リングがその他のJホラー映画とは明確に区別されるべき圧倒的名作であることは揺るぎない。問題はその次。
リング/らせん/2/バースデイがJホラーの地位を高めてブームが起きたのはいいんですけど、実はJホラーって圧倒的に駄作のほうが多いので、基本もうそれより上が無いの辛いんですよね。
もう何十年も渇望の人生ですよ。レンタル店で棚から10本借りたら10本ハズレとかザラ。残穢とかは良かったですけどね。そういえばあれも竹内結子でしたね。
元AKBとか微妙なグラドルを血だらけ水だらけにしてキャーキャー言わせてればいいみたいな雑な映画ばっかり。呪いやトリックの設定がガバすぎたり、怪異が影やいかにもゾンビ的な見た目で具現化させられたり、暗めの画面でジャンプスケア。目の前で大きな音出されたらそりゃ犬だってびっくりしますよ。
あとはモキュメンタリ系か。ブレアウィッチごっこは楽しいですよね。終わり方が雑なところまでパクらなくていいんで。
そんなVシネレベルのBムービーの分際で
「撮影中に謎の機材トラブル!」
「録音された不思議な声とは!?」
「写り込んだ謎の影!」
とか箔付けしようとされても余計に冷めるだけなんでむしろやめて欲しい。幽霊だって関わる映画選ぶと思います。
そのあたりは怪獣映画の落日に似ているような気がしますよね。結局はモノマネか劣化コピーしか作れず、全く違う事をやろうとして滑って外すうちに金が集まらなくなっていくループみたいな。
着信アリはそれなりにヒットしましたがコンセプトからして恥じらいもなくパクリムービーでしたし、なんというか全体的にパワフルなパニックアトラクションって感じでJホラーの繊細な機微みたいなのは無かったです。
「仄暗い水の底から」が原作準拠の陰鬱な空気を湛えていたのとは対称的。
まあ原作者(とされる人)があのお方だから仕方ないとは思いますし、商売としては正解だったのでしょう。
続編やスピンオフが豪快に滑っていくのはある意味正統なJホラーの流儀で笑いました。アジア展開とか堀北真希とか出てもだめかーみたいな。厳しいですね。
続編やリメイクが商業的に滑るのはホラーファンやオタクの眼が厳しいというより普通の人はそうそう何回も怖い思いしたくないんだと思います。
一本みたら四五年はもういいですよね。
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リアタイ体験って大事です。
貞子っていうモンスターが出てくる昔のホラーの名作らしいっていう知識で見るのと、何も知らない初見とではやはり。
思い出補正とかではないと思います。
テレビから這い出てくるところとか初見の恐怖ヤバすぎでしたよ。沢山の人々がギャグやネタとして茶化して弄っておもちゃにしまくったのは、メディアや電子の壁を超えて現実に浸食してくるという恐怖が現代の人間には克服不可能だからです。
いままでのあのパターンはせいぜい殺人犯が監視カメラを壊すとか入口をこじ開けようとするのが映ってるとかその程度。
まだ時間的猶予があったり、対処法を考えたりすることができる。でも目の前で突然実体化されたらもうね。しかも和室という圧倒的生活圏内。
そのワームホールが皆さんの自宅に最低でも1台以上かならずあるという事実はあまりにも重い。
あのたくさんのネタ化、パロディ化、ミーム化は祭りにすることで祟りを鎮めようとする風習みたいな文化を見たような気がしました。
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リングの良いところ
・単純に映画として面白い。起承転結。キャストも豪華
・離婚した元夫婦が子供の為という共通の目的で頑張る王道展開
・昭和/民俗/離島/クトゥルみ(※)
・終盤まで怪異が実体化しない良さ
・圧倒的後味の悪さx2回END
・ゼロじゃないけどジャンスケがほぼない(疲れない)
※改めて見て、父親は海から来たみたいな設定あったんすね。
海とずっと話してたとか人間の言葉じゃなかったとか。クトゥルーみある。やはり根源的な恐怖に訴えかけてくるものがある。海は怖い。
らせんの話すると長くなるのでこの辺でやめます。
でもまあ、結局は元(原作)が良いってのが一番デカイかもしれません。唐突なSF化は衝撃でしたが、にもかかわらず他のSF作家に一歩も譲らない圧倒的構築でしたし、仄暗い…みたいな短編でも基本クオリティ高くて、正直天才だと思いました。
良いシェフと良い道具があっても、良い材料がないと良い料理はできないんですよね。
なんか、いいホラーないですかね。
おしまい。