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腸内細菌と体内時計:ストレスを左右する意外な関係
腸内細菌が脳や体内時計にどのように影響を与えているのかをご存知ですか?
近年注目を集める「腸–脳軸連関」という仕組みは、私たちのストレス応答にまで深く関わっている可能性があります。
今回紹介する研究では、腸内細菌が体内時計(概日リズム)を通じてストレスへの対応能力を調節するという、興味深いメカニズムが明らかにされました。
私たちの体内時計は、脳の「視交叉上核(SCN)」という部分が中心となって管理しています。
この時計はストレスに対する体の反応を調節する「視床下部–下垂体–副腎(HPA)軸」と密接に連携しています。
この研究では、腸内細菌がHPA軸のリズムをどのように調整し、時間帯によって異なるストレス応答を生み出していることをを解明しました。
Gut microbiota regulates stress responsivity via the circadian system
https://www.cell.com/cell-metabolism/fulltext/S1550-4131(24)00399-1
研究の注目ポイント
腸内細菌がストレスホルモンのリズムをコントロール
腸内細菌が減ると(抗生物質で腸内環境を変える場合など)、ストレスホルモンであるコルチコステロンのリズムが乱れることが分かりました。
通常、コルチコステロンは睡眠と覚醒が切り替わるタイミングで増えるのですが、腸内細菌が減るとピークが夜にシフトしてしまいました。
腸内細菌が脳内活動を左右する
腸内細菌のリズムが乱れると、脳内の「海馬」や「扁桃体」というストレスに関わる部分の働きにも影響が出ることが分かりました。
特に、ストレス応答を支える遺伝子の働きが失われるケースが確認されました。
時間帯によるストレス応答の変化
腸内細菌が少ないマウスでは、日中(体内時計が活動のピークを迎える時間帯)にストレスホルモンが増えず、ストレスに対する反応が鈍くなりました。
一方で、夜間(体内時計が活動の低い時間帯)では通常通り反応することが確認されました。
L. reuteri:特定の腸内細菌がストレス応答をサポート
プロバイオティクスとして知られるLimosilactobacillus reuteri(旧称Lactobacillus reuteri)という細菌が、ストレスホルモンのリズムを直接調節している可能性が示されました。
腸内細菌とストレス:詳しいメカニズム
腸内細菌の日周リズムとホルモンの関係
腸内細菌は1日の中で活動のリズムを持っていますが、抗生物質で腸内環境を変えると、このリズムが消えてしまいました。
脳のSCN(視交叉上核)で働く時計遺伝子(例:Bmal1、Clock)の活動が、腸内細菌の減少により乱れることが確認されました。
ストレス応答と行動の変化
腸内細菌が減ったマウスは、他のマウスと触れ合う社会的行動のテストで、ストレスによる行動の変化が見られませんでした。
ストレスに対する体の反応が鈍くなることで、行動面での変化も抑えられました。
L. reuteriの特別な役割
L. reuteriを無菌のマウスに移植したところ、移植された時間帯(昼または夜)によってストレスホルモンのリズムが異なることが分かりました。
この細菌は、体内の迷走神経を介して脳に信号を送り、ストレス応答や社会的行動を調節している可能性があります。
私たちの生活にどう役立つ?
この研究は、腸内細菌が体内時計を通じてストレスへの対応を調節する仕組みを明らかにしました。
特に、L. reuteriのような特定の腸内細菌が重要な役割を果たしていることが分かりました。
ストレス関連疾患への新しいアプローチ
ストレスによる不調(例:不安障害やうつ病など)は、腸内細菌を改善することで新たな治療法として開発できる可能性があります。
特に、ストレスホルモンのリズムを整えることは、心身の健康に大きな影響を与えると考えられます。
プロバイオティクスのさらなる可能性
プロバイオティクスを時間帯に応じて投与することで、ストレス軽減効果を最大化できる可能性があります。
日常生活への影響
食生活や腸内環境を整えることで、ストレスに強い体を作る具体的なアドバイスが可能です。
また、腸内環境がどのように時間帯と関係しているかを意識することで、より効果的な健康管理が期待できます。
このように、腸内細菌と体内時計の関係を深く理解することで、ストレス関連疾患の治療や予防だけでなく、日常生活における健康増進にも応用できる可能性を本研究を示唆してくれています。
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