型抜きの痕
半袖から伸びた、日焼けした腕の先、きみは
ミディアムレアの指で、手折った桜を差し出
す。代わりに渡した五百円玉が歪みそうなく
らい熱を持った夏の日。
好きも契約関係なんだからさ。
ビニール傘のみたいな中手骨を感じる。簡単
に折れてしまいそうになるのに、恋人つなぎ
なんて名前をつけたのは誰なんだろう。きっ
とぼくらみたいな、桜が咲くときの爆発で一
部分が欠けた人たちだったんだろう。
暗い部屋で、白い吐息が、水飴のように粘り
強く、未練ある此の世にしがみつくように残
り、きえた。
半袖から伸びた、日焼けした腕の先、きみは
ミディアムレアの指で、手折った桜を差し出
す。代わりに渡した五百円玉が歪みそうなく
らい熱を持った夏の日。
好きも契約関係なんだからさ。
ビニール傘のみたいな中手骨を感じる。簡単
に折れてしまいそうになるのに、恋人つなぎ
なんて名前をつけたのは誰なんだろう。きっ
とぼくらみたいな、桜が咲くときの爆発で一
部分が欠けた人たちだったんだろう。
暗い部屋で、白い吐息が、水飴のように粘り
強く、未練ある此の世にしがみつくように残
り、きえた。