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小説「ふたりだけの家」

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電子書籍「川べりからふたりは」の続編です。全13話(予定)。この作品単体でもお読みいただけます。
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2020年12月の記事一覧

小説「ふたりだけの家」8(全13話)

 やべ、寝ちまった。  私は突っ伏していたテーブルから、はっと顔を上げた。固まった首筋を…

小説「ふたりだけの家」7(全13話)

「えいえんなーのーかー、ほーんとーかー。ときのながれは、つづーくのかー」  室内用車いす…

小説「ふたりだけの家」6(全13話)

「それじゃ、少しお体の方、診させていただきましょうかね」  坂本医師は電子カルテの入力を…

小説「ふたりだけの家」5(全13話)

 翌朝、私が目を覚まして寝間から這い出ると、奈美はすでに起きていた。着替えも済ませ、茶の…

小説「ふたりだけの家」4(全13話)

「関村涼さん」  名が呼ばれ、私は目元を覆っていた手をはずした。先ほどとは別の看護師が受…

小説「ふたりだけの家」3(全13話)

 ……奈美と出会うまで、私は孤独だった。  そのことをみずからに強いて生きていた。  こう…

小説「ふたりだけの家」2(全13話)

「……いやあ、可愛い」  ピンクのベビー服を着た若葉ちゃんを抱きながら、奈美は小さく歓声を上げた。若葉ちゃんは奈美の腕の中で、ぷっくりした頬を緩めて笑っていた。 「ああ、よかった。嫌われなかったみたい」  奈美がほっとしたように言うと、若葉ちゃんの母親の響子さんが応じた。 「だから言ったじゃん。奈美なら絶対大丈夫だって」  奈美の専門学校時代の友人である響子さんが訪ねてきたのは、三月はじめのことだった。若葉ちゃんは響子さんのふたり目の娘さんだ。長女である四歳の青葉ちゃんはこの

小説「ふたりだけの家」1(全13話)

 ここ、小児科だっけ。  受付を終え、身を乗せている車いすを回れ右させて病院の待合室を眺…

小説「ふたりだけの家」 まえがき

昨年、noteをはじめてまもなく、「川べりからふたりは」という作品を発表させていただきました…