風と石

世界中をふきあるく風が
わたしの顔と出くわすのは奇跡だろうか?
エアコンの統制下にある部屋の
窓を開けられるわずかな時期
春は役目が終わったと思い、夏が
まだ動きださなくていいと思っている隙間の時間
目を盗んで深夜の高速を走る
わたしが助手席に座って、
言葉を空気に乗せて、運ばれるのを待つ、
かすかな会話
 
硬くて軽くて当たると痛い
音程の言葉で、
思考が動かなくなったり、喉が詰まって
言葉が絡まったり、鼓動が止まったように
凍るという経験を、嫌という程してきたのに、
自分からその音程が出ることがある
だから声帯を捨てる
ことがやさしさだと思っていた
でも、月のクレーターのように欠けた
虹は美しいから、
わたしがブリリアントカットすることにしたよ
 
しょうがないから受け入れる
という風
しょうがないから受け入れろ
という石
夏が準備運動をはじめたから
今年はじめての半袖を着た五月に、
風問いし




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