【詩】文字にならない声

文字にならない声は ゲンジボタルみたいなひかりになって にんげんを 星空に沈めるように漂っていた 耳から 髪から 指先から 必要としている だれかに向かって とびたっていった 瞳からでてきたひかりは 時には拒絶してしまうくらい やさしかった
ひかりを束ねると 電気になるとわかった 電気はひつようだから 年に一度 収穫祭をするようになった 六歳になったら 自分のひかりをささげる ふんばって 口からひねりだす いっぱいだせると ほめられる すると 太陽みたいなひとはいいけど 月みたいなひとは 夜に呑まれるようになった
すかすかの本棚に たてた本が たおれる音がするだけの 闇に 押さえつけられているひとから ちっさなホタルが 浮かび上がる 時空をすりぬける 静電気みたいにはじけて 一瞬 闇をうちけした そのすべてを 少年が見ていた



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