令和7年1月歌舞伎座&新橋演舞場観劇レポ②かぶきDOU其の92アフタートーク
いつもかぶきDOUをお聴き頂きありがとうございます♪
宮崎で大きな地震があり心配ですがこれ以上の被害が出ないことをお祈りしております…
タイトル画は1/15から櫛田神社に飾られました大お多福面です。
口の部分をくぐると商売繁盛や家内安全などのご利益があるとされています。
2/3には櫛田神社で博多座 歌舞伎NEXT朧の森に棲む鬼にご出演の歌舞伎役者さんによる豆まき神事が行われます♪
今回のかぶきDOUはお正月の歌舞伎座と新橋演舞場の観劇レポートPART2です。まずは歌舞伎座 壽 初春歌舞伎 昼の部 陰陽師をお届けいたしました。
今回の演目の原作は夢枕獏さんの小説 「陰陽師」です。シリーズ累計は600万部を超える大ベストセラーとなっています。舞台、映画、アニメ化されるなどその人気はとどまるところを知らずアジアヨーロッパなど世界中で愛されています。
陰陽師 大百足退治 観劇レポ
舞台は琵琶湖のほとり。三上山に化け物が現れると侍たちが噂しています。侍役は市川門松さんに中村蝶八郎さん。そしてこのたび名題昇進された市川段一郎さんと中村蝶三郎さんです。おめでとうございます!
その後、大薩摩節の演奏です。いったいどんな化け物が出てくるのでしょう?!期待が高まります。鮮やかなブルーの浅葱幕から一転して舞台は怪しい霧と枯れ木に覆われた神秘的で怪しい景色が広がります。舞台右側上手ゴツゴツとした岩間の高台にはしめ縄がかけられています。
18名の歌舞伎役者さんによる大百足
大百足の登場です!和の趣かと思いきや頭の部分の触覚がキラキラの赤で、目が仮面ライダーのようなバッタの複眼のような不気味な出立ちです。特撮が好きな方には特に刺さるフォルムだと思います!
シャーッと大きな鎌を振り上げます。御簾内で三味線が、ムカデがだす不協和音のような音を奏でその不気味さを際立たせます。
大百足の足パートの歌舞伎役者さんは総勢17名です!頭部分の方を含めますと18人で勤められていますので大迫力です!足パートの皆さんは全員、両手を朱色に塗っていて常に中腰の体制でぐるぐると縦横無尽の動きです。筋書きに記された役者さんの人数を数えようとするのですがカウントするのが大変なくらい大百足は激しく動き回ります!
安倍晴明の命を受けた藤原秀郷と大百足が対決します。
鳴物に合わせて見得を決め首を振る場面では、秀郷の首の振りと合わせて大百足が鎌を同じ位置に振るシーンはケレン味 歌舞伎らしさ満載です!!
坂東亀蔵さん勤める大百足の魂魄(こんぱく)が登場です。権力に対する恨みつらみが集まって生まれた霊魂です。ザンバラな白髪に触覚もあります。
実は魂魄は龍宮の宝物の剣を奪っていました。剣をふりかざして人間世界の征服を目論みます。そんなことはさせまい!と秀郷が魂魄を仕留めるシーンではキラキラ感があって神秘的でもありました。
祠に閉じ込められていた長薙姫が岩間から登場です!中村魁春さんが勤めます。秀郷は米俵など褒美の品を授かり、意気揚々と飛び六方で花道を去っていき幕となります!最後は清々しいクライマックスとなっております。
陰陽師 鉄輪(かなわ)観劇レポ
続きまして「鉄輪(かなわ)」です。松本幸四郎さんが安倍晴明を勤められています。同じ陰陽師シリーズではありますが大百足とは全く趣が異なります。
日本舞踊協会の公演として上演された作品を歌舞伎化したものとなっております。陰陽師としての安倍晴明の迫力ある見せ場もありますが、それと同じくらい等身大のいち青年としての晴明を描いている印象でした。やはりそれは友人である中村勘九郎さん勤める源博雅(ひろまさ)の存在が大きいです。
しとしとと雨が降る闇夜に徳子姫が現れます。口には大きな釘を咥えています。愛する男、市川門之助さん勤める藤原兼家に捨てられて、徐々に鬼へと変わっていく徳子姫を中村壱太郎さんが熱演しています。
そのバックには松本白鸚さん勤める安倍晴明のライバル・蘆屋道満(あしやどうまん)の存在があります。道満の舞台に響く大きな声と、いよいよご登場の際は、晴明を圧倒するかのような力を見せつけてくれます。
安倍晴明と蘆屋道満の戦いに武器は使いません。目に見えない念力で拮抗する様子を晴明の式神と道満の式神たちがうまく表現しています。式神は陰陽師があやつり、念じた通りに動く神のことで人間からはその姿を見ることはできません。
⭐️晴明の式神⭐️
蜜虫みつむし
市川高麗蔵 高麗屋
蜜夜みつよ
市川笑也 澤瀉屋
呑天どんてん
大谷廣太郎 明石屋
蜜魚みつうお
澤村宗之助 紀伊国屋
⭐️道満の式神⭐️
暗妃あんき
市川笑三郎 澤瀉屋
赤鬼しゃっき
市川猿弥 澤瀉屋
青牙せいが
市川青虎 澤瀉屋
海老 えび
澤村精四郎 紀伊国屋
実は私、今月歌舞伎座を2回観劇しまして上階と1階では見え方が異なりました。
上の方から見ますと道満の式神たちの登場の際、細かい演技をされているのに気づきました。晴明と道満の式神が対決する際、拮抗具合を表すフォーメーションも楽しめましたので、1階と上階で見比べてご覧いただくのもおすすめです!
そして徳子姫と源博雅の関係性がこの物語の重要な鍵となっております。
いかがでしたでしょうか?歌舞伎座昼の部の陰陽師の観劇レポートをお届けしました!
次回は昼の部最後の演目 恋飛脚大和往来 封印切についてです。歌舞伎座 壽初春大歌舞伎は1/26千穐楽です↓
双仮名手本三升 裏表忠臣蔵 観劇レポ
新橋演舞場の公演「双仮名手本三升(ならべがき まねてみます) 裏表忠臣蔵」の昼の部観劇レポートです。印象的だった場面をピックアップしてお届けします。
第一幕第一場鶴岡八幡宮社頭
市川團十郎さんの4役早替りのうちの一つ、高師直がご登場です。室町幕府で執権という強い権力を持ち大名を従える立場です。
チラシの写真でみていたイメージよりも、より浅黒くて目がぎょろっとしていて普段の團十郎さんから想像がつかないリアルに年老いた変貌ぶりに驚きました。
キャラクターも際立っていました。中村梅玉さん勤める塩冶判官をわかりやすく無視したり、鶴岡八幡宮に参詣しに来た塩冶判官の妻 大谷廣松さん勤める顔世御前を見るや否やデレデレ~っとしてまさに老害っぷりを披露していました。しかし顔世御前は毅然とした態度でこれを拒否します。
にもかかわらずあまりに顔世御前にしつこく絡むので市川右團次さん勤める桃井若狭之助がやんわり止めに入ると、中啓と呼ばれる大きな扇子で高師直が若狭之助の胸をバンバン叩いてこき下ろします。
若狭之助が刀に手をかけそうになったところで塩冶判官が止めに入り、中村種之助さん勤める足利直義が帰ってくる知らせがちょうど入ってことなきを得ます。
團十郎さん勤める高師直が徹底的に、男の嫌な部分を煮詰めたような悪の権化となっていたのが印象的でした。
元々は人形浄瑠璃から生まれているので時折、高師直がカクカクっと文楽人形のような動きをするのも面白い演出です。
第一幕 第ニ場足利館殿中松の間
かの有名な松の廊下で起こった刃傷事件のシーンですね。顔世御前につかえる中村児太郎さん勤めるおかるが、早朝に高師直へ宛てた文箱(手紙を入れた箱)を届けます。顔世御前が高師直からの誘いを断る内容の和歌でした。
実はおかるは、塩冶判官に仕える恋人の早野勘平(團十郎さん4役の1人)に会いたさで朝早くに文箱を届けましたが、このタイミングが悪かったんですね…
顔世御前の夫 塩冶判官はこれから大切な儀式を控えていました。
それを取り仕切っていたのが高師直で、振られた腹いせで塩冶判官が標的となってしまいます。
高師直は本当にしつこい男で、塩冶判官の体にもたれかかって先ほどの若狭之助のときと同じく中啓で胸をバシバシ叩きながら、罵詈雑言を浴びせます。
この辺りのセリフは大変聞き取りやすいので、塩冶判官が高師直からどんなひどい言葉で侮辱を受けているのか歌舞伎をご覧になるのが初めての方でもよくわかるようになっているかと思います。
梅玉さん勤める塩冶判官は、大名らしく怒りをグッと抑えます。しかし攻撃はエスカレートします。土下座させられ、塩冶判官が下げた頭に高師直が袴の裾をわざと?!当てていきます。ここで心の糸がプチッと切れた塩冶判官は高師直の切り掛かり取り押さえられます。このシーンは高師直と塩冶判官の心理戦をたっぷりと味わえて大変面白かったです!
第三場扇ヶ谷(おおぎがやつ)塩冶館広間の場
切腹を命じられた白装束姿の塩冶判官は、待ち焦がれた国家老の大星由良之助の到着があと一歩!と言うところで切腹となってしまいます…
この場面のテンポははやいですが、見せるところはグッと見せてくれる演出でメリハリがあります。
そして切腹の作法を中村梅玉さん勤める塩冶判官と中村虎之介さん勤める由良之助の息子 大星力弥によってじっくりとご覧いただけます。
ここで團十郎さんの2役目大星由良之助が花道より多くの主従を従えてご登場です。さっきと同一人物とは思えない頼もしい精悍な顔つきです。塩冶判官の命が尽きるところがうまく歌舞伎らしい演出で見せてくれていました。
第四場 扇ヶ谷 塩冶館表門
塩冶判官館の明け渡しです。中村福之助さん勤める千崎弥五郎をはじめ主君の仇討ちに出ようとする者がどんどん現れ騒然となり、由良之助がなんとか説得してその場をおさめます。
由良之助が1人になったシーンではセリフはありませんが、その切ない心のうちが痛いほど伝わってきます。由良之助が「送り三重(さんじゅう)」と呼ばれる、寂しい音色の三味線の演奏に乗せて花道を引っ込むのが歌舞伎演目の忠臣蔵の名場面となっており、この裏表忠臣蔵でも見せ場となっております!
花道で團十郎さん勤める由良之助が涙ぐみながら塩冶判官の館を後にするところでは「十三代目!」と大向うもかかりこのタイミングも絶妙で大変グッとくるシーンでありました…
いかがでしたでしょうか?お時間の都合でここまでとなります!
次週も観劇レポートをお届けいたします。
「双仮名手本三升 裏表忠臣蔵」は1/26千穐楽です。昼の部と夜の部通しでストーリーが完結します。夜の部に團十郎さんの宙乗りがあります!
縁の一曲〜松本幸四郎さん〜
歌舞伎役者さんにゆかりの曲をお届けする縁の一曲のコーナー。
今回は松本幸四郎さん高麗屋です!1/8に52歳のお誕生日を迎えられました。おめでとうございます✨今月は歌舞伎座にご出演中ですが来月はいよいよ博多座で歌舞伎NEXT朧の森に棲む鬼が上演されます!
尾上松也さんとWキャストで主人公のライとサダミツを勤められます。
昨年に続いて2/3午前10:00頃〜櫛田神社の豆まきにも参加されます。幸四郎さんの華麗なオーバースロー豆まきを今年も期待しております!
2007年(平成19年)幸四郎さんが市川染五郎時代に主人公のライを勤められた劇団☆新感線が松竹とタッグを組んた「朧の森に棲む鬼」がBS松竹で1/24金曜日の18:00より放送されます!無料BS初放送です!
ハイクオリティに映像化された3時間越えの大作ですので、お好きな食べ物飲み物をスタンバイして今回の博多座公演の前に劇団☆新感線の朧の森に棲む鬼の世界観をご堪能ください♪
今回の一曲は2007年版の「朧の森に棲む鬼」のサウンドトラックより劇団☆新感線の高田聖子さん歌唱で「めでたや!天下の大将軍」をお届けしました♪
めでてえなあ 1/8-1/14
ここからは、お誕生日を迎えられます歌舞伎役者さんをご紹介するめでてえなあのコーナーです。1/8から1/14がお誕生日の皆さまです。
公演スケジュールが公開されている方のお名前と所属 屋号をご紹介します。五十音順となっておりますので何卒ご了承ください。
1/8中村虎之介さん
成駒家
1/8 松本幸四郎さん
高麗屋
1/10中村芝晶さん
中村芝翫一門
1/12市村竹松さん
橘屋
1/14坂東家之助さん
市村家橘一門
今回は5名の皆様でした お誕生日おめでとうございます!
1/14アーカイブはこちらからどうぞ
https://www.youtube.com/live/BKSqbDkELe4?si=pLebK99ZbpJijoxZ
スタジオには今月上演の演目にちなみまして麻布十番 麻の葉さんのご協力により歌舞伎手ぬぐい「忠臣蔵」と博多座限定の「隈取五種」を飾らせていただいております☆権利の関係でYouTubeには音楽BGMが入っておりませんのでご了承ください。
次回は1/21(火)午前10時より生放送です お楽しみに♪