角朋之

社会福祉士。公務員。修士(社会福祉学)。ジェンダーや社会福祉など関心のあるトピックをとりあげて、個人的な解釈や考察、感想などを投稿します。

角朋之

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最近の記事

男性のDV被害の実態と支援

 DV(ドメスティック・バイオレンス)は,歴史的に、男性優位な社会的構造を背景に男女間の対等ではない関係性から生じる「女性に対する暴力」として、社会問題化され、その支援体制が構築されてきました。  しかし、今日、DVの背景とされてきた家父長制や「夫が稼ぎ手、妻は専業主婦」といった性別役割分業に特徴づけられる近代家族モデルは衰退し、ジェンダー関連の法整備も進むなか、男女の働き方、性役割や意識も変化し、多様化しています。  そうしたなか、近年、報道や調査結果などから、男性のDV被

    • ワーク・ライフ・バランスの推進でイクメンDV男性が増加?

       世界経済フォーラム(WEF)が発表した2023年版の「ジェンダーギャップ報告書」によれば、ジェンダー平等の達成度をあらわすジェンダーギャップ指数について、日本は、146か国中125位となっており、ジェンダー平等に関しては、世界でも後進国です。  実際、日本には、いまだに、家庭内の家事・育児負担の女性への偏りもあって、働き方や賃金等の待遇に男女差がみられます。  こうしたなか、男女共同参画白書(令和5年版)では、そうした固定的な性別役割分担を前提とした「昭和モデル」から、全て

      • 「バリアフリー」を考える

        1.フィリピンでの出来事 数年前、出張でフィリピンを訪れた際の出来事です。  フィリピンのマニラは、アジア諸国の中で、最も交通渋滞が深刻な都市であるとも言われています。  私も、そんな渋滞で動かなくなった車中から、窓の外を眺めていました。道路も日本と比べてガタガタで、舗装されていないようなところもあります。そんななか、白杖を持った男性が道路を横断しようとしていました。おそらく視覚障害のある方だと思われますが、近くには横断歩道もありません。  とっさに「危ない」と感じましたが、

        • 「デート代論争」を考える

           2023年2月12日、某女優がTwitter上に「デート代は男性に出して欲しい」とする内容のツイートを行ったところ、炎上し、翌13日に投稿を削除するということがありました。  その際のツイートは以下のとおりです。  そこで、今回は、このことを踏まえ、いわゆる「デート代論争」について考えてみたいと思います。 1.どの程度の人が「男性が負担すべき」と思っているのか? 上記のツイートには、多くの賛否の声が寄せられたようですが、では、デート代は男性が負担すべきだと思っている人は

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(3)

          1.結婚相手に求めるものは? (2)では、結婚の変遷を簡単に確認しましたが、未婚者が増加する現代では、人生において結婚が必須のものではなくなっています。一方で、白書の最後のまとめでは、「結婚を希望する人ができる社会」の実現について言及しています。  それでは、どのような人との結婚を希望しているのでしょうか。この点、結婚相手に求めるものについて、内閣府の調査によると、「価値観が近い」「一緒にいて落ち着ける・気を遣わない」「一緒にいて楽しい」といった情緒的・心理的な安定を求める項

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(3)

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(2)

          1.結婚が減ることは問題か? (1)では、男女共同参画白書が指摘するメッセージに加え、結婚したくてもできない人たちが増えていることを改めて確認したところですが、では、このように結婚できない人・しない人が増えることで何か問題があるでしょうか。  日本の場合、結婚と出産がセットになっているため、結婚が減ることは、すぐさま少子化に直結します(セットになっていることで結婚が促されている側面もありますが)。  欧米諸国において婚外子が半数以上を占めている国々もあるように、結婚と出産は必

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(2)

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(1)

           令和4年6月14日に「令和4年版男女共同参画白書」が閣議決定され、「20代男性の約4割にデート経験がない」ことが報道で大きく取り上げられ話題となりました。そこで、ここでは、この白書の内容を踏まえつつ、「結婚」について考えてみたいと思います。 1.白書で伝えたかったメッセージは?  この白書でのデート経験の結果に関する、野田聖子男女共同参画担当大臣の発言として、以下のような発言が記事に紹介されました。 「最近の20代男性には自分だけで過ごせるような多様なツール、たとえばネ

          男女共同参画白書から「結婚」を考える(1)

          コロナでDVは増えたのか (5)

           コロナの増加により、DVが増えたのでしょうか。この問いに関して、これまで(1)から(4)において、様々なデータをもとにして、私なりの解釈を述べてきました。  ここでは、最後の「まとめ」として、これまで説明してきたことについて、追加的な情報を加えながら整理したいと思います。 1.配偶者暴力相談支援センターにおける相談件数の増加 DVの相談件数が、コロナ発生後に1.6倍(注)になったことについては、これまで集計されてきた配偶者暴力相談支援センターの相談件数に、新たに開設された

          コロナでDVは増えたのか (5)

          コロナでDVは増えたのか (4)

           投稿(1)から(3)では、配偶者暴力相談支援センター、内閣府のDV相談プラス、警察における相談の状況について確認しましたが、DV被害があってもこうした公的機関に相談しない被害者がいることを踏まえると、相談件数は、DV被害そのものの増減を把握する上では限定的な指標といえます。  そこで、ここでは、相談件数にはあらわれない被害実態を把握するため、内閣府が全国の男女約5,000人を対象に3年に1回実施している実態調査である「男女間における暴力に関する調査」の結果をみていきます。最

          コロナでDVは増えたのか (4)

          コロナでDVは増えたのか (3)

           投稿(1)と(2)では、地方自治体に設置されている配偶者暴力相談支援センターと内閣府のDV相談プラスにおける相談の状況について確認しましたが、DVに関する相談先としては、「警察」も含まれます。  このため、ここでは、警察における相談状況について確認します。 1.警察への相談状況  警察へのDVの相談件数については、図1のとおりとなっており、配偶者暴力相談支援センターの相談件数と同様に、年々増加している傾向となっています。2021年には8万3,035件と過去最高を記録しまし

          コロナでDVは増えたのか (3)

          コロナでDVは増えたのか (2)

          前回の投稿(1)では、配偶者暴力相談支援センターの相談件数の状況について確認しましたが、ここでは、「DV相談プラス」の相談状況についてみていきます。 1.DV相談プラスとは DV相談プラスは、内閣府が、コロナの感染拡大に伴うDVの増加や深刻化への懸念に対応するため、2020年4月20日から新たに開始した相談窓口です。 配偶者暴力相談支援センターとDV相談プラスの2020年度における月別の相談件数は、図1のとおりです。 DV相談プラスの相談件数は、開始当初の4月を除けば、お

          コロナでDVは増えたのか (2)

          コロナでDVは増えたのか (1)

          新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、ドメスティック・バイオレンス(DV)の増加や深刻化が問題とされました。 ロックダウンの措置が行われた諸外国では、DVの報告件数が増加し、DVは「陰のパンデミック」として、国際的に、その対応の必要性が叫ばれ、実際、緊急的な予算拡充や様々な取組が実施されました。 日本においても、2020年4月7日に初めて緊急事態宣言が発令された後、「DV相談プラス」という全国的な相談窓口が開設されるなど、DVへの対応が強化されました。 では、実際に、コロ

          コロナでDVは増えたのか (1)