ペク・ヒナ『ピヤキのママ』ふだつきねこママになる。
ママの名前は、ニャンイ。
やっかいものの ふとっちょで くいしんぼうで
よわいものいじめの ふだつきの ねこでした。(と書いてあります)
このニャンイ、だいこうぶつのおやつは うまれたてのたまご
ある日、うまそうなたまごを、うんぐ。
あれ、あれ、おなかがおかしいぞ...出てきたのはうんこではなくひよこでした。
ニャンイがひよこをひとなめ すると、「ピヤッ・・・・」とへんじ
こうしてふだつきねこニャンイは、「ピヤキのママ」とよばれるようになりました。
絵本ですから、これ以上詳しくは書けません。
とうに子どもの時間を過ぎてしまったぼく。
それでも、時々、図書館から借りてきたり、本屋さんで探ってみたりします。
このド迫力の顔が、ふっと、こころの片隅をかすめたり、ど~んっと大映しになったり。
どこで出会った顔なのか、もう、ぜんぜん思い出せませんが、うれしいことにぼくのうちから歩いて5分の図書館分室で見つけてしまいました。
司書の方は、きっとぼくが孫(居ませんが)のために借りていくのだと思ったのではないでしょうか、さすがプロフェッショナル、無表情でした。
ペク・ヒナさんは1971年、ソウルで生まれ、カリフォルニアでアニメーションを学んだ方で、自称人形いたずら作家。世界的に評価されているアーティストです。
他の作品も検索してみましたが、手書きの絵本はめずらしいようです。
この絵本が手書きでなければ、ふだつきド迫力ねこの表紙でなければ、ぼくのこころに、こんなにひっかかったかどうか...
おとなの時間を長く生き過ぎているぼくです。
絵本を開くと、いっぱいの“なぜ?”が押し寄せてきます。
たまごがおなかのなかでつぶれないのは、なぜ?
ひよこのあたまをなめたくらいで母性がめばえるのは、なぜ?、とか...
なぜ?絵本に魅入るのか?
記憶に残る絵本との出会いは、二十歳を過ぎた頃の長新太さんの『ぼくのすきなおじさん』です。
長新太さんが描きだすキャラクターと背景は、どこかぬぼーとしてて、あはは、あははっ、と正しく笑える愉快な絵本でした。
ぼくは、きっと、ときどき、子どもたちに無断で絵本の中で雨宿りしていたんだと思います。
絵本は、絵の本ですから、
池田学さんの『The Pen』も
ショーン・タンさんの『アライバル』も『ロスト・シング』も
森博嗣さんと佐久間真人さんの『失われた猫』も
スズキコージさんの『サルビルサ』、おっと、これは正真正銘の絵本ですが、
いつもは、本棚に眠っているこれらの本は、みんなぼくの雨宿り用絵本なのかもしれません。
小雨でも、ザーザー降りでも、通り雨でも、ときどき軒先を借りて、
ピヤキとふだつきママと、ちょっと雨宿り。