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🎩BLワールド備忘録🕍ノベライズ編📚️『深呼吸』🍁

『深呼吸』

木原音瀬    ビブレ出版

谷地健司は43歳にしてリストラされ、今は弁当屋でアルバイトしている。特に自分が無能だと思ったことはなかったが、海外からヘッドハンティングでやって来た年下の上司は解雇通達を渡すのに情けも同情もなく淡々とその事実のみを述べた。能力第一主義の会社だから年下の上司がいるのは仕方ないが、せめてこんな時ぐらいは社交辞令でも労いの出来る人物を選んで欲しかった。漸く弁当屋での仕事にも慣れ、昼休みに公園で紅葉いろづく木々を眺めながら弁当を食べることに充実感を見いだした頃、思いもよらない客がやって来た。「お元気そうで何よりです」それが誰なのか認識したとたん頬がこわばるのがわかった。榛野佳久。機械のように自分を切り捨てた張本人だった…‼️


「谷地さんて、一人だけ時間の流れが違う気がするんです」女子社員からの評判に榛野は少し納得できた。谷地に対する苛立ちと違和感。時間の流れが違う。空気が違う。自分の中にあるものと谷地の中にあるものに差がある。「お前、そいつに気があるんじゃないのか?」坂口の言葉に耳を疑った。「基本、気にくわない奴は視界に入れないじゃないか、本当は意識してるんじゃないのか?」その言葉がずっと引っかかっていた。その後も谷地の行動が目について仕方なかった。最初は仕事ぶりだけだったのに、服装からネクタイ、擦りきれた靴などが気にくわない。ならば見なければ良いのに気付くと探している自分に苛立った。いっそ目の前から消えればと思った。人事整理の案件が来た時、リストラ候補に迷わず谷地を入れた。独身でしがらみのない谷地はすんなりと決まり、榛野は解雇通達を伝えた。さすがに疎い谷地も通達を聞いた時は唖然とした様子だったが榛野にはそれを労う気もなかった。これで、ストレスともお別れと清々したくらいだった。送別会の帰り、公園で小さな捨て猫を見つけ「放っておけ」と言う同僚を横目にわざわざコンビニまでエサを買いにいく谷地を見た。「同情ですか?」と聞いた榛野に「明日をも知れない小さな子猫が、今お腹いっぱいになることが幸せならそれで良いじゃないですか。それが同情であっても」と言う谷地になぜかこの人に怒られたくないと思った。優しくして欲しい。猫では無くて自分だけを見て欲しいと。母親でもないのに。その日から、自分の中で渦巻きはじめた感情をもて余した。社内ではもう見ることが出来ないと思うと無性に会いたくなった。こんなはずはないと否定しても日を追うごとに酷くなり、夢にまで見た。雨の日、榛野は谷地の働いている弁当屋に来てしまった…。


相手はその場の欲望を満たすだけと割りきってきた。決まった相手は煩わしいだけだ。恋なんて必要ない。常に合理的に無駄のない日々を自負していたのに、愚直でノンケの谷地にハマってしまった榛野。果てしなく平行線どころか、逆向いちゃってるアラフォー男の壁をどうやって突破するのか⁉️

まずは自分の気持ちを素直に認めなくちゃなんだけど、超エリート街道まっしぐらだった榛野には、なかなかハードルは高い😃

でも、谷地さんは来るもの拒めないタイプっぽいから、オシテオシテ押しまくれ~❤️捨て猫よろしくなついちゃえ~❤️

と、影ながら応援してしまうおはなし✨

水と油のふたりがどんなふうに乳化されるのかお楽しみです✨


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