孤独が溢れる世の中に…小さな優しさで街をいっぱいにする仕組み⭐︎
人の温もりが減ってきた世の中に寂しさを感じている方はこのお話を読んでちょっとだけほっこりしてください♪
大阪府南部の郊外で芽吹いた、小中学生がボランティアで街の困りごとを解決する「子ども福祉委員」という仕組み。
そこは小さな優しさで溢れ、街には笑顔がいっぱいに広がっています⭐︎
そんな仕組みの誕生秘話と心温まる彼ら彼女らの活躍ストーリー。
きっかけは1人のボランティアの発言
私たちも歳をとってきて辛い。もっと若い子たちがボランティアに参加するよう呼びかけたい!
私が入社以来、長くともに活動してくれているボランティアの藤本さんから、地域のミライを語る座談会でのひとこと。
たしかに、地域ボランティアは年配が多い。そんな中で、藤本さんの提案の矢は地域課題のどまん中を寸分たがわずビシっと射抜いてた。
猪俣はコミュニティワーカー。自らの使命にかけて、こんな発言はぜったいにほっとけない。
と、なると、答えはもちろん「はい」か「yes」しかない!
子ども福祉委員という仕組みを考案
昼間はみんな働きに出ている。でも小中学生ならいつもこの地域にいる。ならば小中学生に、学校帰りや休日に、地域の担い手になってもらおう。
子どもたちが地域の福祉活動をするから、名前は「子ども福祉委員」。
藤本さんの発言をもとに、仕組みを考案した。
私は早速、行政や教育委員会、学校、さまざまな人たちにこの構想をシェアし、協力を取り付けた。
そして藤本さんの発言から1年後の5月、市内の某中学校の全校集会に子ども福祉委員の募集に出向くことになった。
私たち大人だけでは限界!みんなもこの街の一員。この街のために子ども福祉委員に参加して、一緒にボランティア活動してほしい!
藤本さん、熱い〜。レンジでチンしすぎた豚まん級に。これはきっと伝わるはず!
で、そんな藤本さんの魂の呼びかけに、12人の中学生たちが参加してくれた。
やりたいことは「必要なこと」
活動を始めるにあたり、参加した想いやこれからやりたいことをグループワークで出し合った。猪俣はファシリテーターに徹する。
「どんな活動したい?」 →「困っている人の役に立ちたい」 →「どんな人が困っているかわかる?」 →「わからへーん」 →「じゃ、どうする?」 →「困っている人に聞きに行こう!」
中学生メンバーと猪俣とのこんなやりとりをへて、まずは地域の人がなにに困っているのか聞きに行くことになった。
ー自分たちがやりたいことは、"必要とされていること"ー
もうこれね、誰も求めていないのにマスクを配りまくったどっかの偉い人にぜひ聞かせてあげたいね…(笑)
藤本さん他、地域をよく知る民生委員さんの協力も得て、3人のひとり暮らし高齢者の家にインタビューに行った。すると、
「ひとりで電球交換ができないから、切れたままにしてる」「腰が痛くて庭の掃除ができない」「話し相手がいないから中学生のみんなと話せるだけで嬉しい」
出るわ出るわ、切実な声!
80代で1人暮らし。ささいなことも出来ないことばかり。一日誰とも話さない。実はそんな人たちは地域の中にほんっとにたくさんいるんだ。
猪俣も、インタビューを横で聞きながら、世の中を蝕む「孤独」という見えないモヤモヤした黒いものを改めて実感した。
中学生メンバーは、再び話し合った。
『僕たちで「便利屋」をつくろう!』
こんな些細なことで困ってたんだ…。庭の草取りとか電球交換なら僕たちでも出来る!子ども福祉委員のみんなで、"便利屋"サービスをしよう!!
こうして子ども福祉委員の活動の大きな柱の一つが決まった。名前は、『夢かなえ隊』。
「高齢者の夢を叶える。役に立ちたいという自分たちの夢も叶える。だからこの名前にしよう!」
みなさんコピーライターですか?(笑)
ピュアでストレートなネーミングにほっこり。
チラシも中学生がiPadで手づくり!
民生委員さんや社会福祉協議会、ケアマネジャーなどを通じて寄せられる困りごと。中学生メンバーたちは、休日や夏休みなどを利用して次々とこの街の"困った"を解決していった。
料金?もちろんかかりません。だってこの子たち、活動後にもらうジュースや飴ちゃんで大喜びしてくれるから(笑)
何より、『楽しい!』という気持ちが原動力になっている。
『まさか子どもたちがこんなことしてくれるなんて』
庭掃除、電球交換、重い家具の移動、額の掛け替え、網戸掃除、台風災害後のお手伝い…クリスマスにはサンタにも変身。
彼ら彼女らの"やりたい"は止まらない!
猪俣さん、もっと困りごとないの!?この街の困ってる人全員の夢を叶えたい!
困りごとを解決してもらった依頼者たちは決まってこう言う。
「まさか中学生がこんなことしてくれるなんて」「ほんとに嬉しい」
そりゃあね、業者にも言えない、市役所に言ってもきっと無理、そんな諦めかけていた困りごとを、自分の孫よりもさらに若い子どもたちがあっと言う間に解決するんだもの。
自然と笑顔が溢れ出る!中学生たちも、はにかみながら一緒に笑顔♪ そして…
ーありがとうー
普段耳にする言葉とはまるで別格の、心の底から湧き出る究極の5文字。
依頼者だけじゃない。活動に付き添ってくれる民生委員、ボランティア、そしてコミュニティワーカーである私も。みんなが温かく幸せな気持ちになれる。
きっとこのお話を読んでくれたみなさんも…!?
子ども福祉委員の存在や想いが、地域を豊かにしてくれている!
この仕組みを支える縁の下の大人たち!
さて、ここまで読んでいただいて、鋭い人は気づいてくれたかも?
活動そのものは子どもたちが主体となって活躍しているけど、しっかり縁の下で支えている大人がいることを。
全体の仕組みを創り、子どもたちの主体性を引き出す仕掛けをし続けてるのが"コミュニティワーカー"。(興味ある人は↓の記事を読んでください♪)
そしてそんなワタシ、コミュニティワーカーが所属するのが『社会福祉協議会』という組織。「市の福祉課でしょ?」と9割の読者が思ったハズ…。
じつは市役所ではなく、住民代表などで構成される民間の社会福祉法人。職員は社会福祉士など専門職が中心。
各市町村に一つずつあって公的な機関ともつながりが深く、名前もカタいけど…
でも、たったひとりの声をきっかけにこんな面白い仕組みを生み出せる超クリエイティブなカイシャなんです!
そして忘れてはならないのが、いつもこんな活動を一緒に支えてくれて、地域の中の困っている人の声をしっかりキャッチしてくれる福祉委員や民生委員さんたち。誰よりも地域をよく知り、温かい目でいつも寄り添ってくれています。
"ありがとう"が中学生にもたらす変化
子どもたちが地域のお手伝いをしてくれて助かるいい仕組みだね。
イヤイヤ、実はそれだけじゃないんです。もうひと息お付き合いいただき、この取り組みのさらに素敵なトコロを感じてくださーい!!(ここは書いとけ!て仲間に怒られた部分、苦笑)
みなさん、この活動に参加しているのは、優等生や、活発でみんなの人気者的キャラの子と思いませんか?
じっさいは…発達の凸凹 (でこぼこ) があり支援学級に通う子、人見知りでなかなか顔を上げられない子、困窮家庭の子など…子ども福祉委員には本当にいろんな子が参加しています。
そんな中学生たちが、自分よりずっと年上の大人に、涙を流して「ありがとう」と感謝される。
そんな中学生たちには多くの変化が…! 校長から聞いた話。
「◯くんは、学校でもそこまで目立つほうじゃなかったのに、生徒会長に立候補し、みんなを引っ張ってくれているんだ。驚いたよ。」
「◯さんは、学校には馴染めず不登校気味だけど、ボランティアは楽しいみたい。学校や家庭以外で自分が役に立てる場所があることはあの子にとって本当に大きな意味がある。」
なるほどー、と関心しながら、こんな言葉を思い出しました。
『人は、必要とされることを、必要とする』
これは、アメリカの心理学者、エリク・エリクソンの言葉。
幼い頃に虐待を受けた親がまたその子に虐待してしまう傾向があることは知られてますよね。
自分が大切な存在だと思えて、初めて他人に優しくできる。
でも…日本人は諸外国と比べてこの自己肯定感がとっても低いんです・・・
内閣府ホームページより
ざんねんな数字。
一方で、子ども福祉委員の中学生たちは…!
すごくないですか?なんとほとんどのメンバーが自分自身でも成長や変化を実感している!
写真越しにもビシビシ伝わる充実感!!
実はH29年に改訂された学習指導要領にも自己肯定感を高める、という方向性がしっかり強調されています。
授業であれ、ボランティアであれ、やっぱり子どもたちが自ら地域に飛び出して、豊かな人のつながりの中で得られる自己肯定感はハンパない!文科省のエライ人、このnote見てないかな(笑)
そしてミライの宝へ
担い手として困りごとを支えるだけでなく、地域全体を豊かにする。さらにこの経験を通して、子どもたち自身が豊かな大人に成長する。
イマを支える宝でもあり、ミライの社会の宝でもあるんです。
12人から始まり、今は優しさの輪が市内3中学校1小学校78人に拡大。
この子どもたちのひたむきな姿が共感を生み、「子ども福祉委員」の取り組みは少しずつ他市でも広がりつつあります。
もし全国どんな街にもこんな中学生たちが誕生したら… その子たちが大人になり社会に力いっぱい飛び出したら…
この閉塞感いっぱいの世の中も、人と人の温もりがどんどん消えてしまう世の中も、もしかしたら大きく変えてくれるのではないでしょうか?
子ども福祉委員は、社会を変える、ミライを照らす、大きな可能性を持った仕組みだと猪俣は確信しています!
優しさは、社会を変える。