泣いてみたり笑ってみたりカモにされてたり、その転落すらも誰かのメシの種にされてたり。

下手に全盛期の盛り上がりとかを知ってると余計に、もう誰がどう見てもそこから盛り返すのは無理だろって。

これからどうすんだろう。

内臓をボトボトこぼしながら、アドレナリンだけで逃げ回ってる鹿。もうすぐ死ぬ。

可哀想に、もう助からない。

まあ、あの人たちほどじゃなくても、引き際を失ったセミプロみたいな人たちも世の中にたくさんいるんですよ。

専業で生きていくには足りないけれど、プラマイゼロかちょっと稼げちゃってるレベルが一番キツイ。だって辞め時が無い。きっかけがない。

あんた、その年で夜勤バイト明けに公園でストロングゼロ空けてる姿をTwitterにアップとかやめてくれよって。

中年フリーターが”好きなことで食っていく”とか言って実質持ち出しで活動してたらそれ、好きなことに喰われてる姿じゃないですか。

かつて輝いていた青年の瞳が、酒と煙草でどす黒く濁る中年の瞳になってる。

オッサンになってる。ババアになってる。
客観的に見てどう思うよ。客が見るから客観的って言うんだろうけど、あんた客からどう見えてると思う。
それがわからないから今そんなところに居るんだよ。




回帰不能点を過ぎてしまった事への後悔に苛まれながらただただ消耗していく日々。大スターでも平穏な家庭人でもどちらでもない、何者でもない空虚な存在になってしまった苦悩を一杯350円か2500円で二時間飲み放題の薄い発泡酒とともに聞かされるのきついって。

大事な20代の真ん中を、それ以外の事を何もやらずに生きてきたんだろ。不器用すぎる。

旅行に行く時だって予備の電車や替わりの道探しておくのに、なんで一番大事な人生の旅をバックアップ案なしでここまで来ちゃったんだよ。

聞いてるこっちがサバイバーズギルトになりますよ。まったく。

あんたたちもあいつらと同じ。


みんなちゃんと消えないからダメなんですよ。





そういう世界に片足でも踏み込んだ人たちは、いいところできちんと見切りをつけて

「夢敗れたけれど、再出発した人生でそれなりにうまくやれてます」

という姿を見せないとダメなんです。

その”それなりにうまく”にだってとんでもない努力とエネルギーがいるんだから。早めに心の準備させないとダメです。
エンディングノート書いとけ。

29までに芽が出なかったら田舎に帰るみたいな話と同じで、たとえ芽が出てもそれを育てきれなかった人はやっぱり期限決めて退場するべきなんですよ。

挑戦しても失敗しても大丈夫だよって若い子に証明してあげないと。

売れても売れなくても行き着く先があんたみたいな地獄生活だって思ったら怖くて誰も芸人やミュージシャン、アスリートやアーティスト目指さなくなっちゃうよ。


「そんな事考えずに突き進む人じゃないと成功しない」


そういう意見もわかるし、言葉としては美しいけれども、ちょっと前に司法試験に落ち続けて自暴自棄になって冬の富士山で自殺同然の滑落事故を起こした方が居たでしょう。

あの人、40歳っていってたのに47歳だったとか。
とっくに人生の引き返し不能地点を過ぎてたって事に、これ以上進めなくなったところで突き付けられたらもう死ぬしかないじゃない。

そうなる前に、引き返し方と引き返した後の成功体験をもっと広く伝える必要があるんだよ。
それが、夢破れたとはいえその世界に一歩でも足を踏み入れた連中の務めなんだよ。

あんた達が発信すべきなのは、40にもなって20代みたいにバカ遊びを続ける姿じゃなくて、夢破れた大人がどうやってリアルに帰ってくるかのノウハウですよ。

さっさと「あの人は今」を自分でプロデュースするんだよ。


それができるのは、あんた達だけなんだから。
負け組には、負け組にしか見えない世界があるでしょう。



本当の負け方を知ってるのは、あんた達だけなんだからさ。

人生いつ始めても遅いことはない。

人間いつだってやり直しがきく。

こういう夢みたいなこと言ってくる奴はだいたい搾取する側だから無視したほうがいいよ。

やり直しの人生は、大成功じゃなくてもいいから、安全にいけ。




おしまい




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